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絵本ナビニュース2023

『おばあちゃんのにわ』おばあちゃんと「ぼく」の言葉にたよらない心穏やかな日々を描く。まぶしいほどに美しい絵も必見!

注目の最新刊!『おばあちゃんのにわ』

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=211962

偕成社から、『おばあちゃんのにわ』(ジョーダン・スコット 文/シドニー・スミス 絵/原田 勝 訳)が2023年6月に刊行されました。

おばあちゃんのにわ

おばあちゃんのにわ

数々の賞を受賞した名作『ぼくは川のように話す』のコンビによる心温まる絵本。著者であるカナダの詩人、ジョーダン・スコットの祖母との思い出がもとになっています。ポーランドからの移民で、あまり英語がうまくしゃべれないおばあちゃんと「ぼく」は、身ぶりや手ぶりで、そして、さわったり、笑ったりして、いいたいことを伝えあいます。言葉にたよらない二人の親密さを描くシドニー・スミスの情感あふれる絵が、懐かしい記憶を呼びさまして胸を打ちます。

ぼくのおばあちゃんは、もとはニワトリ小屋だった家にすんでいる。毎朝、お父さんの車でおばあちゃんの家にいくと、おばあちゃんは庭でとれた野菜をつかって、朝ごはんをつくってくれる。長いあいだ食べものがなくてこまったことがあるおばあちゃんは、ぼくが食べこぼしたオートミールをひろいあげると、それにキスして、ぼくのおわんにもどす。
雨の日には、おばあちゃんはゆっくり道を歩く。それはミミズをつかまえるため。ぼくたちは、つかまえたミミズをおばあちゃんが野菜を育てている庭にはなつ。いつも、二人でそうしていた。おばあちゃんがあの家を出るまでは……。

産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞した名作『ぼくは川のように話す』のコンビが再タッグ!

本作は『ぼくは川のように話す』のジョーダン・スコットさんとシドニー・スミスさんが再タッグを組み、前作と同じく原田勝さんが訳を手がけます。タイトル文字も前作同様、絵本作家、荒井良二さんによるものです。

 

前作『ぼくは川のように話す』は、オリジナル版が出版されたアメリカで、障害をもつ体験を芸術的な観点から描いた作品に与えられるシュナイダー・ファミリブック賞、ボストングローブ・ホーンブック賞、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞などを受賞したほか、ドイツ、イタリア、オランダ、中国、台湾などでも受賞を重ね、日本でも産経児童出版文化賞・翻訳作品賞を受賞しています。

ぼくは川のように話す

ぼくは川のように話す

「朝、目をさますといつも、ぼくのまわりはことばの音だらけ。そして、ぼくには、うまくいえない音がある」
苦手な音をどもってしまうぼくは、クラスの朝の発表でもまったくしゃべることができなかった。放課後にむかえにきたお父さんは、そんなぼくを静かな川べりにつれていって、ある忘れられない言葉をかけてくれた。

吃音をもつカナダの詩人、ジョーダン・スコットの実体験をもとにした絵本。
デビュー以来、作品を発表するごとに数々の賞を受賞して注目を集めるシドニー・スミスが、少年の繊細な心の動きと、父親の言葉とともに彼を救ってくれた美しい川の光景を瑞々しいタッチで描いている。

作者、ジョーダン・スコットの幼少期の思い出をもとに描く

最新作『おばあちゃんのにわ』はカナダの詩人、ジョーダン・スコットさんが、幼少期に自身の祖母と過ごした思い出をもとにしてつくった絵本です。おばあちゃんと「ぼく」の、言葉にたよらずに気持ちをかよわせる親密さと、かけがえのない穏やかな日々を描きます。

あらすじ

ぼくのおばあちゃんは、もとはニワトリ小屋だった家にすんでいる。毎朝、お父さんの車でおばあちゃんの家にいくと、おばあちゃんは庭でとれた野菜をつかって、朝ごはんをつくってくれる。長いあいだ食べものがなくてこまったことがあるおばあちゃんは、ぼくが食べこぼしたオートミールをひろいあげると、それにキスして、ぼくのおわんにもどす。


