絵本ナビスタッフ読み聞かせ会レポート vol.2 想像する楽しさとワクワクを小学6年生に伝えたい
「読み聞かせの会ってどんな風に行われているの?」
「いろいろな読み聞かせ会をのぞいてみたい」
「どんな絵本が読まれているのだろう?」……
さまざまな読み聞かせ会やおはなし会。絵本ナビのスタッフも、個人的な活動として、園や学校、図書館、子どもの施設などで子どもたちに絵本を読んだり、本を紹介するブックトークへ出かけています。
本記事では、読み聞かせ会で読んだ絵本や子どもたちの反応、読み聞かせのポイントなどを絵本ナビスタッフにレポートしてもらいます。
vol.2 今回のレポートは、コンテンツ事業部の川名絢子さんによる小学6年生への読み聞かせ会の様子です。
今年で小学校の読み聞かせ活動を始めて9年になる、という川名さん。現在、中学1年生と3年生の息子さんを持つママでもあります。まず始めに読み聞かせで大事にされていることについて、聞いてみました。
Q.川名さんが読み聞かせで大事にされているのはどんなことですか?
世の中に面白いコンテンツがあふれている中で、人が話す言葉を聞きながらワクワクする気持ちや想像する楽しさを味わってほしいと思い、読み聞かせに取り組んでいます。絵本の読み聞かせは、耳からことばを聞いて、静止している絵を見ながら想像できる楽しさがあります。絵本を読んでもらうことで、本って面白いな、と感じてもらって、思わず家に帰って親に話したら大成功! と思っています。
(絵本ナビ 川名絢子さん)
Q. なぜ小学校で読み聞かせを始められたのですか? 始めたきっかけを教えてください。
A.子どもが小学校に入学したので、学校と関わり合いたいと思い、始めました。担任の先生と話すきっかけにもなるかと。
入学式の資料に、読み聞かせボランティア募集中!というプリントが入っていたので、そこで応募したことがきっかけです。2人の子どもたちはもう小学校を卒業したのですが、卒業してからも続けていて、今年(2023年)で活動9年目になります。
Q. 読み聞かせに入るクラスはどのように決まるのでしょうか?
A.毎回どこの学年にしたいか希望が出せるので、子どもが通っていた時には、子どもの学年に入っていました。
さらにお話を伺っていると、読み聞かせで読む本の選び方がなんともユニークで……。その楽しい本の選び方は、こんな方法で決めているのだそう。
読み聞かせを始めた当初から、候補として何冊か挙げた本の中から、息子に選んでもらっています。息子が小学1年生の時から行っていますね。今回は6年生向けの読み聞かせの本選びだったのですが、中1の息子に6年生になりきって選んでもらいました。今回の本は、中身を見て息子も即決めでした。さらに、毎回読み聞かせの日には、家で感想を言ってくれたり、友だちがこんな風に言っていたと教えてくれるので、とても励みになりました。息子としても、読み聞かせの絵本を選ぶのは自分の任務のように感じていたと思います。
それでは、中1の息子さんも選書に関わってくれたという、今回の読み聞かせについて、具体的にレポートしていただきます。
読み聞かせ会レポート
- 場所
公立小学校の教室(千葉県) - 実施月と時間
10月
8時20分~8時35分(15分) - 対象学年と人数
小学6年生の子どもたち、35名(1クラス) - 読んだ絵本の冊数
2冊
今回読んだ絵本は……
1冊目『地球をほる』
【選んだ理由】
1冊目は軽めの本を読むことにしているので、この絵本を選びました。タイトルからすぐに分かる「地球をほる」という行為。地球を掘るという発想自体にユーモアがあり、どうやってほるの? とワクワクさせてくれる一冊です。非日常を体験できることなど、子どもたちに読み聞かせを通して伝えたいエッセンスが詰まっています。
【子どもたちの反応は?】
子どもたちは地球の描写が好きなのだなあと感じました。読んでいる途中で、「恐竜がいた」「ゴミが捨てられている」など小さくつぶやく声が聞こえます(6年生は低学年と違って、大きな声では反応しません。だいたいが小さくつぶやく感じです)。つぶやいた子にはアイコンタクトで応えます。子どもたちは真剣に聞いていました。しーんとしていました。
【ひと言アドバイス】
地球を掘っていくのに合わせて本を回転させるのですが、本が上下逆さになるとページをめくるのが逆になるので気をつけて読みます。
失敗すると前のページを開くことになってしまうので注意が必要です。
『綱渡りの男』
読み聞かせ時間の目安:約6分
ニューヨークでストリート・パフォーマンスをしているフランス人の綱渡り師フィリップ・プティはマンハッタンに建設中の世界貿易センターのツインタワーを見つめていた。あそこで綱渡りをしたい! 今はない世界貿易センターの2棟のビルの間に綱を張り、地上400mの高さで綱渡りをした男の実話。2004年コールデコット賞受賞。
【選んだ理由】
