第71回産経児童出版文化賞大賞、児童向けの新刊書4291点から選ばれた9作品とは?
大賞は、『ビジュアル探検図鑑 小惑星・隕石 46億年の石』!
第71回産経児童出版文化賞の受賞9作品が決定し、発表されました。昨年1年間に刊行された児童向けの新刊書4291点を対象に審査が重ねられた結果、9点が大賞、JR賞、タイヘイ賞、美術賞、産経新聞社賞、フジテレビ賞、ニッポン放送賞、翻訳作品賞に選ばれました。
たくさんの児童向けの新刊から選ばれた、珠玉の作品を、詳しくご紹介します。
「第71回産経児童出版文化賞」受賞作品 【大賞】
『ビジュアル探検図鑑 小惑星・隕石 46億年の石』三品隆司/構成・文(岩崎書店)
今年の大賞は図鑑に! 宇宙の謎を解くカギ、小惑星について写真とともに分かりやすく教えてくれる一冊
小惑星と隕石には太陽系ができたころの情報が詰まっています。彗星・流星・クレーターなど様々な天体現象を、最新の研究と多数の写真とともに解説したビジュアル図鑑です。
【JR賞】
『じゅげむの夏』最上一平/作(佼成出版社)
2024年の課題図書中学年の部にも選定の一冊。4人の少年たちの夏休みの冒険
山ちゃん、シューちゃん、かっちゃん、ぼくの仲よし4人組は、天神集落で同じ小学校に通う4年生。かっちゃんは筋ジストロフィーという病気だけれど、小さい頃から一緒にいるぼくらにとって、かっちゃんは特別な存在ではない。親友のひとりだ。そのかっちゃんが、4年生の夏休みに、川へダイブしたいと言い始めた。天神集落の子どもにとって、川へのダイブは、大人への階段を一歩上がるような、そんなならわしだった。「だいじょうぶ、どぼんて落ちるだけだからさ。来年になったらとべなくなるかもしんねえし」。人なつっこい笑顔でそう言うかっちゃんの願いをきいてあげたくて、ぼくらは綿密に計画を練ったのだけれど……。
夏の匂いが濃く立ちこめる山あいの村で、死という確かで曖昧なものを共有しながら、めいっぱいいのちを謳歌する少年たちの夏の日をみずみずしく描いたさわやかな作品。
【タイヘイ賞】
『宿場町の一日』いわた慎二郎/作・絵(講談社)
江戸時代の旅を絵本で知ろう!
【美術賞】
『なつやすみ』麻生知子/作(福音館書店)
【産経新聞社賞】
『ゆうやけにとけていく』ザ・キャビンカンパニー/作(小学館)
夕焼けがすべてを包みこみ、とけていく。
夕焼けは喜びも悲しみも包み込む
だんだんと沈みゆく太陽を背景に、ジャングルジムで遊ぶ男の子、悔しくて石を蹴る女の子、買い物帰りの親子などが描き出されます。それぞれのシーンのいろいろな感情を、夕焼けがやさしく包み込み、誰にでも静かな夜がやってきます。
【編集担当からのおすすめ情報】
ページをめくる度に少しずつ沈んでいく太陽が印象的な、静かに噛みしめる雰囲気の絵本ができました。昭和初期を思わせるような少しノスタルジックな絵で展開する、ザ・キャビンカンパニーの新境地。贈り物としてもいいかもしれません。
【フジテレビ賞】
『けものみちのにわ』水凪紅美子/作(BL出版)
ちょっとこわくて、でもおもしろい、けものみちのにわで風花が出会ったのは……
小学5年生の風花(ふうか)は、小さいときから繰りかえし見る夢がある。知らない場所、知らない道に立つ風花の視界をうめつくすように、花びらが降りおちてくる夢だ。その話をしたおさない風花に、ほかの大人とは少しちがったことを話してくれた大好きなおじいちゃんは、いまはちがう家に、ひとりで住んでいる。
