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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

今年前半のトレンドは「うそ」絵本!? 大人もゴイスーに引き込まれる“うそ絵本”特集!

子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介! 
最近話題の新しい絵本、注目の作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。

考えて、想像して、笑って……。多様な味わいの、2021年新刊”うそ絵本”!

絵本好きの皆さんなら、当たり前田のクラッカー!(よくご存知の通り、)“うそ”を題材にした絵本、たくさんございます。

哲学的なものからナンセンスなものまでバラエティ豊かな“うそ絵本”がございます。個人的には、内田麟太郎さまと荒井良二さまの『うそつきのつき』にZokkon 命(ゾッコン・ラブ)でございます。

昭和な前置きが少々長くなりましたが、実は今年に入って“うそ”を題材にした絵本がたて続けに出版されております。

さらに、今回ご紹介する絵本は、お子様だけでなく、パパママにも刺さる内容のものばかりでございます!!

心の奥深いところまで届く、大人も味わいたい”うそ絵本”

「うそ」って何だろう?

うそ

「うそはくるしい」はずなのに、平気でうそをつく人がいる。大きな声でうそをつき、しらを切り通す人もいる。うそをくり返したら、ほんとうになるのだろうか。この世はほんとのことより、うそであふれている。うそをつかない人なんて、この世にはいないだろう。でも、どうして人はうそをつくのだろうか。ついついてしまったうそ。ごまかすためのうそ。自分を守るためのうそ。相手の幸せを願ってつくうそ。そもそも[ついていいうそ]と[ついてはいけないうそ]、[いいうそ]と[悪いうそ]ってあるのだろうか。あるとすれば、その違いはなんだろう。いい・悪い、軽い・重いの基準で測れるものだろうか。この絵本は、詩人・谷川俊太郎さんが1988年に発表した詩「うそ」に、イラストレーター・中山信一さんが絵を描き、構成した一冊。ある男の子がうそについていろいろと思い、考える。心の奥深いところまで届く、時おり読み返したくなる宝物のような一冊。

まずは、谷川俊太郎さまでございます。1988年に出版された詩集『はだか』のなかの一編を絵本にしたものでございます。こちら、エイプリルフール(4月1日)に出版されております。

ポイントは2つ。一点目は、ゴイスーに深イイ谷川さまの詩。これまでも谷川さまの詩を絵本化した作品、たくさんございますが、これほど深い、哲学的なものはないのではないかと存じます。一部、ご紹介致しますと……。

「うそでしかいえない ほんとうのことがある」、……本当に深い!!

哲学絵本はたくさんありますが、こちらは絵本というより哲学書に近いのではないかと思うほど。本棚にずっと置いておいて、時々、読み返してみたくなる一冊でございます。

もう一点は、ゴイスーな絵(構成)でございます。絵では、男の子が犬と散歩しながら、うそについていろいろ思い考えています。何も知らないで読むと、もともと、そういう設定の詩だったのかと誰しもが思うはずでございます。それほどまでに自然なのでございます。中山信一さま、恐るべしでございます。

絵本を読まれた後、文章だけ書き出して読んで頂ければ、いかにこの絵(画面構成)が秀逸かお分かりになるはずでございます。

大人絵本ファンの方には、そんな楽しみ方もご体験頂ければと存じます。

人間、年を重ねるごとに、ついた嘘の数は増えてまいります。その嘘の中には、葛藤の末の嘘、悲しい嘘、楽しい嘘、いろいろございます。

そんな嘘歴の多い大人の方にこそ是非、読んで観て頂きたい“うそ絵本”でございます。

親子で読みたい詩情あふれる”うそ絵本”

読んでいるうちに、見えないものが見えてくる。

エイドリアンはぜったいウソをついている

エイドリアンはいつもひとりですわってる。机もぐちゃぐちゃだし、ぼんやり考えごとをしてるし、「うちには馬がいるんだよ」ってウソばかり話してる。でも母さんは「どうしてウソってわかるの?」って、わたしに聞くんだ……。自分とは「ちがう」ことを受け入れる子どもの心の葛藤や、想像の豊かさを、詩情あふれる絵と文で描く。

前述の『うそ』が大人に読んでいただきたい絵本だとすると、こちらは、親子で是非読んで頂きたい絵本でございます。

教科書に掲載される絵本、たくさんございますが、こちらも近い将来、教科書に載る絵本ではないかと存じます。道徳力というか、多様性を学べる素敵な絵本でございます。

大人も「こういう子、いたいた」「こういうこと、あったあった」と共感すること間違いナッシングなストーリーでございます。

 

それだけでは、ございません。コリーナ・ルーケンさまの絵がゴイスーに素敵なのでございます。美しく、そして、絵本的なのでございます。

デビュー作の「The Book of Mistakes」が2018年ボローニャ・ラガッツィ賞などを受賞。次作の「My Heart」も、ニューヨークタイムズのベストセラーに。アメリカでもっとも注目されている若手絵本作家のひとりでございます。最初、読んだだけでは見つけられないかもしれませんが、何度か読み返していると、「あっ!!」、見えないはずの馬が見えてくるのでございます。嘘だと思っていた馬が、突然、目の前に現れるのでございます。この発見を是非、ご体験頂きたいのでございます。見えたときの喜びはたまりまセブンでございます。絵と文章で楽しむ絵本の醍醐味でございます。ただ、美しいだけではないのでございます。

さらに、こちらの絵本、あることからアメリカで話題となっておりました。

アメリカでも日本同様、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、絵本の読み聞かせ動画がたくさん公開になっております。

そんな中、今話題の人気女優、エリザベス・オルセンさまが、この絵本の朗読動画を公開しているのでございます。

エリザベス・オルセンさまといえば、『GODZILLA ゴジラ』、『キャプテンアメリカ/ウィンターソルジャー』、『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に出演。最近では、Disney+で配信中のマーベルドラマ『ワンダヴィジョン』で大きな注目を集めました。さらに、2022年には、『ドクター・ストレンジ』の新作にも登場するとか。そんな今ゴイスーに注目度の高い女優さまが朗読に選んだ一冊でございます。

オチで「やられた!」と舌を巻く、ナンセンス“うそ絵本”

ページをめくるたび抱腹絶倒の展開!

ちこくのりゆう

先生、きいてえな。朝おきたら、とうちゃんとかあちゃんがカブトムシにかわっとったんや。だけど時計を見たら学校がはじまる時間やったから、いってきますと、ぼくはうちをとびだしてん。ところが、ノラネコのタイショーに声をかけられて、そのとたん……ちこくのりゆうを先生に説明する体ではじまる物語は、ページをめくるたび度肝をぬかれる抱腹絶倒の展開をしていきます。第9回絵本テキスト大賞受賞のナンセンス絵本です!

最後は、パパママも「やられた!」と舌を巻くエンディングのオチがゴイスーなナンセンス“うそ絵本”でございます。

ちなみに、こちら、絵本作家の登竜門の一つと言われている第9回絵本テキスト大賞の大賞受賞作でございます。絵は、ゴイスーなペースで新作絵本を次々描かれている人気絵本作家、北村裕花さまでございます。

3作ともジャンルは違いますが、どれもゴイスーに秀逸な“うそ絵本”でございます。騙されたと思って読んで頂きたいのでございます。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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