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絵本ナビスタッフ読み聞かせ会レポート!

絵本ナビスタッフ読み聞かせ会レポート vol.1 読み手と聞き手のコール&レスポンスを大切に

「読み聞かせの会ってどんな風に行われているの?」
「いろいろな読み聞かせ会をのぞいてみたい」
「どんな絵本が読まれているのだろう?」……

 

さまざまな読み聞かせ会やおはなし会。絵本ナビのスタッフも、個人的な活動として、園や学校、図書館、子どもの施設などで子どもたちに絵本を読んだり、本を紹介するブックトークへ出かけています。

 

本記事では、読み聞かせ会で読んだ絵本や子どもたちの反応、読み聞かせのポイントなどを絵本ナビスタッフにレポートしてもらいます。

vol.1 今回レポートするのは……

絵本ナビ代表の金柿です。今回は、2003年から活動を続けている「パパ’s 絵本プロジェクト」(※)のイベントで、絵本ライブを行った時のレポートです。

まず、僕が読み聞かせで大事にしていることからお伝えしたいと思います。

読み聞かせでは、参加してくれた子どもたちや大人との対話だったり、気持ちのキャッチボールを大事にしています。一方的に読むのではなくて、コール&レスポンスが大切だと考えています。それは、読み手と聞き手の一体感や場の一体感が大切だと感じているからです。

読み聞かせに入る前の導入の工夫として、参加の子どもたちにはいつも年齢を聞いて手を挙げてもらっています。年齢の質問にしているのは、小さな子でもみんなが答えられる質問だからです。会のはじめにこのやりとりが入ることで場が和むので、大切にしていることの一つです。

 

(絵本ナビ代表 金柿)

※パパ’s 絵本プロジェクトとは……

パパによる絵本読み聞かせ&歌ユニット。2003年5月、仕事で知り合った育児中の父親たちが、お互いの育児の苦労話や、子どもに読んできた絵本の話で盛り上がり、「なんかやろうか!」とスタートした。以後20年間、日本全国で活動を展開し、今では各地で影響を受けた「絵本を読むパパチーム」が誕生している。

パパ’s 絵本プロジェクト、左から安藤さん、金柿、田中さん、スペシャルゲストの入江さん

読み聞かせ会レポート

  • 場所 
    武蔵野総合体育館1階ダンス室(子育て応援スペースとことこ とことこ保育室主催)
  • 実施時間 
    10:30~12:00(全体で1時間半)
  • 読んだ絵本の冊数 
    全体で11冊、そのうち金柿4冊
  • 参加人数 
    子ども47名、大人56名
  • 参加した子どもの年齢 
    0、1、2歳が中心+小学生数名
読み聞かせ会で読んだ絵本を手にとって読んでいる子どもたち

今回読んだ絵本は……

『もこ もこもこ』

読み聞かせ時間の目安:1分~1分15秒

もこ もこもこ

「しーん、もこもこ、にょきにょき」とふくれあがったものは、みるまに大きくなってパチンとはじけた。詩人と異色の画家がおりなす不思議でおかしな絵本の世界。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=130

【選んだ理由】

普段の読み聞かせではあまり読まない絵本なのですが、今回は小さい子が多かったので、入りはこの絵本だと確信し、はじめの一冊としてセレクトしました。
 

【子どもたちの反応は?】

はじめは落ち着かない感じでざわざわしていたのが、読み始めた途端に集中してきました。こんなに集中力があるんだと親御さんも驚いたのではないでしょうか。ある場面で「しーん」と言った瞬間に絵本のページに注目が集まります。本当に驚くべき集中力です。小さい子から大きい子までが絵本を見て、固唾をのんで次の展開を待っている姿が見られました。

【ひと言アドバイス】

最後まで読んだ後は、はじめのページへと戻ります。そうすると集中がふっと解けてリラックスした雰囲気で終わることができます。

『ぴょーん』

読み聞かせ時間の目安:1分30秒(参加型のため、子どもたちの掛け合いの様子で時間変動あり)

ぴょーん

ページをめくるたびにいろんないきものが、「ぴょーん」とはねる楽しい絵本です。
小さなお子さまに読んであげると、いっしょになってとんでしまうという、たのしいご報告をたくさんいただいています。
 

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=891
子どもも大人もみんなで「ぴょーん!」

【選んだ理由】

こちらも参加の子どもたちが小さいので分かりやすい絵本を、と考えてセレクトしました。また、0歳、1歳が多い場合はパパにも参加してもらえる良さがあります。「ぴょーん」という言葉に合わせて、パパやママが赤ちゃんを持ち上げ、赤ちゃんがニコニコ笑顔になる、そんな光景を眺めるだけでも幸せな気持ちになってしまう絵本です。読む前に、「腕が痛くなるので注意してくださいね」と呼びかけて場を和ませてから読み始めます。

【子どもたちの反応は?】

小さい子向けの絵本ではありますが、大きい子は自分で「ぴょーん」と飛べるので、優越感を感じている様子が見えます。

「ぴょーん」と飛び跳ねる生き物がしばらく続いた後、ふいに「かたつむり」が登場します。飛べるのか飛べないのかみんなで考える間ができます。このページが山場でしょう。かたつむりは飛べないはず……でも思わず飛んじゃう子がいたりするのも楽しいところです。かたつむりの登場によって、この絵本がただ飛び跳ねるだけの単純な内容ではないことが子どもたちに伝わります。とびうおが出てくるページでは大きい子の出番で、オレの知識を聞いてくれーとばかりに声があがります。

