【今週の今日の一冊】4月2日は「国際子どもの本の日」。物語をつばさに 想像を力に あらたなはじまりへ
今日から新年度。本にまつわる記念日では、4月2日に「国際子どもの本の日」という大きな記念日があります。童話作家アンデルセンの誕生日が日にちの由来となっており、子どもに本のよろこびを、大人にも子どもの本のおもしろさをつたえるため、1967年、IBBY(国際児童図書評議会)によって定められました。世界中で子どもと本のお祭りがひらかれます。
IBBYに加盟する支部は、この日にあわせて順番に、記念のポスターとメッセージを作成するそうなのですが、2024年は、創立50年を迎えるJBBY(日本児童図書評議会)が担当国ということで、国際アンデルセン賞作家の角野栄子さんと、スロバキア在住の絵本作家 降矢ななさんによる楽しいポスターが作られました。
今週は、「国際子どもの本の日」に関連する本や、本のよろこびを表現する本などをご紹介します。
※「国際子どもの本の日」や2024年の記念ポスターについての詳細はJBBYのHPをご覧ください。
https://jbby.org/news/oversea-news/post-19192
2024年4月1日から4月7日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
4月1日 「子どもの本」が、世界を変えると信じて…
月曜日は『子どもの本で平和をつくる イェラ・レップマンの目ざしたこと』
「この混乱した世界を正すことを、
子どもたちからはじめましょう。
そうすれば、子どもたちがおとなたちに、すすむべき道を示してくれるでしょう」
──── イエラ・レップマン 1945年
戦争で、ボロボロになった町。
ガレキと土くれで散らかったそこに、アンネリーゼと弟のペーターは住んでいました。
ひどい空腹に盗みの誘惑さえ覚え、落ちているオレンジの皮をかじっては、飢えをしのぎます。
食べ物はないかと市場を歩いていたふたりは、ふと、人々がおおきな建物にならんで入っていくのを見つけます。
なにか食べものをもらえるのかもしれない。アンネリーゼは、ペーターの手をとって建物のなかに入りました。
ところが、そこに食べ物はありませんでした。代わりにあったのは、たくさんの本! それも、様々な国の、様々な言葉で書かれた、世界中の「子どものための本」です!
イタリアの「ピノッキオの冒険」。スイスの「アルプスの少女ハイジ」。スウェーデンの「長くつ下のピッピ」。
大広間ではひとりの女の人が、子どもたちに本を読み聞かせていました。
彼女の名前は、イエラ・レップマン。「子どもの本」が、世界を変えると信じた女性です。
本作は、第二次世界大戦後のドイツを舞台に、悲惨な経験と飢えに苦しむアンネリーゼとペーターを通じて、イエラ・レップマンのつらぬいた理念を伝える一冊です。
「すばらしい子どもの本は、人びとが理解しあうための“かけ橋”になる」と信じ、子どもには食べものと同じように本も必要だと考えていたイエラ・レップマンは、のちに国際児童図書評議会を創設し、世界初であり世界最大の子どもの本の図書館、ミュンヘン国際児童図書館を作りました。
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(堀井拓馬 小説家)
4月2日 「国際子どもの本の日」(アンデルセン誕生日)!
火曜日は『アンデルセンの夢の旅』
「なにかお話を聞かせて!」馬車に乗り合わせた少女にせがまれ、男の人はとっておきの話をはじめました。まずしい靴屋の息子のハンスが、たった一人でコペンハーゲンに旅立つ話です。歌ったり、おしばいをしたいというハンスの夢は途中で挫折しましたが、苦労のすえ、お話を書くことで、ついに自分の王国を手に入れました。この少年こそ、人々の心に残る童話をたくさん書いたハンス・クリスチャン・アンデルセンだったのです。
『空とぶトランク』や『親指姫』『みにくいアヒルの子』『はだかの王様』『雪の女王』など、アンデルセン童話の名場面をたくみに織り込んだ伝記絵本。
「わたしの人生は、ひとつのすばらしいメルヘンでした」
*有名な児童文学や、その登場人物などもこっそり描き込まれています。ぜひさがしてみてください。
