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子どもの視点でストン!とわかる絵本 〜てらしま家の絵本棚から〜

絵本で大人もリラックス。自宅で簡単「絵本と眠りのワークショップ」

絵本研究家のてらしまちはるさんは、子ども時代に自宅の「絵本棚」でたくさんの絵本に出会いました。その数、なんと400冊! 「子どもが絵本を読む目線は、大人の思い込みとはちょっと違う」そうですよ。

 

 

ここ最近、つかれすぎて無気力なときがあります。

 

コロナ禍も半年をとうに過ぎて、知らずしらず、たまった疲労が出てきているんでしょうか。同じような症状の方、けっこう多いのでは?

 

こういうとき、私は残りの力をふりしぼって、本棚の前に行きます。そして、絵本を手に取ります。

 

選ぶ一冊はときどきで違いますが、だいたいにおいて、文字の少ない絵本が多いです。そして絵が、いまの気分にフィットするものを選んでいるような……。

 

なにもしたくないほどクタクタでも、画面にふわりと踊る色彩をぼーっと眺めれば、少しずつ緊張がほぐれていきます。

 

心なしか、そういう日の眠りは深い気がします。

「大人も絵本を開くとリラックスできる」というのは、実は、いろいろな研究で明らかにされ始めています。ある論文では、絵本を読みなれた人なら、声を出さずに読んでも癒されるとも。

 

つかれきった夜、数冊の絵本を用意して、自分のためだけに開いてみるのはいかがでしょうか。

大人のための「絵本と眠りのワークショップ」

今回は、自宅でカンタンにできる絵本ワークショップをお伝えします。題して「絵本と眠りのワークショップ」。

 

このアイデアは、私自身が日ごろ、絵本でリラックスしているのにヒントを得て考えました。睡眠時間をワークショップの一部にとりいれているのが、自分でいうのもなんですが、なかなか個性的です。

用意するものは、絵本2冊だけです。

 

子どもたちが寝静まって「さて、私もこれから寝るぞ」というときに、試してみてくださいね。

 

では、順序を説明します。

手順1:寝る前の絵本を選んで読む 〜 眠りにつく

ふとんに入って、照明を手元だけのものに切り替えたら、絵本を1冊、のんびりと開きましょう。

 

趣向別に、おすすめの5作品をピックアップしてみました。ここから、いまの気分にフィットするものを1つ選んで、読んでみてください。

 

声を出しても、出さなくても構いません。途中で寝てしまっても、気にしないで。

 

慣れてきたら、5冊に限らず、好きな絵本を選んでもらって大丈夫ですよ。

はりつめた神経をゆるっとほぐしてくれる絵本

『よるのおと』は、「音」に意識を集中させて読み進む作品です。昼間の緊張のなかでは、かすかな音の存在を忘れてしまいますが、寝る前には耳をすませてみてもいいかも。しずけさに、はりつめた神経がほぐれますよ。

よるのおと

男の子が池のほとりを歩いています。もうすぐおじいさんの家につくところです。もうすっかり日がくれて、空には月が輝いています。リリリ、リリリ。虫が鳴いています。遠くからは列車の汽笛。池に浮かぶハスの葉にはカエルがいます。シカの親子も水を飲みにきているようです。ほんの数十秒のあいだにおこる小さなドラマの数々。そこにひろがるゆたかな世界。ページをめくることが一つの体験だということが感じられる絵本です。

ナンセンスの破壊力で日常から解放してくれる絵本

いわゆる、ナンセンス絵本です。ほら、地平線のかなたから「モケモケ モケモケ」とやってきましたよ。……なにが? 「モケモケー モケモケー」と去っていきますよ。……なにが!? 常識から解放された世界へ、遊びにいきましょう。

おはなしのたからばこワイド愛蔵版(32) モケモケ

おもい かるい モケモケー おもい かるい モケモケー
頁をめくるたびに、遠い宇宙にいるような、それでいて不思議な懐かしさと幸福感に、心がざわざわします。
幼児の感覚世界に入り込んだ、荒井良二さん新境地の作。
赤ちゃんのある時期は、五感が未分化で、音に匂いを感じたり色を感じたりすることもあるようです。人が
どんな感覚を残してどんな感覚と別れてゆくかが、自分でもわからない理由で何かを好きになったり選んだりする、
いわばその人の本質を形成してゆく根っこにあるのかもしれません。
「——もろ、感覚を扱ってみようと考えたのが、この絵本。
いろんな感覚が、あっちからやってくるわけですよ。で、散々遊んだあげく、いる感覚だけ残して、
入らない感覚はさよならーって、もう二度と会えない感覚とさよならするって絵本なんです」

