絵本ナビスタッフ読み聞かせ会レポート vol.3 小学2年生のドキドキを応援したい
「読み聞かせの会ってどんな風に行われているの?」
「いろいろな読み聞かせ会をのぞいてみたい」
「どんな絵本が読まれているのだろう?」……
さまざまな読み聞かせ会やおはなし会。絵本ナビのスタッフも、個人的な活動として、園や学校、図書館、子どもの施設などで子どもたちに絵本を読んだり、本を紹介するブックトークへ出かけています。
本記事では、読み聞かせ会で読んだ絵本や子どもたちの反応、読み聞かせのポイントなどを絵本ナビスタッフにレポートしてもらいます。
vol.3 今回は、副編集長秋山が小学2年生への読み聞かせに行ってきました。
今回は、絵本ナビ内の読みきかせにおすすめの本のテーマや、読み聞かせ関連の記事作成を担当している副編集長の秋山が、小学校へ読み聞かせに行ってきました。
まず私が読み聞かせでとくに大事にしている3つのことをお伝えしたいと思います。
読み聞かせで大事にしている3つのこと
・まず一番重要だと考えているのは、何の絵本を読むかということです。選ぶ本でその時間が充実したものになるかどうかを決定すると言っても良いぐらい、選書が重要だからです。まず、読む子どもたちに、お話のボリュームや内容の難易度が合っているかを考え、さらに、その時々の季節感や行事なども考慮しながら候補作品を決めていきます。
・二つ目の重要なことは、選んだ本を私(読み手側)が心から面白いと思い、すすめたいと思っているかどうかということです。私自身がその絵本をどう思っているかということが、読み聞かせを通してそのまま子どもたちに伝わると考えるからです。本を選ぶ時にはこのことをいつも自分自身に問いかけながら選びます。
・三つ目は、二つ目に挙げたことと関連するのですが、心を動かしながら絵本を読むということです。その絵本を読むと嬉しい気持ちになる、思わず笑ってしまう、考えさせられる……などの心の動きが声を通して伝わると考えているからです。読み手が心を動かしていればいるほど、子どもたちがその絵本と読み手との時間を楽しんでくれることを、私自身の読み聞かせでも他の方の読み聞かせでもたびたび実感しています。
(絵本ナビ 秋山)
それでは、読み聞かせレポートにうつります。
読み聞かせ会レポート
- 場所
公立小学校の教室 - 実施月と時間
2月
8時20分~8時35分(15分) - 対象学年と人数
小学2年生の子どもたち(1クラス) - 読んだ絵本の冊数
2冊
今回読んだ絵本は……
1冊目『ねこガム』
【選んだ理由】
今回のクラスに読み聞かせに入るのは初めてだったので、まずはお互いの緊張をほぐしてから2冊目の絵本に入りたいと考え、1冊目は短いながらもぐっと子どもたちの気持ちを動かしてくれるような絵本を選びました。
導入の一冊を何にしようか考えた時には、絵本ナビのこちらのテーマが参考になります。
【子どもたちの反応は?】
「ねこガム」というタイトルを口に出すと、あーガムか、食べたことあるーというつぶやきが。はじめ、「プー」「クチャクチャ」と男の子がガムを噛む様子は普通に見ていたものの、ふくらませたガムが途中からねこのかおになるあたりで「あれ?」という表情。そしてそのガムだったはずのねこに今度は男の子が吸い込まれていく様子にびっくりし、つづく「パクッ」「クチャクチャ」で「こわー」との声が。でもその後、ねこの口から男の子が「プー」と出たところでホッとした様子になり、「プープー」「プープー」と両方が吹き合うところで笑い、さらに次の「プーブー」「プーブー」とさらに強く吹き合うところで大爆笑。
そしてとうとう「パアーン」とふうせんガム(かお)が破裂したところで驚きながらも、最後のページでは、ほっとひと安心。
短い時間の中でたくさん気持ちを動かしてくれた様子が見えました。
読み終わった後に伝えてくれた感想
- ねこガムに男の子が吸い込まれてくちゃくちゃ噛まれたけど、またプーって出てきたから良かった。