読者の声より
きれいな色合いの柔らかなイラストにひかれ、手に取りました。
アンデルセンの自伝的絵本。アンデルセン自身が、馬車で出会った少女に、自分の子ども時代を語ります。
童話の名場面を織り込んだストーリーになっているところが楽しいです。しかも、おやゆびひめ、はだかのおうさまなどのアンデルセン童話だけでなく、ムーミンやながくつをはいたねこなどのキャラクターが登場するのもうれしいです。
(クッチーナママさん 40代・ママ 女の子18歳、女の子15歳、男の子13歳)
4月3日 本を愛する人に捧げる「おはなしのはじまり」のお話
水曜日は『おはなしのたねをまくと…』
「いたばし国際絵本翻訳コンクール」第28回イタリア語部門大賞受賞作。
すべての本好きに捧げる「おはなしのはじまり」のお話し。
おはなしは、時間をかけ、手をかけて育てられ、本という形になって、図書館へやってくる。
それまでにたくさんの旅をしてくるという、本への驚きと読むことの嬉しさをイメージ豊かなイラストで描き出す。
ロアルド・ダールやラドヤード・キプリング、ルイス・キャロルなど子ども時代に夢中になって本のページを繰るおはなしを贈ってくれた作家たちへのオマージュに満ちた絵本。
読者の声より
いたばし国際絵本翻訳大賞(イタリア語部門)最優秀翻訳大賞を受賞した作品。
読書好きにはたまらない、おはなしが生まれるイメージを描いた作品です。
どこかの長生きのおじいさんがタイプライターでしたためた紙をなんと、種のように地面に埋めて育てるのです。やがて一本の木となり、おはなしの葉が生い茂り。その葉は収穫され、製本され、紙のつばさとなって旅立つ様子は、なかなかの光景です。
そして、読者との出会いも、そうそう、こんな感じですね。読者と出会ってこそ、おはなしが完成するのですから。こんな素敵な出会い、ぜひ、体感してほしいです。
(レイラさん 50代・ママ 男の子29歳、男の子26歳)
4月4日 ゲームがないとタイクツ!……ってほんと?
木曜日は『なんにもおきない まほうのいちにち』
お休みの度にママと来る森の中の家。毎日書きものをしているママの横で、ぼくは何時間でもゲームをする。
「いいかげん、ゲームはやめたらどう? 今日も一日中、何にもしないつもり?」
いつもの通りママが怒り、ゲームを取りあげる。そしてぼくは、いつもの通りゲームを取りかえし、外へ出る。雨の庭では、世界中のタイクツがぼくを待ち構えている。おまけにゲームをなくしてしまった! ゲームなしで、ぼくはどうすればいい? するとその時、ぼくの前を通りすぎていったのは、大きなカタツムリたちの行列。そっちには一体なにがあるのだろう。山道を歩いていってみると……。
世界が注目するイタリア生まれの絵本作家ベアトリーチェ・アレマーニャの代表作である本書は、世界10か国以上に翻訳され、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞。タイクツを持て余していた少年が、自然の不思議に出会って心が躍動していく様子を、美しく印象的に描き出します。
地面がきらきらと輝きだし、太陽の光はシャワーのように降りそそぎ、自分の心臓の音に驚いて、転がって見上げた世界が全て新しいものに見える。こんなに楽しいことを、どうして今までしてこなかったんだろう。
本当にそう。くるくると変化する少年の表情、目が離せなくなるほど魅力的な森の景色の数々、そして訪れるママとぼくの何にもしない静かで幸せな時間。それらを味わいながら、心から共感してしまうのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
4月5日 あなたが想像した、あなただけの世界へ
金曜日は『ほん book』
これは、本。まっしろな画面に文字だけが浮きあがる、本。
ボタンもないし、音もしない。変わったところは、なにもない。
でも……よく見て。もっとよく見て。
ほうら、目の前に突然広がったのは、まったくの別世界。
あなたが想像した、あなただけの世界。
そこでは、どんなことでも起こるし、なんでもできる。
不思議なともだちがたくさんいて、ずっと遊んでいることもできるし、
ひとりになることだってできる。
誰もじゃまなんかしない、自分だけの時間!
