第70回産経児童出版文化賞・大賞を受賞! 『新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい』
第70回産経児童出版文化賞・大賞を受賞!あまんきみこ『新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい』
ポプラ社から2022年11月に刊行された、半世紀以上愛され続けるあまんきみこさん作のロングセラー童話集「車のいろは空のいろ」シリーズの22年振りの新作『新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい』が、第70回産経児童出版文化賞 大賞を受賞しました。
2023年6月6日、明治記念館で行われた第70回産経児童出版文化賞の贈賞式に、91歳のあまんきみこさんがポプラ社代表とともに登壇し、受賞の喜びを語りました。贈賞式に出席された秋篠宮ご夫妻の次女、佳子さまから、全ての受賞作品へのお言葉がありました。
「第70回産経児童出版文化賞」贈賞式でのあまんきみこさん受賞コメント
タクシーの運転手さんの仕事は一期一会。松井さんは空いろのタクシーにお客さんの人生を乗せて走り、そのたびに町の地図も物語の世界も広がっていきました。子どもの頃、病弱で外で遊べなかった私は、本が大好きでした。本の扉を開くことで、さまざまな世界があることを知り、さまざまな人と出会い、自分自身を見つけることもできました。今も、大好きな本の世界をわくわく、どきどきしながら書いています。私の作品が、子どもたちの心に少しでも響きますよう願っています。
「第70回産経児童出版文化賞」贈賞式での佳子さまのお言葉より
大賞の『新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい』は、20年以上前から続いているシリーズの4作目です。タクシーの運転手とお客さんのやりとりから、あたたかな心のつながりが伝わってきます。思わず笑顔になったり、登場人物の悲しみを感じたりしながら読みました。柔らかく、懐かしさのある挿絵は、見る度にやさしい気持ちにさせてくれます。巻末にある、作者が思い出すままに綴った文章を読んだ後、最初からもう一度読み直すと、それぞれの物語が一層心に染み渡りました。(産経ニュース2023年6月6日より転載)
産経児童出版文化賞は、「次の世代を担う子どもたちに良い本を」を主旨に、昭和29(1954)年に制定されました。戦後日本の児童文学、絵本文化の歴史を形づくってきた表彰制度です。第70回は、2022年の1年間に刊行された児童向けの新刊書、4203点を対象に審査されました。
第70回産経児童出版文化賞 作品選評
【大賞】「新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい」
新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい
空いろのタクシーは、ずっと走り続けていました。
心やさしい運転手の松井さんとふしぎなお客さん、そして、あなたの物語。
1968年の刊行以来、50年以上読み継がれるロングセラー「車のいろは 空のいろ」シリーズ。黒井健の挿画による新装版。
タクシー運転手の松井さんと、ふしぎなお客さんたちとの出会いをあたたかく描きます。
待望の新刊となる4巻で松井さんが出会うのは、人間の子に化けたつもりのたぬきの子、夜の公園で人間の姿になって遊ぶ子ねこたち、夫を亡くした妻と赤ちゃん……。心に灯りがともる物語ばかりです。書き下ろし作品を含む7編を収録。
収録作
1.きょうの空より青いシャツ
2.子ぎつねじゃないよ
3.ゆめでもいい ゆめでなくてもいい
4.きこえるよ、〇
5.ジロウをおいかけて……
6.とにかくよかった
7.春、春、春だよ
松井さんが運転する青いタクシーには、なぜかいつも奇妙なお客さんが乗りこんでくる。おなじみのこの出だしで繰り返される非日常へのいざないは、幼年文学のロングセラーシリーズを生んだ。これはシリーズ4作目にして、22年ぶりの新作である。児童文学界の大ベテラン作家による物語は、今も変わらぬ安定の読み心地を約束してくれる。
男の子に化けたつもりでタクシーに乗り込んできたタヌキの子。月の光を浴びて公園の遊具で遊ぶ子ネコたち。赤ちゃんを抱いた喪服の若い母親を乗せた松井さんのタクシーがその母親の、未来の夢の中へ走り入り海へ行く「ゆめでもいい ゆめでなくてもいい」は、この短編集の題名だが、すべての話が「ゆめでもゆめでなくてもいい」ものだ。
松井さんがつきあうお客さんの夢には、戦時中、大事なペットのジロウを犠牲にせざるをえなかった少年の苦悩もある。松井さん自身、静かに自らの過去を見据えた物語もある。それが一転、最後の話では、キツネがフキノトウに春を見いだす喜びで連作は終わり、再生への道筋が開かれていくのだ。
(日本女子大学教授・川端有子)
『新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい』について
あまんきみこさんによるロングセラーシリーズ「車のいろは空のいろ」の第4作目。1968年の第1作目の刊行以来、半世紀以上多くの読者に愛されてきたシリーズで、2022年11月に22年ぶりの新作として刊行されました。
「車のいろは空のいろ」シリーズは連作短編集として構成され、各話で空いろのタクシーの運転手・松井さんと、不思議なお客さんとの出会いが、やさしくあたたかく描かれます。とくに、収録作の1つの「白いぼうし」は、1971年より教科書に掲載され、子どもたちに親しまれ読み継がれてきました。
新装版の装画・挿絵を手掛けたのは、画家の黒井健さん。読む人の心によりそう、あたたかい挿絵で、松井さんの不思議な世界を描き出します。
【あまんきみこさんインタビュー】
22年ぶりの新刊の刊行を記念して、『新装版 車のいろは空のいろ ゆめでもいい』についてのあまんきみこ先生のインタビューをnoteのこどもの本編集部アカウントにて公開してします。
「新装版 車のいろは空の色」シリーズ紹介
著者プロフィール紹介
著:あまん きみこ
1931年、旧満州に生まれる。デビュー作『車のいろは空のいろ』で日本児童文学者協会新人賞と野間児童文芸推奨作品賞、『こがねの舟』(以上ポプラ社)で旺文社児童文学賞、『ちいちゃんのかげおくり』(あかね書房)で小学館文学賞、『おっこちゃんとタンタンうさぎ』(福音館書店)で野間児童文芸賞、「車のいろは空のいろ」シリーズで赤い鳥文学賞特別賞、『きつねのかみさま』(以上ポプラ社)で日本絵本賞など多くの賞を受賞。作品集に『あまんきみこ童話集』(全5巻・ポプラ社)『あまんきみこセレクション』(全5巻・三省堂)がある。日本の風土に根ざしたあたたかい童話の世界は、世代をこえて読者の心をとらえ読み継がれている。
絵:黒井健(くろい けん)
1947 年、新潟に生まれる。出版社勤務後、フリーのイラストレーターとなる。サンリオ美術賞受賞。繊細でやわらかなタッチ、美しい色彩による表現で、幅広いジャンルで活躍している。主な作品に『ごんぎつね』『手ぶくろを買いに』(以上偕成社)「ころわん」シリーズ(ひさかたチャイルド)『またたびトラベル』(赤い鳥さし絵賞・学習研究社)『まっくろ』(講談社)『よるのふね』『とんだ、とべた、またとべた!』『12 の贈り物』(以上ポプラ社)などがある。2003 年、山梨県清里に黒井健絵本ハウスをオープン。2023年、日本児童文芸家協会・児童文化功労賞を受賞。
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