【今週の今日の一冊】6月21日「夏至」によせて。 昼と夜と夕暮れの絵本
「夏至」は、二十四節気の一つ。太陽が最も高く昇るため、北半球では1年で最も昼の時間が長くなる日です。一方、南半球では、最も昼の時間が短くなる日なのだそう。体感としても、日が長くなってくると、いよいよ夏のおとずれを感じますよね。そんな「夏至」の日を21日に迎える今週は、昼と夜それぞれの雰囲気を感じる絵本と、加えて夕暮れの絵本を特集します。絵本の中で、昼と夜、夕暮れの空気を感じてみませんか。
2023年6月19日から6月25日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
6月19日 昼と夜、それぞれの魅力はどんなところ?
月曜日は『よるとひる』
昼がこよなく好きな白い猫と、夜がこよなく好きな黒い猫。2匹の猫はお互いに、昼の良いところ、夜の良いところを見せ合う…。白、黒、黄色の3色で、昼の世界と夜の世界が美しく表現された絵本。
みんなの声より
昼が好きな白い猫と、夜が好きな黒い猫のおはなし。
お互いが昼の世界、夜の世界を相手に案内します。
そのそれぞれの世界の何と豊かなことでしょう。
そして、お互いが相手の価値観をちゃんと受け止めます。
夜の世界は、人間だって同じ印象でしょう。
白い猫と黒い猫のやり取りの台詞が滋味深いです。
後半、お互いは猫本来の姿で帰結します。
マーガレット・ワイズ・ブラウンとレナード・ワイスガードによる
独特の世界が広がります。
白地に黒と黄色の配色だけの一見地味な絵ですが、
絵本ならではの表現力と、細やかな描写の文章が心地いいです。
是非音読でその響きを味わってください。
6月20日 ふかふか布団でぐっすりお昼寝
みんなの声より
おばあちゃんが縁側にふとんを広げて干していると、ねこがやってきます。そして「ふわー」と大きなあくびをして布団の上にごろん。つられておばあちゃんも「ふわー」と言って寝転がります。ニワトリの親子や男の子などなど、次々に仲間がやってきて、みんなで「ふわー」そしてごろん。みんな思い思いにおひるねする様子は、本当に気持ち良さそうです。
見ているだけでお日さまの匂いがしてきそうな、温かい絵本。
表紙と裏表紙を広げてみると、また楽しいです。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子10歳、女の子7歳、男の子5歳)
6月21日 異次元の空間に誘う不思議な世界
水曜日は『真昼の夢』
カナダの画家ロブ・ゴンサルヴェスがえがく、眠りとめざめのあいだの時間。
想像力にみちたイラストレーションが、見るものを奇妙な世界へさそいこむ。
みんなの声より
あらゆる空想の世界に、目も心も奪われました。
まるで空間が間違ってくっついてしまったような…一度入ってしまうと出てこれなさそう。
現実と空想のバランスが絶妙で、素晴らしいですね。
私が特に気に入ったのは、
お話の世界へ行ける本のドアに、地図の終わりから始まる冒険の旅、空高く舞い上がる木のブランコ…
どの絵も完成度が高くて、美しいです。
想像してごらん。
最初からありもしないものではなくて、ごく身近にあるものから。
そうやって空想は、どこまでも広がっていく。
(ねんねこしゃんさん 20代)
6月22日 あたりはだんだん草ぼうぼう。空はだんだん夜の色。
木曜日は『だんだん だんだん』
よっちゃん、今日はおじいちゃんとお散歩。だんだん家を離れていき、辺りがだんだん草ぼうぼう、空はだんだん夜の色。だんだん、だんだん。
「ねえ どこまで いくの?
まっくらやみに なっちゃうよ。」
よっちゃんの心配をよそに、おじいちゃんはどんどん歩く。着いたのは、夜の田んぼ。すると、そこで出会ったのは?
草むらのバッタやカマキリ、空にはコウモリ、一斉に鳴きだすカエルに、夜空に飛ぶのは……ホタル! 夕方と夜の間、だんだん暗くなっていくこのお散歩、なんて贅沢な時間なのでしょう。少しずつ見えてくる、夜の命がきらめく世界。ゾクゾクするけど、おじいちゃんと一緒なら怖くない。
自然の中での自らの経験や、その瞬間の喜びを、豊かな色彩の木版画で臨場感たっぷりに伝えてくれるのは、竹上妙さん。自分にとっての大切な時間、みんなも見つけられたらいいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
6月23日 日が長い夏の夕ぐれのかけがえのないひととき…
金曜日は『なんでもない なつの日 「夏の夕ぐれ」』
19世紀生まれのイギリスの詩人、ウォルター・デ・ラ・メアの名を聞いたことがありますか?
