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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

大人もハマってしまう! 新タイプのナンセンス、”シゲリ絵本”

子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介! 
最近話題の新しい絵本、注目の作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。

新タイプのナンセンス! 「シゲリ絵本」の魅力とは?

絵本が好きな大人の方の中でも、ナンセンス絵本が大好きという方、ナンセンス絵本ファンの方、少なくないのではございませんでしょうか。

最近のナンセンス絵本の話題でいうと、高畠那生さまの『うしとざん』(小学館)が「小学館児童出版文化賞」と「産経児童出版文化賞ニッポン放送賞」をW受賞されております。

そんななか、是非一度ご体験頂きたいのが、シゲリカツヒコさまの絵本、シゲリ絵本でございます。

シゲリ絵本(勝手に命名して申し訳ございません)、これまでのナンセンス絵本とは、少々違う新しいタイプのナンセンス絵本なのでございます。

 

どこが違うのか? ナンセンス絵本というと一般的にデフォルメされた絵が定番かと存じます。とてつもないことが起こっても違和感なく受け入れられるような、漫画的な要素のある絵が圧倒的に多いように存じます。代表的なナンセンス絵本作家である、長新太さましかり、井上洋介さましかり、佐々木マキさましかりでございます。前出の高畠那生さまもしかりでございます。

そんななかにあって、シゲリさまの絵は非常にリアルな絵柄なのでございます。背景・風景もしっかり描きこまれているのでございます。

シゲリ絵本は、ゴイスーに破茶滅茶なことが起こっているのに、写実的な絵で描写しているのでございます。シリアスでリアルな絵の中で破茶滅茶なことが起こっているのでございます。そのギャップがナンセンス絵本ファンには、たまりまセブンなのでございます。これまでに味わったことのない感覚なのでございます。そのシュールな感じ、新しいナンセンス感をナンセンス絵本好きな大人に是非是非ご体験頂きたいのでございます。

予想を裏切るシュールな展開

シゲリ絵本に出会ったのは2018年。シゲリさまが『大名行列』(小学館)で小学館児童出版文化賞を受賞された時でございます。受賞作と聞いて、どんな絵本なんだろと書店でページをペラペラと…。ワタクシの第一印象は「こんなシュールな笑い、ナンセンス、絵本でやっちゃっていいの…」、ナンセンス好きの私には、たまりまセブンでございます。「超面白い絵本、見つけたよ!」と誰彼構わず伝えたくなったのを記憶しております。

びっくりの行列がどんどん続く!

大名行列

「したに~、したに~」の声が響く大名行列。いかめしいお侍さんの行列・・・と思いきや、
馬が巨大化? あら、団子屋さんで休憩? 
いやいや、妖怪、マンモス、恐竜に宇宙人まで出てくるよ!?
いったいこの行列はどうなって、どこに行くの?

詳細な武士の姿は超リアルなだけに、変化していく姿もリアルで何とも不思議。
ただ眺めているだけで飽きない、おもしろ不思議絵本。

こちらの絵本、「したに〜したにっ♪」で始まる大名行列をモチーフにしたナンセンス絵本でございます。ナンセンス絵本の大道である“繰り返し”、同じ設定でどんどんエスカレートしていくお馴染みのスタイルでございます。

ところが、シゲリ絵本の真骨頂なのが、モチーフが斬新、エスカレートしてく展開も斬新、そして、そんな話が展開していく絵柄が超斬新、なのでございます。オチの「やられた!」感もゴイスーでございます。

「次、こんな展開だろ?」と思っていた予想を最後までワクワク裏切り続けられるナンセンス絵本でございます。

親子で読むのもオススメですが、お子様が寝た後、パパママがじっくりと楽しんで頂きたいナンセンス絵本でございます。

大真面目で大笑い

『大名行列』に出会ってから、さっそくシゲリさまのそれまでの作品を検索いたしました。そこで、シゲリ絵本ファンになるしかないと固く心に刻見込んでくれたのが、こちらの『ガスこうじょう ききいっぱつ』(ポプラ社)でございます。

みなさま、 ガスこうじょうへ ようこそ。

ガスこうじょう ききいっぱつ

ガス工場の見学へようこそ! 材料からガスが作られていく様子を、よ〜くご覧ください。
このガスは、あなたとふかーい関係のあるガスなのですから……。

工場を見学するなかで見えてくるのは、自分の仕事に責任と誇りをもって働くおじさんたちと、絶体絶命の緊急事態、そしてガスの正体……。
著者の精緻でリアル、迫力の描写で展開する、大真面目で大笑いの一冊。
消化の仕組みもイメージできるようになる、「こんなのみたことない!」な人体ファンタジー絵本。

こちら、ガス工場の工場見学の絵本でございます。いわゆる科学絵本でございます。と思ったら、大間違いのナンセンス絵本でございます。ただの工場見学、科学絵本と思わせておいて、ラストにゴイスーなオチが用意されているのでございます。オチの大どんでん返しの痛快さ、深さが、シゲリ絵本の魅力でございます。そして、シゲリさまの絵柄がこの科学絵本、いやナンセンス絵本にゴイスーにマッチしているのでございます。是非、この辺りもご堪能頂ければと。シゲリナンセンスが楽しめる一冊でございます。

ダイナミックな構図

こちらは、2019年7月に刊行されたシゲリ絵本でございます。わたくしがシゲリ絵本ファンになって初めての新作でございました。ドキドキしながらページをめくったのを憶えております。シゲリワールド全開でございました!

「パンツ」のもち主はだれ?

だれのパンツ?

空からおちてきた「パンツ」のもち主を探すため、団地内を冒険することになった男の子。ナゾの画家にカメレオンにおばけに……さあ、いったいだれの落とし物だったのでしょうか。もち主をさがす冒険がはじまります。
 

こちらでは、鬼のパンツ(?)がテーマになっておりますが、このパンツが超リアルでございます。鬼のパンツをここまで丁寧に描写している絵本を未だかつて見たことがございません。縫い目までしっかりと描かれております。細かく書き込まれた背景だけでなく、ダイナミックな構図もシゲリ絵本の魅力でございます。こちらの絵本では、それが遺憾無く発揮されております!そして、カラフルでポップな絵もたまりまセブンでございます。それでいて、細かいところにもいろいろなな遊びが隠されているのもシゲリ絵本の醍醐味でございます。親子でそれを見つけるのも楽しいかと。そして、お子様が寝た後は、パパママでじっくりシゲリワールドにハマっていただければと存じます。

https://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=446 シゲリカツヒコさん インタビュー!

ナンセンスと道徳のコラボレーション?!

そして、こちらが、2021年5月に刊行された最新刊でございます。

みんなの【悩み】も町の【トラブル】も、ぜーんぶ「とんで」解決!?

なわとびょ~ん

なわとびが苦手。そして、いばりんぼうのツヨシのことが、もっともーっと苦手なケンタ。そんなケンタの前に、おおなわをもった謎のおとこが現れて…? ページをめくるたびに笑っちゃう、ユーモア【なわとび】絵本!

こちらも、シゲタワールド全開でございます。リアルな世界から不思議な世界(非現実な世界)に一気に引きずり込まれるのでございます。そして、今回は「苦手克服」という道徳的なテーマも含まれております。ナンセンスと道徳の見事なコラボレーションでございます。こちらは、是非是非、親子で読んで頂きたい一冊でございます。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

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絵本ナビ編集部
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