中1の息子が即決めで選んでくれたこともこの絵本を読もうと思った大きな理由ですが、やりたいことをやっていいんだ!というメッセージが伝わるといいなと思って選びました。小学6年生にもなると、「夢はなに?」と聞かれることが増えたり、卒業式では自分の夢を言わないといけないということがあったり……「夢プレッシャー」があるように感じています。そんな6年生に、綱渡りに夢中になる主人公の姿を描いた絵本を読むことで、壮大な夢じゃなくていいから、まずは興味があることを突き詰めてみては、ということが伝えられたらと思い、選びました。
【子どもたちの反応は?】
集中して聞いていました。その集中が途中で途切れることが全然なかったです。ほんとの話なんだ……というつぶやき声も途中聞こえました。読み始めは作業していた担任の先生が途中から作業をやめて集中して聞く様子が印象的でした。読み終えた後、先生が余韻に浸っていました。
絵本の中で、主人公の男がツインタワーの綱渡りに挑戦する圧巻の見開きページでは、ページを大きく広げると、6年生たちがみんな見よう見ようと体を乗り出してきたので、絵本をぐるっと回してじっくり見せてあげたり、主人公の男がいる場所を教えてあげたり、絵本のすみずみまで一緒に楽しみました。
【ひと言アドバイス】
導入部分を大事にして伝えたいお話です。「ツインタワーって知ってる?」「ここで起きたテロのことを知ってる?」と問いかけ、本当にあった話だということを伝えてから読んでいます。それを聞くと子どもたちは、テロに関連したお話かな、真面目なお話かな、と身構えるのですが、ところが違うんだよ! すごくワクワクするお話なんだよ、という風に展開させていきます。
おはなし会を終えて
高学年の読み聞かせを行う時に心掛けていることを教えてもらいました。
6年生への読み聞かせは今回で4回目になるのですが、低学年の子どもたちのように、聞くぞーという感じはあまりないので、いかに最初に集中させるかというところに注力します。また高学年というと、平和問題や環境問題など伝えたいメッセージのある絵本を選びがちですが、そうすると子どもたちが構えてしまうので、授業ではやらないような絵本を選びたいと考えています。純粋に本の楽しさを味わってもらいたいという気持ちで本を選び、読み聞かせをしています。
余談ですが、今回の会では、担任の先生から「もう終わりですか?」の嬉しい声がありました。しかし、読み聞かせの時間では最後の絵本が一番印象に残るということがあり、『綱渡りの男』の余韻を感じたままでいてほしかったことと、腹八分目ぐらいがちょうど良いと感じることもあり、2冊で会を終えました。
最後に、川名さんの選書(本選び)の話が興味深かったので、もう少し紹介させていただきます。
- 毎回、読み聞かせの選書(本選び)に一番時間をかけます。図書館は4館ぐらい回ります。しかし本棚にある本からじっくり選ぶというよりは、ある程度、事前に候補の本を決めて、その本が置いてある図書館へ行くという流れです。
- 選書の際、絵本ナビサイトのレビューもよく参考にしています。とくに何歳の子に読んだかという年齢情報に注目して見ることが多いです。
(絵本ナビ新着レビューページはコチラ>>>)
- これまでの読み聞かせ活動で読んだ絵本のリストを作成しています。
低学年向け、中学年向け、高学年向けと対象年齢別のリストがあり、☆や色を変えて、とくに反応が良かったものなどに分かりやすく印をつけて、自分だけの「読み聞かせ絵本リスト」作りに力を入れています。
川名絢子(絵本ナビ コンテンツ事業部所属)
2023年3月に絵本ナビへ入社し絵本ナビ公式アプリの運営を担当。子どもが通う小学校で読み聞かせを始めてから今年で9年目。小学校の保護者で運営されている読み聞かせサークルに所属し、今まで読み聞かせした本は約80冊。
川名さん、レポートありがとうございました。川名さんのお話を聞いていると、絵本の読み聞かせを通じての子どもたちに対する特別な思いが伝わってきて、その熱く語ってくれる姿から、きっと絵本の読み聞かせの時間も川名さんの明るいパワーが炸裂して、とっても楽しい時間になっているのだろうと想像しました。
また、川名さんが所属されている小学校の読み聞かせサークルにはたった1つだけ決まりがあり、それが、「子どもたちに感想を聞かないこと」というお話を聞いて、大事な決まりだなあと感じると共に、サークルの在り方の素敵さが心に残っています。
「絵本ナビスタッフ読み聞かせ会レポート」は毎回、読み手も変わり、場所も違う、さまざまな読み聞かせ会の様子をお伝えしていきます。
どうぞ次回もお楽しみに。
構成・文・聞き手:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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