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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

漫画界の鬼才も参入! 大人も楽しい ユニークすぎる“桃太郎えほん”

子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介! 
最近話題の新しい絵本、注目の作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。

こんな「桃太郎」があったの?! パパやママも楽しめる、ユニークな“桃太郎えほん”

昨年末、絵本業界だけでなく漫画業界でも話題になった絵本がございます。

それがこちら!

ガタロー☆マン作! 笑って楽しめるまったく新しい「桃太郎」

笑本 おかしばなし ももたろう

ギャグマンガ界の鬼才中の鬼才!
マンガ家デビュー30周年を迎えた漫☆画太郎が、「ガタロー☆マン」として本気で描く、子ども向け笑本(えほん)シリーズ刊行。

子どもも大人も、一緒に笑って楽しめるまったくあたらしい昔話。
第1弾は「ももたろう」。

ギャグ漫画好きの方、30代以上の週刊少年ジャンプファンの方ならご存知のはず、「珍遊記」シリーズや『地獄甲子園』などで知られる漫画界の奇才、漫☆画太郎先生が初めて描かれた絵本でございます。

ペンネームも「ガタロー☆マン」と改名、絵本に対する熱い思いが伝わってまいります。

漫☆画太郎さまの漫画をご存知の方の中には、そのシュールで過激な作風ゆえに、大人は喜ぶけど 子どもに見せて平気なの?と心配された方も少なくないのでは。

ところが、蓋を開けてみると、子どもからも大人からも大好評! 売り切れ店続出でございます。絵柄も漫画のままで、漫☆画太郎ファンの方にも存分に楽しんで頂けます。得意の「天丼」(笑いのテクニックで、前に使った言葉や話の構造を繰り返し使う手法)も炸裂しております。本能をくすぐる笑いは、大人だけでなく子どもにも刺さるものがあるのかもしれません。

ネタバレになるので言えませんが、ストーリー自体は既存の桃太郎とほぼほぼ変わりございません。ただ、ガタロー☆マンさまならではの秀逸な演出(仕掛け)が子どものハート、大人のハートをくぎ付けにしてしまうのでございます。

まだ、ご体験されてない方は、是非是非、「ガタロー☆マン」さまの桃太郎をご体験くださいませ。不思議な魅力に取り憑かれること間違いナッシングでございます。

他にも、「桃太郎」を題材にした絵本はたくさんございます。

そこで今回は、大人も楽しめる、ちょっとユニークな“桃太郎えほん”を一挙

ご紹介させて頂きます。

まずは、こちらでございます。

長尾謙一郎作! 全く新しいGAG桃太郎えほん!

とんすけくんはももたろう

まさに爆笑の嵐! 全く新しいGAG絵本!

GAG漫画界の超鬼才・長尾謙一郎氏(『おしゃれ手帖』『ギャラクシー銀座』『クリームソーダシティ』)が、満を持して絵本作家デビュー! 
全く新しい『ももたろう』がここにある! 
ページをめくるごとに繰り広げられる奇想天外な展開に、子どもたちのハートはドッキドキのバックバク! 
爆笑に継ぐ爆笑。おやすみ前に読み聞かせをすれば、笑い疲れて、すやすやと楽しい夢に誘われること必至!
主人公のとんすけ君をはじめ、登場人物のほがらかな可愛らしさにも注目。
有史以来、最も注目すべき創作絵本が誕生しました。

こちらもギャグ漫画界で奇才と呼ばれた漫画家の絵本デビュー作でございます。

『おしゃれ手帳』、『ギャラクシー銀座』、『クリームソーダシティ』など超シュールな作品で数々の伝説を築いた長尾謙一郎さまでございます。

芸能界にも熱烈なファンが多く、俳優の山田孝之さまも熱烈なファンの一人として有名でございます。

こちらも、刊行になる前、お子様、親御さまの反応が気になっておりました。しかし、出版されてみるとガタロー☆マンさま同様、奇想天外、次のページで何が起こるのか全く予想できない、文脈なんかなんのそのの作風は、絵本に、そして子どもにハマったようでございます。シュールなギャグ漫画と絵本は相関性が高いのかもしれません。

こちらは、既存の桃太郎の話とは全く違う展開になっております。全自動洗濯機が登場するわ、お婆さんが川上から流れてくるわ、いろんな意味で目が離せない前代未聞の桃太郎でございます。

