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未来の今日の一冊 ~今週はどんな1週間?~

【今週の今日の一冊】4月10日は「教科書の日」。令和6年度の国語教科書掲載の注目作品は?

4年に1度行われる教科書改訂。2024年(令和6年)はその改訂の年にあたり、この4月から教科書が新しくなります。今回、「光村図書出版」「東京書籍」「教育出版」の3社の、令和2年度版国語教科書と令和6年度版国語教科書で、それぞれ新たに加わった作品を図書リストから調べてみました。
今週は、国語教科書に新しく掲載された注目作品をご紹介します。

2024年4月8日から4月14日までの絵本「今日の一冊」をご紹介

4月8日 春の種をなくしたはるねこと一緒に作ったのは?

※令和6年度 2年生国語教科書(教育図書)掲載

月曜日は『はるねこ』

はるねこ

季節を運ぶユニークな猫たちを描いた「四季ねこ」シリーズ、本書は心おどる「春」の物語です。

もう暖かくなってもいいころなのに、その年の春はなかなかやってきませんでした。不思議に思ったあやのが外を見てみると、若草色をした猫が何かを一生懸命に探しています。話を聞いてみると、〈春の種〉がつまった、きんちゃくぶくろを落としてしまったというのです。それを聞いたあやのは、折り紙で春を作ろうと提案します……。

若草色の猫とともに折り紙を作るあやのはとっても楽しそうです。皆さんだったら、こういうとき、何をつくりますか? 「春に出てくるものってなんだっけ?」と、お子さんと話したり考えたりしながら読むのも楽しいですね。
いろとりどりのお花、ちょうちょ、小鳥、てんとう虫、桜の木、うさぎ、やまね……。どんどん生み出される春に、胸がわくわくしてきて、口を大きくあけて笑う猫とあやのの絵がなんとも幸せ気分にさせてくれます。

そして、春の国に帰らなくてはならない猫のために、あやのが折り紙で作ってあげたものとは……? とても意外なもので、ページをめくった瞬間、思わず「わあ」と歓声をあげてしまいました。
心浮き立つような春の風や光を閉じ込めた一冊です。
本書が気に入った方は、ぜひ『ふゆねこ』『なつねこ』『あきねこ』もあわせて楽しんでください。季節の感じ方や味わい方が、一段と深まる、素敵なエピソードがたっぷりつまっているシリーズです。

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=67118

4月9日 「今日はきっとなにかある。とくべつなこと!」

※令和6年度 3年生国語教科書(教育図書)掲載

火曜日は『紙ひこうき、きみへ』

紙ひこうき、きみへ

「今日はきっとなにかある。
 とくべつなこと!」

ある朝、キリリは風の音を聞きながら思うのです。すると、飛んできたのは青い紙ひこうき。そこには「夕方、そちらにつきます」と書かかれてあり、途端にキリリは落ちつかない気持ちになりながら一日を過ごします。一体誰が来るというのでしょう。夕方になって、そこに立っていたのは……。

少し不思議な出会いから始まる、シマリスのキリリとミケリスのミークの物語。すぐに仲良しの友達になった二人は一緒に楽しい時間を過ごすのですが、今の暮らしを楽しんでいるキリリと、ずっと旅を続けているミークには、やがて別れの時がやってきます。ミークが旅立ってしまったからです。ひとり残され、どうにもならない気持ちを抱えるキリリ。次の場所へと歩き続けていくミーク。

だけど話はここでは終わりません。大切な役割を果たすのは、ミークがキリリに贈った「あるもの」を切る取ることのできるハサミと、空へ放たれた数えきれないほどの紙ひこうきの存在。言葉にならないお互いの心の色を映し出し、その関係性に大きな変化をもたらせてくれるのです。

誰かを想うことや、会いたいという気持ち。それは、とても繊細ではかなくて。小さなきっかけですぐに壊れ、どこかに飛んでいってしまいそうで。でも、この物語の中でそれは様々な形となって二人をつなぎとめ、読み終わった時に確かな手応えを感じることが出来るのです。

56ページと、絵本にしては少し長めの物語。それでも野中柊さんの愛らしく自由で生き生きとした文章の魅力と、全ページオールカラーで味わうことのできる木内達朗さんの素晴らしい絵によって、世界にあっという間にひき込まれてしまうはず。(どこを切り取ってもうっとりするほど美しい色彩とキリリとミークの圧倒的な可愛さは、直接手に取って確認してみてくださいね!)