- 途中ちょっとこわかったけど、面白かった。
【ひと言アドバイス】
- 1ページごとの文字は「クチャクチャ」「プー」「スー」などとても短いので、絵をじっくり見せながら、ゆっくり読んでいきます。
- クライマックスの男の子とねこがお互いを吹き合う場面は2ページ続くので、はじめの「プープー」「プープー」もそれなりに力を入れつつも、つづく「プーブー」「プーブー」という場面に力を残し、その場面を思いっきり読むと盛り上がります。
- 「パァーン」とわれる場面ではたっぷり時間をとって驚きの余韻を楽しむのがおすすめです。
『バジとあかいボール』
【選んだ理由】
私には今小学2年生の息子がいるのですが、なにか日直だったり、発表だったり、クラスのみんなの前で話をしなければいけない日の前に、いやだいやだと言っては、当日終わってケロリとしていることがよくあったので、まさにこの絵本のバジくんと同じ気持ちではないかと思い、今回読みたいと思いました。2年生の子どもたちの中には、息子と同じように何かの発表の前に気が重くなっている子も多いだろうから、この絵本のバジくんがそのドキドキを乗り越えていく姿を見て励まされる子もいるのではないかと思ったのです。
子どもたちを応援したいという気持ちからこの絵本を選びました。
【子どもたちの反応は?】
金曜日に歌のテストがあるというバジ。「いやだなあ。はずかしいなあ。うたわなくてすむほうほうはないかなあ」というセリフを読むと、「そういうことある」「その日はやすんじゃう!」との声。
その後、バジが赤いボールを拾って、赤いボールが出てきた「むかしのはなし」を思い出す場面では一気に空気が静まり返り、子どもたちが集中していくのが分かりました。その後は、バジが赤いボールを使うのか使わないのか、みんな真剣に見守ります。
そして金曜日、「はい、つぎはバジくん、まえへでてください」という先生のセリフのところで子どもたちの緊張が増したのを感じました。
読み終わった後に伝えてくれた感想
- バジが赤いボールを見つけたときに思い出した「むかしのはなし」がちょっとこわかった。
- バジが見つけた赤いボールは、時間をすすめてくれるボールだと思ったけれど、急に空が晴れたのは偶然で、本当はなんの力もなかったんじゃないか?
- バジが歌を歌う場面で、どんな歌を歌ったのかが気になった。
【ひと言アドバイス】
- 月曜日から木曜日まで、魔法の赤いボールを使うか使わないか何度も迷うバジのセリフを読む時に、小学生の子もこんな感じで迷うんじゃないかということを想像しながら読むとよりバジの気持ちに声が乗るのではないかと思います。
- 金曜日の歌の発表の場面には文字がないのですが、バジがどんな歌を歌っているのか、どんな風に歌っているのかを子どもたちがたっぷり想像できるように、ゆっくり時間をとって見開きページを見せるのがおすすめです。
- 金曜日に登場する先生のセリフ「はい、つぎはバジくん、まえへでてください」は、ここまでバジのセリフが続いているところに急に出てくるので、メリハリをつけてバジのセリフとは雰囲気を変えて読みたいところです。ここで一気に歌の発表への緊張感が増すでしょう。
以上で今回のレポートを終了します。
「絵本ナビスタッフ読み聞かせ会レポート」は毎回、読み手も変わり、場所も違う、さまざまな読み聞かせ会の様子をお伝えしていきます。
次回もどうぞお楽しみに!
秋山朋恵(あきやま ともえ)
絵本ナビ 副編集長・児童書主担当
<これまでの読み聞かせ活動>
書店に勤めていた頃におはなし会と出会い、読み聞かせを始める。2005年より8年間、私立和光小学校の図書室に勤務し、小学生への読み聞かせを行ったり、保護者の読み聞かせサークルの相談に乗ったりしながら、経験を重ねる。その傍ら、プライベートでも読み聞かせグループを主宰。約12年間にわたりさまざまな場所で0歳から小学生を対象としたおはなし会を実施。
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