ぱっと見た目は控えめで、目新しいこともないけれど。それでも、本の一番の魅力というのは、いつでもそばにあるということ。すぐに抱きしめることができ、世界に入りこむことができる。時には自分の道を照らしてくれることもあれば、拠りどころとなってくれることもある。
本に触れる素晴らしさを、本の形の中で描きだすこの絵本。短いけれど、まっすぐに伝わってくる言葉。静かだけれど、想像力をどこまでも広げてくれるような、幻想的な絵。その両方をゆっくりと味わいながら、子どもたちが本の魅力を自分で発見していくことができたなら。こんなに嬉しいことはありません。
世の中はどんどん便利になり、生活の中で扱うデジタル機器だって増えていきます。それでも、紙の絵本がなくならないのは、確かな存在理由があるから。実際に手にとり、声に出し、手ざわりを確かめながら、ページをめくっていってくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
この絵本『ほん book』は、原題もそのまま「Book」。
アメリカの作家デイビッド・マイルズさんが文を書き、ナタリー・フープスさんが絵を描いています。
物語が書かれている訳ではありません。しいていうなら、本の世界への旅が描かれているといっていいでしょう。
こういう絵本は文をたどるのもいいですし、絵だけをじっと見ていく、そんな読む方もあっていいと思います。
表紙見返しにこんな惹句がのっています。
「さあ、すばらしい本の世界へ飛び立ちましょう!そこは、あなただけのとくべつな場所!」
本への旅は、ここから始まっているのではありません。
まずは、表紙。離陸前のシートベルトをしっかり締めた感じでしょうか。
そして、この見返しは離陸前の機内アナウンス。なんだか、もうワクワクしてきませんか。
開いた本はどんな世界ですか。
この絵本では「まほうの森」と書かれていますが、もしかした海辺かもしれないし、無限の宇宙かもしれません。
あなたが手にした乗車券は、あなたの思うままの世界へ連れていってくれます。
最後のページに本を抱きしめる男の子が描かれていますが、それはきっとあなた自身。
この絵本は読者に本への旅を誘ってくれます。
(夏の雨さん 60代・パパ)
4月6日 角野栄子さんが絵を描いた新しい物語
土曜日は『月さんとザザさん』
4月7日 「ともだちやです。ともだちは いりませんか。」
日曜日は『ともだちや』
何だかおかしな格好をしたキツネがやってきましたよ。
両手にちょうちん、のぼりを立てて、彼は言うのです。
「えー、ともだちやです。
ともだちは いりませんか。」
彼が思いついたのは「ともだちや」。
1時間で100円、2時間で200円…お金をもらってともだちになってあげるのです。
ひとりぼっちの人に、さびしい人に、ともだちや。
うーん、これはなかなか名案!? どうかしら。
200円もらってクマのともだちになったキツネは、とても疲れているように見えますが…。
そんな時、どこかから声がかかります。
「おい、キツネ」
こわごわと声のする方を覗き込むと、そこにいたのはオオカミ。
トランプの相手をしろ、と言うのです。
言われるままにひとりしきりトランプ遊びで盛り上がった後、キツネがお代をもらうために申し訳なさそうに手を差し出します。すると、オオカミは思わぬことを言うのです……。
「ともだち1時間100円」、なんて強烈なフレーズなのでしょう。だけどこれこそ、これから長く続くキツネとオオカミの関係の始まりの物語なのです。こんな事を思いつくのは一体どんな狡猾なキツネなのかと思いきや、憎めないどころか考えている事が全部が表情に出てしまうような、愛嬌たっぷり、一度見たらすぐに好きになってしまうようなキャラクターなのです。オオカミから「ほんとうのともだち」という言葉を聞いて、心の底から驚くキツネ。どうやら何も知らずに「ともだち」を欲しがっていたのは、キツネの方だったようです。
「なるほどねえ」
いつだって媚びることなく、思ったことだけをいうのはオオカミ。しびれますよね。この二人の「ともだち関係」はこれからどうなっていくのでしょう。内田麟太郎さんと降矢ななさんによる最高傑作シリーズ「おれたち、ともだち!」の記念すべき第1作目。この1冊ははずせませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
読者の声より
友達が欲しいのに、友達をどうやって作るかがわからないさびしがり屋のキツネ。「ともだちや」って商売をして、友達を作ろうとしたんですね。
友達って自然にできてしまうものだと思いがちですけど、でもどこかで必ず勇気を出して一歩踏み出して、声を掛けたりしたはず。
その一歩の踏み出し方のタイミングを逸してしまうと、キツネのように孤独になってしまったりするのかな。
そんな時、ちょっと強引なオオカミみたいな人がいてくれるとすごく助かりますね。
私達の周りにも、仲良しのタイミングをちょっと逃して、こちらの様子をうかがっているお友達がいるかもしれません。
そんな雰囲気を感じたら、オオカミのようにちょっと強引にしてみるのも、良いきっかけになりますね。
絵が表情豊かで楽しいです。
キツネとオオカミがトランプをして遊んでいる所、お互いとっても楽しそう。「ほんとうのともだち」を知った時のキツネのとまどったような顔はかわいい!。オオカミが大切な宝物のミニカーをキツネに渡す所は、お互いにとっても良い表情をしているんです。
最後に、「ともだちや」ののぼりを捨てて、ミニカーを片手に走っていくキツネの後姿を見ると、「ともだちができて良かったね」という気持ちになります。
このシリーズ、読み進めてみようと思います。
(メロコトンさん 40代・ママ 女の子7歳)
いかがでしたか。4/2の「国際子どもの本の日」の前後2週間、3/27~4/9は「絵本週間」でもあります。よりすぐれた絵本文化の発展と、教育の場や家庭にいっそう「絵本読書」が定着することを願って設けられています。
今週は、子どもも大人も「こどもの本」にいつも以上に触れてみませんか。
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