【今週の今日の1冊】桜の美しさと物語を堪能しよう
3月23日~3月29日までの絵本「今日の1冊」をご紹介
暖かい日が続き、桜の開花から満開のお知らせまでぞくぞくと届いていますね。白っぽいピンクから、濃いピンクまでさまざまなピンク色を見せてくれる桜の花びらや、空いっぱいに枝を広げて立つ力強い木の姿は、何度見ても飽きず、気持ちを明るくさせてくれますよね。
絵本の中に描かれている桜も、それはそれは美しくてうっとりしてしまいます。桜の木にまつわる自然のドラマや、桜から連想された物語も読みごたえたっぷり。今週は絵本でも、桜を堪能してみませんか。全ページためしよみできる作品もありますので、ぜひページをめくってみて下さいね。
3月23日 桜の木をめぐるさまざまな「はじめまして」
月曜日は『はじめまして』
みどころ
はじめて会う友だち、はじめての場所。「はじめまして」という言葉を口にするときって、どんな気持ちになりますか。ワクワクしていたり、不安だったり、ちょっぴり緊張していたり……このあいさつをするときは、特別な瞬間ですよね。でも実は、毎日の生活そのものこそが、たくさんの特別な瞬間の積み重なりなのかもしれません。
春、桜の木に花が咲きます。「はじめまして」と、ミツバチがみつをもらいにやってきました。シジュウカラの子や虫たちも、つぎつぎにやってきて、あいさつをします。同じ木に咲いていても、花たちは、一輪一輪、みんな違う顔をしているので、「はじめまして」がとだえることはありません。
やがて花は散り、シジュウカラの子が巣立った桜の木には、緑の葉と小さな実が顔を出します。新しい季節がやってきました……。
満開のピンクの桜の花。輝く緑の新芽。赤や黄、茶色の落ち葉がうめつくす大地。枝に降り積もるたくさんの雪たち。美しい四季の風景とともに変化する桜と、木につどう虫や鳥たちが、「はじめまして」とお互いにあいさつしている姿がとても新鮮です。
「同じ桜の木」「同じ季節」と思っていても、実は生命には同じ瞬間なんてなくて、常に新しいものが生まれているんだ、と気づいたとき、シンプルながら、とても深い真実に触れた気持ちになりました。どしっと大地に根を張って、常に変化しながら、新鮮な気持ちで「はじめまして」とあいさつをする桜の木。こんなふうに毎日を生きられたら、すてきだなと思いました。おおらかで、きらきらした生命力にあふれた1冊です。
3月24日 春らしい♪ 嬉しいお手紙がいっぱい
火曜日は『はるかぜのホネホネさん』
出版社からの内容紹介
郵便屋さんのホネホネさん。今回は、入学式や花粉症、お茶会、春祭りなどの春らしい話題を運んでくれます。住民たちの暮らしぶりをなごやかに伝えてくれるホネホネさんシリーズの3作目です。
3月25日 まって まって 花びらとの追いかけっこ
水曜日は『ほわほわさくら』
みどころ
まるごと一冊どこを切っても春らしく、ふんわりあたたか桜色の絵本が届きました。
「ほわほわ ふわん」「ほろ ほろ ほろ ほろ ほろり」
空いっぱいに咲いている桜の木から、花びらが舞い落ちてきます。手のひらにいたかと思うと、風に吹かれてまた飛んでいき・・・。様々な視点から自由に描き出された満開の桜はとても美しく、その風景に囲まれた子どもの嬉しさが画面から直接伝わってくる様です。そして、その中を自由に漂っているのが、東直子さんの紡ぎ出す言葉。声に出して読むと更に軽やかで、まるで花びらそのものみたいですね。
桜が咲いているほんのわずかな期間の幸福感を、ぎゅっと凝縮してくれたようなこの絵本。それぞれの記憶の中の桜とあいまって、本を開けばいつでもその気持ちが蘇ってきてくれます。親子で一緒に味わってくださいね。
3月26日 桜の1年にはドラマがいっぱい!
読者の声より
今年の春も、桜の花が満開に咲きました。
幸せなことに、家の窓からはさくらの木が見えます。
ちょっと散歩すれば、川沿いには桜道があります。
なんて、幸せ者だろうって思います。
さくらは、遠くから見ても美しいし、近くで見ても美しい。
絵本のさくらも、なんと美しいことか!