おじいちゃんの家のとなりにある“けものみち”は、不思議なものたちのとおりみち。おじいちゃんの家を中心にあらわれる、ときにおそろしく、ときにあたたかい、不思議なものたちとの交流を深めていく風花。そのなかで、普段はひょうひょうとして明るいおじいちゃん自身の、“不思議”の秘密が明らかになっていく。おじいちゃんも、子どものころに“けものみち”で行方不明になったことがあったのだ。
「いなくなった子どもと、ここにいる自分、それは本当に同じ子か?」
そう話すおじいちゃんに、風花は……。
「人はだれでも、知らない場所から来て、知らない場所へ行く」ということをテーマに、優しくあたたかな不思議を描いた物語です。小学校中学年から。
【ニッポン放送賞】
『がっこうのてんこちゃん はじめてばかりでどうしよう!の巻』ほそかわてんてん/作(福音館書店)
子どものこころによりそう、ゆかいでホッとするおはなし
きょうから学校がはじまります。はじめてのことが苦手な、テンのてんこちゃんはドキドキしながら学校へいきます。クラスは全員で10ぴき。てんこちゃんは、自己紹介で緊張しすぎてしまい……。他に、お弁当や遠足のお話など全5話。はじめての学校で、誰もが経験する不安を少しずつ乗り越えていく姿を描いた本書は子どもたちの心に寄り添うことでしょう。ユーモラスな絵と文が一体化して読みやすく自分で読むファーストブックに!
【翻訳作品賞】
『図書館がくれた宝物』ケイト・アルバス/作 櫛田理絵/訳(徳間書店)
2024年課題図書高学年の部にも選定。きょうだいの助け合いが印象的な、第二次世界大戦下の心あたたまる物語
1940年、ロンドン。
ドイツとの戦争が
始まったばかりの英国。
12歳のウィリアム、11歳のエドマンド、
9歳のアンナの三人きょうだいの
保護者がわりだった祖母がなくなった。
三人の両親は幼いころ亡くなっている。
遺産がのこされたが、未成年の三人は、後見人がいないと
遺産にも手をつけられない。
そこで、弁護士のエンガーソルさんが、
集団学童疎開に三人も参加することを
提案した。
空襲の恐れのある
ロンドンにいるよりは安全だし、
ひょっとしたら疎開先で、
後見人になってくれる人が
見つかるかもしれない…。
疎開先では辛いことも多い。
厳しい疎開生活のなか、
3人の救いとなったのは、
村の図書館だった。
ロンドンから疎開した
本の好きな3人きょうだいの
心あたたまる物語。
巻末に、物語中に登場する本のリストを収録。
『わたしは地下鉄です』キム・ヒョウン/文・絵 万木森玲/訳(岩崎書店)
【選考委員】
《文学》川端有子氏(日本女子大教授)、土居安子氏(大阪国際児童文学振興財団理事)
《絵本・美術》落合恵子氏(作家・クレヨンハウス代表)、さくまゆみこ氏(翻訳家)
《社会・科学》木下勇氏(大妻女子大教授)、張替惠子氏(東京子ども図書館理事長)
《ゲスト選考委員》協賛社タイヘイとフジテレビ、ニッポン放送、産経新聞の選考委員が最終選考に参加。
【主催】産経新聞社
【後援】フジテレビジョン、ニッポン放送
【協賛】JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR貨物、タイヘイ
産経児童出版文化賞とは……
「次の世代を担う子どもたちに良い本を」を趣旨に、1954(昭和29)年に制定。これまでに児童文学、絵本、翻訳本、図鑑など児童書約1200作品が受賞しています。戦後日本の児童文学、絵本文化の歴史を作ってきた表彰制度です。
いかがでしたか。
下記のテーマでは、2000年以降の大賞受賞作品を集めてご紹介しています。
歴代の大賞作品にはどんな作品が選ばれているのか、チェックしてみてくださいね。
秋山朋恵(絵本ナビ副編集長・児童書主担当)
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