人との関係性について考えることの多い今だからこそ、幅広い年齢層に読んでもらいたい1冊です。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=132822
https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=132822

4月10日 「たべる」を違った視点でとらえてうたった15の詩

※令和6年度 1年生国語教科書(東京書籍)掲載

水曜日は『たべちゃうぞ』

たべちゃうぞ

「たべちゃうぞ ごはん ぱくぱく たべちゃうぞ」
バクバク食べちゃう詩の絵本。
何でもかんでも食べてぐぐんと大きくなったかと思えば、
あおむしは葉っぱを食べて、木はおひさまを食べる。
山中利子さんのかわいくて、ちょっぴり怖い(!?)詩が15こ。
女の子とかいじゅうみたいな子が登場して、
どの詩もみんな違った詩のようで、つながっているのも面白い。
特に私の心を捉えて離さないフレーズが
「すきだってことは たべちゃいたいってことなんだって」。
ああ、なんだか奥が深い。
それを受けての最後の詩。
これもまた。読む人によって全然違った意味に受けとめられるかもしれませんね。

そして表紙の絵でもわかる通り、早川純子さんの木版画が素晴らしいです!
読み終わった後に元気になって、何だか食欲までわいてきちゃう感じです。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=87253

4月11日 あなたの時間がいつの間にか盗まれていたとしたら?

※令和6年度 5年生国語教科書(光村教育図書)掲載

木曜日は『岩波少年文庫 127 モモ』

岩波少年文庫 127 モモ

赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人間が平等に持っている24時間。自分の時間を自由に使えるのは当たり前? でも、もし、あなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら……?

どこからともなくやって来て、町の円形劇場の廃墟に住みついたモモ。みすぼらしい服装に、ぼさぼさの巻き毛をした小さな女の子モモは、豊かな想像力と、特別な力を持っていました。モモに話を聞いてもらうと、ふしぎなことに悩みがたちどころに解決してしまうのです。

ある日、町に灰色の男たちが現われてから、すべてが変わりはじめます。「時間貯蓄銀行」からやって来た彼らの目的は、人間の時間を盗むこと。人々は時間を節約するため、せかせかと生活をするようになり、人生を楽しむことを忘れてしまいます。節約した時間は盗まれているとも知らず……。異変に気づいたモモは、みんなに注意をしようとしますが、灰色の男たちに狙われるはめになります。

不気味で恐ろしい灰色の男たちに、たったひとりで立ち向かうモモ。彼女をひとりぼっちにしようとする時間泥棒たちのずるがしこい作戦の数々! いったいどうなっちゃうの? と、予想できない展開にハラハラドキドキ、目が離せません。そんなモモに手を差しのべるのは、時間をつかさどる不思議な老人マイスター・ホラと、ちょっと先の未来を見通せるカメのカシオペイア。彼らとモモとの哲学的なやりとりは、私たちに対する問いかけであり、「時間とは日々の生活であり、その人自身である」という真理を教えてもくれます。そして疲れてしまったモモの心を、温かいもので満たしてくれるのが、黄金色のクロワッサンとホットチョコレート! この最高の組み合わせは絶対に忘れられません。

「モモのところに行ってごらん!」困ったことがあるとき、人々はこう言います。モモは、生きていく上で何が一番大切か、何を守るべきかを知っているのです――友だち、想像力、自由。遊ぶ時、モモと子どもたちは想像力を全開にして驚異の大冒険に乗り出します。その興奮を、みなさんもぜひ一緒に体感してください。「時間がない」「そんなの役にたたない」なんて口にしがちな、忙しがっているすべての子どもと大人に読んでもらいたい一冊です。この物語を読めば、時間に対する考え方が変わってしまうかもしれません。