本書は、幻想文学・怪奇小説の名手、優れた児童文学作家・詩人でもあるウォルター・デ・ラ・メアの詩に、カロリーナ・ラベイが現代的な版画絵をつけて美しい絵本にしたものです。
空が夕ぐれの黄色に染まる頃、一家は外でお茶をのんでいます。
「うすちゃのねこが 農家のパパのいすのそば
ひざにすりより みゃあお、とおねだり。
じいさんいぬは こけのはえた犬小屋で
ほねをもごもごかじっては、とおるねずみに わぉーんわぉーん」
子どもたちはお茶のテーブルを離れ、ねこや犬を追って家畜小屋へ。そして牧場へ。
広々とした牧場は、しっとりとした草がなびき、牛がねそべっています。
動物たちはみな、それぞれにえさをもらい、大きな夕日が落ちてくる頃、小屋へもどって眠りにつきます。
それは昔から繰り返されてきた、牧場のなんでもない夏の夕ぐれ。
かつて1913年に本国イギリスで出版された詩集『ピーコック・パイ』所収の、Summer Evening(夏の夕ぐれ)という詩です。
ママとパパが、農家の一日を終える作業をおだやかにすすめていきます。
お茶とケーキでひと息いれたあと、夕ぐれせまる風景のなかのひと仕事。
動物たちがすこやかに眠りにつけるように、世話をしていくのです。
干し草の黄色や、夕日の赤、茜色の空。ぬくもりのある色彩がきれいです。
期待の新人画家カロリーナ・ラベイの絵からは、人も動物もみな、おなかが満たされ、平和な一日が暮れていく様が伝わってきます。
本書は『ハロウィーンの星めぐり「夜に飛ぶものたち」』『ホワイトクリスマス』につづくW・デ・ラ・メアとラベイの共作絵本、3冊目。
文字は少なめにおさえられ、絵の中に入り込みながら、詩をじっくり味わえます。
なんともいえない郷愁がただよう空気を、感じられるのではないでしょうか。
“幼な心の詩人”と称される、W・デ・ラ・メアの世界を体験してくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
みんなの声より
美しい夕焼けの景色のイラストとこの題名に惹かれ,親である大人の私が読んでみました。
夏の日の夕暮れ時って,美しさとちょっぴりセツナイ感じが私の中でするので,この絵本を開いた私は,幼き日の自分を思い出し懐かしさと故郷を想う哀愁のような気持ちにさせられる絵本でもありました。
「なんでもないありふれた日々」がいかに素晴らしいことか!大切なことを思い出させてくれますね。
(まゆみんみんさん 30代・ママ 女の子6歳)
「ウォルター・デ・ラ・メアの詩の絵本」こちらも合わせて。
6月24日 よるって とても しずかだな
土曜日は『よるのかえりみち』
夜のかえりみち。
街頭に照らされた夜道を歩く。
窓からこぼれる光。そこに住んでいる人の気配。
家路をいそぐ親子が出会う、それぞれの夜。
しんとしている夜道は
人の話し声や美味しそうないい匂い
そして、ちょっとした物語がひそんでいるみたいです。
お母さんに抱っこされた夜の帰り道、
ウサギのぼうやは眠くなってきました。
お父さんもお迎えに来てくれて、
お家についたらぼうやはぐっすりと眠りにつきます。
なにをおもっているのでしょう。
それぞれが思い思いに過ごす夜の時間は、
静かにゆっくりと流れていきます。
『もりのおくのおちゃかいへ』が印象的なみやこしあきこさんの夜の絵本。
大切な小石を一つずつ確かめるように置かれた言葉を
夜の空気がしっとりと包み込みます。
みやこしあきこさんの描く優しい夜は、ちょっぴりドラマチック。
夜の静かなひと時、おやすみさないを言うまでの魔法の時間。
この絵本を開いてみましょう。
心の中にそっと夜が広がります。でも仄かにあたたかい。
・・・おやすみなさい。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
みんなの声より
モノクロの中に浮かび上がるうさぎの親子がカラーの表紙は、少し夜の怖さもあり、目をひきます。
うさぎの子にとっては、きっと夜のこの時間は眠りにつく静寂の時間なのでしょう。お母さんの背中におんぶされていて、眠い中、母の背中からうつらうつらしながらうっすらと見える夜の世界の雰囲気が絵からも、文字からも伝わってきます。
この絵本読んでいたら、なんだか眠たくなりそうです。
色の使い方が絶妙で、部屋の灯りなどをあらわしている光の色合いと夜をあらわしている黒のコントラストがあまりにも美しくて見とれてしまいました。
(Pocketさん 40代・ママ 女の子15歳、男の子11歳)
6月25日 絵描きは描きます。ステキな星を。次に太陽を。
みんなの声より
お星さまを描いたら、お日さまが描きたくなりました。
お日さまを描いたら、木を描きたくなりました。
まるで、描いた絵から催促されているように。
登場絵描きは、エリック=カール自身でしょう。
想像力のままに広がっていく世界が素敵です。
最後にまた星が出てくるけれど、五つの角を持つ星形とは違う
八つの角がある星形。
おばあさんに教わった星の書き方だそうですが、深い意味のありそうな、カールさん自身の世界ですね。
絵を見ていて楽しくなる絵本です。
(ヒラP21さん 50代・パパ)
秋山朋恵(絵本ナビ 副編集長)
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