【ひと言アドバイス】

お話の絵本が続いた後にこの絵本を持ってくると、体が動かせるエクササイズにもなるので、読み聞かせ会の途中に入れるのもおすすめです。

くだもの なんだ

読み聞かせ時間の目安:3分(参加型のため、子どもたちの掛け合いの様子で時間変動あり)

くだもの なんだ

ふしぎな形のシルエットがつぎつぎに登場。これは何だろう? 実はくだものです。想像力を思いっきり広げる楽しさと、身近な物の美しい形を発見するよろこびがいっぱい。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=13289

【選んだ理由】

僕の読み聞かせの鉄板絵本です。以前はよく『やさいのおなか』を読んでいたのですが、『やさいのおなか』は知っている子が増えて読む前から答えが分かってしまっているので、少し難易度が高い『くだものなんだ』をセレクトしました。小さい子向けに思える絵本ですが、ひねりを効かせた問題が出てくるので、大きい子も楽しめますし、さらに大人も参加できるのでおすすめです。聞き手とコミュニケーションがとれる絵本として、プログラムに入れたい一冊です。

【子どもたちの反応は?】

「これなんだろう?」と問いかけると、「りんごー!」「みかーん!」と、子どもたちからたくさんの声があがります。ヒントで色を見せたり、せーので声を合わせてみたり、そのくだものが好きな人に手をあげてもらったりして、大いに盛り上がりました。

【ひと言アドバイス】

「くだものなーんだ」とクイズ形式で進んでいく絵本ですが、もし答えがはずれだったとしても、発言したこと自体を褒めたいと思っています。それはこの絵本を読む目的が正解を求めているわけでは決してないからです。思ったことを言ってもいいんだ! という空気を作りたいと考えています。ただそうしていると、みんなが声を出してきて盛り上がりすぎることがあるので、その場合には、読む量や読むページなどを工夫するなど、コントロールが必要です。

『いくらなんでもいくらくん』

読み聞かせ時間の目安:6分半~7分

いくらなんでもいくらくん

町外れに突然出来た「なんでもや」。その店主は、なんとイクラのおすしでした。城に連れてこられたイクラのおすしは、何でも屋としての力をお殿様の前で披露します。季節外れのあまーい葡萄も、きれいな桜も、盛大な花火も、なんでもござれ。その方法も奇想天外。喜んだお殿様はイクラくんを城に住まわすことに。もう、イクラくんなしの生活なんて考えられません。そんなある日…

【選んだ理由】

後半は長めの絵本をセレクトしました。僕のお気に入り絵本からです。いくらが主人公という珍しい設定なので、子どもたちに絵本を覚えてもらいやすいという良さがあります。なんの教訓もない結末がいいんです。

【子どもたちの反応は?】

お殿様がいくらくんにハマっていく様子を、めいっぱいおもしろおかしく読むと、子どもたちも大いに盛り上がって笑ってくれました。

【ひと言アドバイス】

自分が大好きな絵本をみんなに紹介する。そんな伝え方があってもいいですよね。 読み手の好きな気持ちが、子どもたちにもしっかり伝わっていくのを感じます。

おはなし会を終えて

読み聞かせイベントでは、子どもたちには絵本を自由にのびのびと楽しんでほしいと願っています。たとえば、子どもたちが興奮して騒いだり立ち上がったりしても、子どもたちを注意するのではなく、運営側が絵本やトークで落ち着かせることが大事だと思っています。子どもたちが絵本を嫌になってしまってはもったいないので。

パパ’s 絵本プロジェクトの絵本ライブにはパパもたくさん参加してくれるところが特徴です。そのパパたちが、絵本を読むってあんな感じでいいんだ! と思ってくれたり、自分の子どもがこんなに楽しそうにするなら読んでみよう、と家に帰って読み始めるということを願ってやっています。終わった後のアンケートで「うちでもやってみます」という返答があるととても嬉しいですね。

誰にも真似できないお話の人を目指しているわけではなく、うちでもやってみます! というパパを増やすことを目指して、この先も活動していきます。

金柿秀幸(絵本ナビ代表)

「絵本ナビ」の代表として、また父親による読み聞かせユニット「パパ's絵本プロジェクト」のメンバーとして、素敵な絵本をたくさんの親子に紹介することをライフワークとしている。絵本『あいぼうはどこへ?』『としょかんはどこへ?』(イメジネイション・プラス刊)の翻訳者でもある。

金柿さん、レポートありがとうございました。読み手と聞き手の双方向のコミュニケーションを大事にしていることや、そのことによって、子どもたちがのびのび自由に絵本を楽しむ様子が伝わってきました。

 

「絵本ナビスタッフ読み聞かせ会レポート」は毎回、読み手も変わり、場所も違う、さまざまな読み聞かせ会の様子をお伝えしていきます。

どうぞ次回もお楽しみに。

構成・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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