お次は、絵本のもつ“絵”の力、大切さをご体感頂ける絵本でございます。

俯瞰で見えてくる、桃太郎の物語の裏の顔

空からのぞいた桃太郎

『桃太郞』は、日本一有名な童話です。
現代においても、誰もがその内容を知っています。ですが、『桃太郞』の物語には、実は裏の顔があるのです。
そのことを知る人は、意外に少ないのではないでしょうか。

古くは福沢諭吉、最近ではアニメ監督の高畑勲さんからも批判された、『桃太郞』の裏の顔。
それは、『桃太郞』を普通に読んでいたのではなかなか気づきません。
しかし空からのぞくと、つまり俯瞰で見ることによって、如実に浮かび上がってくるのです。

この絵本では、そんな『桃太郞』の裏の顔を、俯瞰で描くことによってあぶり出しました。
作者は、日本を代表するイラストレーターのひとりで、俯瞰図を描かせたら右に出る者はいないという影山徹さんです。
その残酷なまでに精緻に描かれた『桃太郞』の裏の顔を、ぜひひとりでも多くの人に確認してもらいたい。

この絵本は、日本で一番有名な童話である『桃太郞』の価値観を根底から覆す、衝撃の1冊です。

こちらの絵本、内容はおなじみの桃太郎とほぼほぼ変わりありません。しかし、各ページに描かれている絵がこれまでの“桃太郎えほん”と全く違うのでございます。全ページ、空から見た俯瞰の描写になっております。

そう、「くもじい」「くもみ」のナレーションが懐かしいテレビ東京の「空から日本を見てみよう」の絵本版でございます。

空から見ると、また違った桃太郎が見えてくる、そんなコンセプトの絵本でございます。俯瞰で、客観的に見ることで、これまでと全く違った印象、感想を持たれること間違いナッシングでございます。同時に絵本の絵の持つ力もご体感頂けるかと。

ちなみに、絵を担当された影山さまは、俯瞰図を描かせたら右に出る者はいないという凄腕のイラストレーターさまでございます。上橋菜穂子さまの人気ファンタジー小説『鹿の王』の装丁も手掛けていらしゃいます。画集としても楽しめる素敵な“桃太郎えほん”でございます。

https://www.ehonnavi.net/style/492/6/

桃太郎の独白……!

桃太郎が語る桃太郎

もしあの童話の主人公が自らの口で語ったら。
その額にカメラがついていたら――「1人称童話」はそんな発想のちょっと変わった絵本です。

えがかれるのは、3人称のナレーションでは語られない、主人公の「たとえば」の胸の内。他者である主人公の視点から物語を体験する1人称童話は「まなざしと気持ちの絵本」といえるのかもしれません。

「もしきみが桃太郎なら?」本の最後には、そんな問いかけが待っています。
この本の大きな楽しみのひとつは読んだ後にあります。お子さま自身が「もし自分なら」を考える。
たとえば旅立つとき、鬼と向き合ったとき、自分ならどんな気持ちになるだろう。
もちろん正解はありません。
物語の中にその身を置いて、そこに現れる「心」や「行動」を自由に想像してみる。
それ自体がお子さまにとって新鮮な体験となることと思います。

こちらも、これまでにない視点から絵が描かれております。

なんと! 桃太郎目線で描かれております。さらに! テキストも桃太郎目線で書かれております。

物語は一人称で書かれており、「桃太郎は…」ではなく「ぼくは…」になっております。例えば、冒頭の桃が流れてくるシーンは、「どんぶらこ、どんぶらこと、桃が上流から流れてきました」となるところが、「ぼくは生まれる前、大きな桃の中にいました。すぐ外からは水の音が。それどんぶらこ…」と、なっております。その場面の絵も桃の中にいる桃太郎目線でございます。桃太郎から見た桃の内側が描かれております。

さらに、要所要所で桃太郎の心情も大増量で語られております。桃太郎の独白劇といってもいいかもでございます。

通常の“桃太郎えほん”より、ゴイスーに桃太郎の心情に寄り添った感覚で楽しめる絵本になっております。こちらも、是非是非、その感覚をご体感頂きたいのでございます。

https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=317

他にも、『だれでも知っているあの有名な ももたろう』(絵本館)や、『それからのおにがしま』(岩崎書店)など、ユニークなアプローチの“桃太郎えほん”がございます。

 

通常の桃太郎と比べながら楽しむ、桃太郎の比べ読みは、大人ならではの絵本楽しみ方の一つではないかと存じます。

絵が違うだけで、アプローチが違うだけで、どれだけ印象が変わるのか…

絵とテキストが織りなす絵本というコンテンツならではの魅力でございます。

是非是非、その魅力をご体感くださいませ。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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