詳細に描かれたさくらは、見ていて感動します。
特に、ひよどりやすずめがやってきて、
花のみつをすっているシーンが好きです。
鳥も可愛いです。
生きてるみたい。
桜は、花をつけているときが一番輝いています。
でも、桜の花びらが散ったあとも、
小さなドラマがいっぱいあります。
桜、ひよどりやすずめ、せみや小さな虫たち、
一年を通して、命の輝きがそこにはありました。
また、来年になったら、新しい花を咲かせるのでしょう。
今年と一緒のように見えても、まったく違う花です。
美しい絵に添えられたことば。
長谷川摂子さんの優しく語り掛けるような文章を読んでいると、
心地よかったです。
(多夢さん 50代・ママ 女の子13歳)
3月27日 桜が満開に咲きほこるページにうっとり
金曜日は『うさぎのくれたバレエシューズ』
出版社からの内容紹介
バレエをならいはじめて5ねんもたつのに、女の子はじょうずになりません。うまくなるように、月にも星にもおねがいしました。よい絵本/第36回課題図書。
読者の声より
まず、バレエが好きなのでこの本に飛び付きました。
うまく踊れないけど、音楽を聴くと踊りたくなる気持ちってわかります。
一生懸命お祈りする女の子、バレエが好きな気持ちが伝わってきますね。桜の絵も美しく、一面に桜の木が描かれたページはワアッと声をあげたくなります。
読み聞かせをしていますが、春に1度は読みたい本です。
私が好きなところは、魔法で、または靴のおかげでうまく踊れるようになるのではなく、ウサギたちと踊った感覚が残っていて踊れた!と言うところ。
特に子供は、何かのきっかけでグンとうまくなる時ってありますよね。
何事も好きなら、あきらめないで続けてほしいなと思います。
(マリンジョジョさん 50代・その他の方)
3月28日 菜の花にれんげ、桜、春が盛りだくさん!
土曜日は『ピッキーとポッキー』
出版社からの内容紹介
うさぎのピッキーとポッキーは、もぐらのふうちゃんといっしょにお花見に出かけました。お弁当はすみれのサンドイッチ、木の実のジュース……。とても愉快なおはなし絵本です。
読者の声より
2歳の息子が大好きな絵本。菜の花にレンゲにタンポポに桜と、春をいっぱい楽しめて、読めば必ず楽しい気分になります。特に大きな桜の木の下で、みなでお弁当を食べるシーンは、いつ見てもウキウキワクワクしてきます。
読んだあとは、巻頭の「はなのむらちず」に戻って、ピッキーとポッキーが通った道を一緒になってたどるのが、お決まりのコース。桜が咲いている今の時期に読むのがやはりオススメです。
(クッチーナママさん 30代 ママ 女の子7歳、女の子5歳、男の子2歳)
3月29日 静かにゆっくり読みたい温かな物語
日曜日は『さくらの谷』
出版社からの内容紹介
かつて、わたしが一度だけ行ったことのあるふしぎな谷のお話です。
まだ山が枯れ木におおわれる春の手前、林の中の尾根道を歩いていたわたしは、のぞきこんだ谷を見ておどろきました。そこだけが満開の桜にうめつくされていたのです。
聞こえてくる歌声にさそわれてくだっていくと、谷底で花見をしていたのは、色とりどりの鬼たちでした。鬼なのに、ちっともおそろしいという気がしません。まねかれるまま、わたしは花見にくわわります。目の前のごちそうは、子どもだったころ、運動会の日のお重箱に母がつめてくれたのとそっくりです。
「かくれんぼするもの、このツノとまれ」
ふいに、一ぴきの鬼がとなえると、鬼たちはたがいのツノにつかまって長い行列になりました。列の最後の鬼のツノにつかまったわたしは、かくれんぼの鬼をすることになります。わたしは、林の中をかけまわってさがすのですが、なかなか鬼たちをみつけることができません。
そのうちに、だんだんふしぎな気持ちになってきました。わたしがおいかけているのは、ほんとうに鬼なのでしょうか。だって、いま、あの木のうしろにかくれたのは、わたしのおばあちゃんのようでした。こっちの木のかげには、おかあさんが。そこの木のうらには、おとうさんがかくれました。それは、みんな、みんな、もうこの世をさってしまった人たちなのでした。
でも、そうか。みんな、ここにいたのか。桜の谷であそんでいたのか──。
そうわたしが思ったとき、風がふきわたり、谷じゅうの桜がいっせいに花びらをちらします。
気がつくと、わたしはひとりぽつんと雑木林の中に立っていました。満開の桜はきえていましたが、ヤマザクラの枝さきに、大きくふくらんだ花のつぼみが見えました。どこかで、あの鬼たちの歌声が聞こえるようでした。
いかがでしたか。
毎年、あっという間に過ぎていってしまう桜の季節。絵本をお供にしながら、たっぷり桜を味わってみて下さいね。
秋山朋恵(絵本ナビ)
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