4月12日 おおきな季節のめぐりの中でつらなるいのちの詩

※令和6年度 5年生国語教科書(光村教育図書)掲載

金曜日は『チェロの木』

チェロの木

この物語の主人公となる少年のおじいさんは森の木を育てる仕事、そしてお父さんは木からバイオリンやチェロを作る楽器職人でした。少年は、小さな頃から森の中を歩き、その光や空気を感じ、音に耳を澄ませてきました。そして、家では工房で黙々と仕事をするお父さんを見て育っていったのです。
そんなある日、少年はお父さんの作った楽器を弾くチェリストのパブロさんに出会います。パブロさんは教会の演奏会に少年を招待してくれました。そこで触れたパブロさんの演奏に、チェロの音色に、少年は心を奪われていきます。パブロさんのバッハの中には、森の風や川の音、小鳥たちのはばたきが見える気がしたのです。そしてそんな風に歌うチェロを作り出したのはお父さんなのです。
やがて季節も移り変わっていき、クリスマスも過ぎた頃、お父さんが誕生日のプレゼントとして作ってくれたのは少年のチェロ!お父さんの手の中で初めて音を出した時、少年は自分がチェロになったような気がして・・・。

季節を通して変化していく森の風景の、息をのむほどの美しさ。少年が小さく佇むその景色に見とれていると、どのページからも何か音色が聞こえてくるような気がしてきます。そして、それは楽器が並ぶお父さんの工房やチェロの演奏のシーンからも聞こえてきます。この絵本の中で少年の成長とともに描かれていくのは、おじいさんからお父さん、お父さんから少年へ、そして森から木、木から楽器、楽器が奏でる音楽へとつらなっていく大きな流れ。その命の詩がチェロの響きとして絵本全体から感じることができるのです。

弦楽器の中でも何か特別な音色があると感じるチェロ。作者のいせひでこさんも、13歳の時に出会って以降現在にいたるまでずっと弾き続けられているそうです。阪神淡路大震災の復興支援「1000人のチェロ・コンサート」に参加された体験から生まれた絵本『1000の風 1000のチェロ』の発表以来、十数年の創作のモチーフとされてきた"木と人"を結実させた本作品。
チェロの奏でる音楽と、いせさんの描く絵が、ひとつになって心に迫ってくるこの感動を、皆さん是非体験してみてください。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=88912

4月13日 すべての人に星空を!

※令和6年度 6年生国語教科書(光村教育図書)掲載

土曜日は『星空を届けたい 出張プラネタリウム、はじめました!』

星空を届けたい 出張プラネタリウム、はじめました!

「本物の星空を見られない人に、星を届けたい!」科学館のプラネタリウムの仕事を通じて、多くの人に星や宇宙の魅力を伝えようと精力的に活動してきた髙橋真理子さん。けれども娘の入院を機に、入院中の子どもたちや、外出できない人たちのことが気になりはじめます。やがて「科学館に来られない人に、星空を届けたい」という気持ちが大きくなり、科学館を辞めて、自分でプラネタリウムを持って小児病棟や被災地を投影を行う、新しい仕事をはじめました。

全国で8000人が体験した、〈病院がプラネタリウム〉の誕生物語。

4月14日 ひたすら子どもたちの手もとに本を届けます…

※令和6年度 6年生国語教科書(光村教育図書)掲載

日曜日は『ぼくのブック・ウーマン』

ぼくのブック・ウーマン

カル少年は、高い山の上に住んでいるので、学校へ通うことができません。もちろん図書館なんてないし、本を読みたいと思ったこともありませんでした。ある日、馬に乗った女の人が、カルの家に本を持ってやってきて……。いまから80年ほど前、アメリカは不景気の時代で、だれもが貧しくはありましたが、子どもに本を読ませたいという気持ちを忘れませんでした。学校も図書館もない不便な所で生活をしている子どもたちのために、図書館の本を届けようと考え出されたのが、「荷馬図書館員」という職業でした。彼女たちは「ブック・ウーマン」と呼ばれ、馬に乗って、暑い日も、寒い日も、どんなに遠い道のりでも、ひたすら子どもたちの手もとに本を届けたのです。

いかがでしたか。

新たに教科書に掲載されることになった作品をこの機会に手にとってみませんか。

選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
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