(荒井良二さんより)
「モケモケ」というのは、感覚を表す荒井さんの造語ですが、赤ちゃんがきらきらと輝いているのは、
サヨナラする前のモケモケたちに包まれているからなのかもしれません。
そんな人間の宇宙にとびこんだ、壮大なスケールの絵本が生まれました。
 

とにかく笑いたいときの絵本

ちょっとお下品なネタも大丈夫という方、こちらはいかがでしょう。多種多様なシチュエーションでのおならが、きっとあなたを笑わせてくれますよ。笑えば、頭のガス抜きになりますから。

おならうた

谷川俊太郎さんのわらべうたをもとに
飯野和好さんが描く数々の「おなら」!!

「いもくって ぶ」
「すかして へ」
「わらって ぴ」・・・

リズミカルなことばの楽しさはもちろんのこと、
想像力をかきたてるそれぞれの状況設定に大爆笑!!

知らない場所に身を置きたいときの絵本

絵本のいいところのひとつは、別世界に身をおけること。『かようびのよる』を開けば、あなたは現実から遠く離れた奇妙な光景を目の当たりにするでしょう。ふわりと飛んで、ふしぎのさなかに漂います。

かようびのよる

コールデコット賞 絵本にっぽん賞特別賞受賞 よい絵本選定 それは、ある火曜日の夜のこと。蓮の葉に乗ったたくさんのカエルたちが、池から町をめざして飛び始め…。夜明けまでの出来事をリアルな描写で描き、日米両国で高い評価を受けた傑作絵本。映画を見ているような場面展開が魅力的。

今日という日にスパイスがほしいときの絵本

毎日に少しのもの足りなさを感じていたら、ちょっと強めのスパイスとして『まばたき』をおすすめします。もしかしたら、スパイスが効きすぎて寝られなくなる人もいるかも? 心配なら、まずは昼間に試し読みを。でも、人によっては、大切ななにかに気づく夜になるかもしれません。

まばたき

ちょうちょが飛ぶとき、鳩時計が12時を告げるとき、猫が動き出すとき、角砂糖が紅茶に溶けるとき、そして少女に呼びかけるとき…。短いようで長い、長いようで短い、「瞬間」という感覚を描いた絵本です。

さて、あなたはどの絵本を選びたくなりましたか?

 

読み終わったら、電気を消して、目を閉じて。やってくる眠気に身をまかせ、ぐっすり体を休めましょう。

手順2:目覚めの一冊を眺める

おはようございます。よく眠れたでしょうか?

 

目覚めのひとときは、このワークショップの仕上げの時間。眠気がさめないまま、ふとんの上でこの絵本を開いて、声を出さずに眺めましょう。

すっきり目覚めるための絵本

眠りについていた景色が、目覚めるまでの物語です。深い色づかいから、まばゆい色づかいへ。ゆったりと、言葉少なに流れる画面にのせて、あなたの頭も徐々に覚醒することでしょう。

よあけ

静まり返った夜明け前の湖のほとり。と一瞬さざ波が立ち、すべてが動きだす。コールデコット賞受賞作家が、時の推移と音の世界を絵で再現した美しい絵本。

ワークショップは、これでおしまいです。『よあけ』を読み終わったころには、だいぶ目が覚めてきたことでしょうね。

 

もしも外が晴れていたら、窓を開けて、現実の朝の光を浴びてみてください。頭も体も、いつもよりすっきりとした朝を迎えられそうです。

今月は、大人の方に向けて、本当の睡眠をはさんだ絵本のワークショップを紹介しました。

 

いつにない生活を強いられるいま、私たちは意識して肩の力を抜く必要がありそうです。おりかさなるストレスへの対抗法は、意外と「がんばらない」ことなのかもしれませんよ。

てらしま ちはる

絵本研究家、フリーライター。絵本編集者を経験したのち、東京学芸大学大学院で戦後日本絵本史、絵本ワークショップを研究。学術論文に「日本における絵本関連ワークショップの先行研究調査」(アートミーツケア学会)がある。日本児童文芸家協会、絵本学会会員。絵本専門士。

写真:©渡邊晃子

参考文献:森慶子(2015)「『絵本の読み聞かせ』の効果の脳科学的分析−NIRSによる黙読時,音読時との比較・分析−」読書科学56(2),日本読書学会,pp.89-100.

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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