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絵本トレンドライターN田N昌の “大人だってもっと絵本読みたいの!”

パパやママにも楽しんでもらいたい! 大人が思いきり愛でたい桜絵本

子どもだけが読むなんてもったいない。大人も楽しい絵本の世界を、絵本トレンドライター・N田N昌さんが、独自の視点と「ゴイスー」な語り口でご紹介! 
最近話題の新しい絵本、注目の作家さん、気になる絵本関連スポットなど、絵本のトレンド情報を大人に向けてお届けします。

「とにかく美しい」、大人が愛でたい桜絵本

3月といえば、“桜”の絵本を目にする季節でございます。

子ども向けのものから大人も楽しめるものまで様々な桜絵本がございます。そんななか今回は、巣篭もり中のパパ・ママにもオススメ!家の中で桜を体感できる桜絵本をご紹介させていただきます。

 

今回の選書のコンセプトは、「物語の主人公やテーマは桜じゃないのに、桜がとにかく美しい」でございます。花を添える、花を持たせるという言葉もございますが、まさに、桜が主人公や物語に花を添えている、花を持たせている絵本でございます。

突然の美しい桜の登場に圧倒される桜絵本

もう いいかい

ちいさな女の子がふたり、神社の境内でかくれんぼ。「もういいかい?」「まぁだだよ!」満開のさくら、若々しいみどり、あたたかな春のひざしのなかで、軽やかに動く子どもの心を、中野真典が味わい深いタッチで描きました。

まずは、こちら。始めて読んだときに「なにこれ、実は桜の絵本じゃん!」と思った絵本でございます。

春の境内でふたりの女の子が、「もう、いいかい」「まぁだだよ」と、かくれんぼをしており、その風景の中に春が感じられたり、幼い頃が思い起こされたり、そんなストーリー展開の絵本でございます。

その中で、この絵本のN田推しポイントは、桜が登場するタイミングなのでございます! 桜の登場のタイミングがゴイスーにかっこいいのでございます。「ここで桜が登場するかぁ!」というタイミングで、桜が登場いたします。

その桜のシーンのためだけに、そこまでの物語が展開されていたのではないかというくらい、その桜の見せ方、演出が秀逸なのでございます。

突然の美しい桜の登場に圧倒される、そんな桜絵本でございます。

目を奪われる桜の景色

ピンク! パール!

ブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌受賞 

大人になったヤマメのピンク。恋人のパールをつれ、海から故郷の川にもどってきたが、川はすっかり汚れ、おまけにダムが二匹の行く手をはばんでいた。どうしよう、卵を生むためには上流に行かなければ! 追いつめられた二匹はついに…?

こちらも、同じく「なにこれ、実は桜の絵本じゃん!」と思った絵本でございます。

大人になった主人公のヤマメがパートナーと一緒に生まれ故郷の川に戻ってきて産卵をするというおはなし。しかし、そこには様々な障害が待ち構えているが、それを乗り越えて2匹が川を登っていきます。

そんな物語に花を添えるのが、川沿いに咲く“桜”でございます。その桜がゴイスーに美しいのでございます。こちらも、登場するまでの演出が秀逸でございます。どっちが主人公か分からないくらいでございます。「なにこれ!」と、登場する桜の美しさに目を奪われること間違いナッシングでございます。

夜桜が彩る花嫁道中

たぬきの花よめ道中

山奥に暮らすたぬきが、大都会に住むたぬきのもとへお嫁入り。人間に化けたたぬきたちは、初めて電車やレストランを経験します。花嫁道中は目を回すようなことばかり!