雨の日には、おばあちゃんはゆっくり道を歩く。それはミミズをつかまえるため。ぼくたちは、つかまえたミミズをおばあちゃんが野菜を育てている庭にはなつ。いつも、二人でそうしていた。おばあちゃんがあの家を出るまでは……。

<作者あとがきより>

ぼくのおばあちゃんはポーランドで生まれそだち、第二次世界大戦中は家族とともにたいへんな苦労をあじわいました。戦争がおわると、おばあちゃんはカナダに移り住み、ブリティッシュ・コロンビア州にあるポート・ムーディという海辺の小さな町で、おじいちゃんとくらしました。ふたりは、バーネット・ハイウェイのそばにある硫黄工場のうらの、ニワトリ小屋を作りなおした家で寝起きしていました。ポーランド語で「おばあちゃん」はババ、「おじいちゃん」は「ジャデク」といいます。(中略)

 

ぼくが生まれてきたときにはもう、ジャデクはこの世にいませんでした。ババは、ニワトリ小屋だった家にひとりでくらしていて、ぼくがババとすごした時間のほとんどは、その小さな家でのものです。ババは英語があまりじょうずに話せなかったので、ぼくらはほとんど、身ぶりや手ぶりで、そして、さわったり、笑ったりして、いいたいことを伝えあいました。また、ふたりとも食べることがすきだったので、食べものを通じて心をかよわせました。

前作『ぼくは川のように話す』を読むと、ジョーダン・スコットさんが子どものころ、吃音に苦しんでいたことがわかります。彼にとって、言葉を発しなくとも心地よく過ごしていられるおばあちゃんとの時間は、特別なひとときだったに違いありません。

『ぼくは川のように話す』刊行時の書評▼

何度も読み返して味わいたくなる美しい絵本(みやこしあきこ・評)
https://kaiseiweb.kaiseisha.co.jp/a/review/rev2106/

画家のシドニー・スミスさんは、『おはなをあげる』(ジョナルノ・ローソン作)によりカナダ総督文学賞、『うみべのまちで』(ジョアン・シュウォーツ文)によりケイト・グリーナウェイ賞、初めての自作絵本『このまちのどこかに』によりケイト・グリーナウェイ賞とエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞。さらに上記3作と『ぼくは川のように話す』はすべてニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞するなど、今世界で最も注目されている作家のひとり。

水面に反射する光や、部屋に差し込む光など、さまざまな場面で描かれる「光」の美しさに定評があり、その力量は本作でも遺憾なく発揮されています。

台所に立ち、朝ごはんをつくるおばあちゃん。窓から差し込む逆光の表現が美しい

書籍紹介

『おばあちゃんのにわ』
文: ジョーダン・スコット
絵: シドニー・スミス    
訳: 原田 勝
定価1,760円(本体価格1,600円)
判型:25cm×25cm 
ページ数:41ページ
対象:小学校低学年から
初版:2023年6月17日

著者プロフィール

文:ジョーダン・スコット

1978年生まれ。カナダの詩人。2018年、これまでの業績に対してThe Latner Writers’ Trust Poetry Prizeを受賞。シドニー・スミスとともに、『ぼくは川のように話す』によりシュナイダー・ファミリーブック賞、ボストングローブ・ホーンブック賞を受賞。

 

絵:シドニー・スミス

1980年生まれ。カナダの画家。『おはなをあげる』(ジョナルノ・ローソン作)によりカナダ総督文学賞、『うみべのまちで』(ジョアン・シュウォーツ文)によりケイト・グリーナウェイ賞、初めての自作絵本『このまちのどこかに』によりケイト・グリーナウェイ賞とエズラ・ジャック・キーツ賞を受賞。上記3作と『ぼくは川のように話す』はすべてニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞している。

 

訳:原田 勝

1957年生まれ。東京外国語大学卒業。『ぼくは川のように話す』により産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞。長編の翻訳に『弟の戦争』『ハーレムの闘う本屋』『ペーパーボーイ』『コピーボーイ』『ヒトラーと暮らした少年』『夢見る人』、絵本の翻訳に『夜のあいだに』『セント・キルダの子』などがある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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