こちらは、「夜桜」でございます。都会のビル群と夜桜の共演がたまりまセブンな絵本でございます。

物語は山で暮らすタヌキが大都会のタヌキのもとへ嫁ぐ珍道中でございます。花嫁に同行する田舎者のタヌキたちは人間にばけて、初めての電車や高層ビル、お洒落なレストランを体験いたします。

田舎を離れ大都会に嫁ぐ花嫁、それを見送る家族・親戚のほんわか物語でございます。

 

絵を担当されているのは、町田尚子さま。ご存知の方も多いと思いますが、大人女子からも大人気の絵本作家さまでございます。『ネコヅメのよる』をはじめ、数々の人気ネコ絵本を描かれております。『なまえのないねこ』は第51回講談社絵本賞受賞、MOE絵本屋さん大賞でも第1位を獲得。昨年も、『ねこはるすばん』がMOE絵本屋さん大賞で第4位を獲得されております。そんな町田さまが描かれた“タヌキ”も是非見て頂きたいのでございます。

 

話が脱線いたしました。タヌキもそうですが、町田さまが描いた夜桜、こちらがゴイスーに美しいのでございます。花嫁タヌキを都会に送り出すタヌキたちの物語、その風景に花を添えているのが、ゴイスーに美しい都会の夜桜なのでございます。物語も素敵ですが、脇役であるこの夜桜がその物語に負けないくらい美しいのでございます。

桜のもつ不思議な力を感じさせてくれる絵本

さくらの谷

かつて、わたしが一度だけ行ったことのあるふしぎな谷のおはなしです。
まだ山が枯れ木におおわれる春の手前、林の中の尾根道を歩いていたわたしは、のぞきこんだ谷を見ておどろきました。そこだけが満開の桜にうめつくされていたのです。
聞こえてくる歌声にさそわれてくだっていくと、谷底で花見をしていたのは、色とりどりの鬼たちでした。鬼なのに、ちっともおそろしいという気がしません。まねかれるまま、わたしは花見にくわわります。目の前のごちそうは、子どもだったころ、運動会の日のお重箱に母がつめてくれたのとそっくりです。
「かくれんぼするもの、このツノとまれ」
ふいに、一ぴきの鬼がとなえると、鬼たちはたがいのツノにつかまって長い行列になりました。列の最後の鬼のツノにつかまったわたしは、かくれんぼの鬼をすることになります。わたしは、林の中をかけまわってさがすのですが、なかなか鬼たちをみつけることができません。
そのうちに、だんだんふしぎな気持ちになってきました。わたしがおいかけているのは、ほんとうに鬼なのでしょうか。だって、いま、あの木のうしろにかくれたのは、わたしのおばあちゃんのようでした。こっちの木のかげには、おかあさんが。そこの木のうらには、おとうさんがかくれました。それは、みんな、みんな、もうこの世をさってしまった人たちなのでした。
でも、そうか。みんな、ここにいたのか。桜の谷であそんでいたのか──。

こちらは、山桜(谷桜)でございます。

山を歩いていた主人公が、満開の桜で埋め尽くされた谷を発見、現実か夢かわからない不思議な世界に入り込んでいくという物語。ぐいぐいと現実世界と死後の世界が混在する不思議な世界に引き込まれる絵本でございます。

その舞台に花を添えているのが“桜”でございます。桜のもつ不思議な力を感じさせてくれる大人桜絵本でございます。

 

文を担当されているのは、人気作家の富安陽子さまでございます。『オニのサラリーマン』などユーモラスな作品だけでなく、この作品や『絵物語 古事記』のような神話や伝承をベースにした不思議な物語もたくさん書かれております。

余談ですが、『オニのサラリーマン』は、富安さまがお正月にみた"初夢"を作品化したというエピソードが有名ですが、この『さくらの谷』も、父親の葬送の日の夜に見た夢を作品化したおはなしだそうでございます。

境内の桜、川桜、夜桜、山桜、どの桜もゴイスーに美しいです。

何度も読み返したくなる美さでございます。桜がその物語に花を添えているのと同時に、物語がその桜の美しさに花を添えております。

是非、ご体験くださいませ。

N田N昌

絵本トレンドライター・放送作家・絵本専門士
絵本の最新情報を発信&大人絵本文化、絵本プレゼント文化の普及活動に日々努めております。  

@NtaNmasa

 

(画像は、イラストレーター・作家の網代幸介さんによる著者肖像画)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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