卒業をひかえた6年生に読んであげたい -『ともだち』
絵本ナビに日々寄せられてくるのは、ユーザーからのたくさんの生の声。実際に絵本を読んだ時の子どもたちの反応やエピソードからは、ストーリーを超えた魅力まで伝えてくれます。絵本ナビユーザーがおすすめする絵本をレビューとともにご紹介します!
ともだちってなんだろう……例えば子どもたちがそんな風に思っていたとしたら、この絵本には答えを導きだすためのヒントがたくさん描かれています。谷川俊太郎さんの詩と、和田誠さんのほのぼのとした絵が、子ども達の心にぐっと近づいてきます。
6年生に読んで、最後には拍手をしてくれました
卒業式を1カ月後にひかえた6年生への読み聞かせの第6回目は、「ちえちゃんの卒業式」と、谷川俊太郎・和田誠コンビの、この「ともだち」を選びました。
今回のテーマは「ともだち」。もうすぐ、6年間の小学校生活を終える6年生。6年間一緒に育ってきた「ともだち」のことを、もう一度見つめなおして欲しくて、この絵本を選びました。
レビューで皆さんがおっしゃっていますが、谷川さんの簡潔な言葉が、すばらしいです。
まっすぐ直球で心に届きます。
「ともだちって みんながいっちゃったあとでもまっていてくれるひと」のページに、私はうんうんと頷いてしまいました。靴を履くのに時間がかかって、あせって靴紐を結び終えて、顔を上げたら、友達が、そこで待っていてくれたときの嬉しい気持ち!そういうときの友達が、やっぱり一番の友達です。
こういう何気ないことを、細かに拾い上げて、説得力を持たせかつ、最後の方の「あったことがなくても」のような広い視野に立った言葉を投げかけてくる谷川さんの言葉。和田誠さんのシンプルな絵がベストマッチです。
子どもたちは、「ひとりでは」の章の卓球のところで、「なるほど~」と納得していました。確かに一人では、卓球は面白くないよねぇ(笑)。
後ろの方のページの「ともだちって すばらしい」の写真は、よく見ると義手の女の子と、健常の女の子がひとつのボールに泡だて器を入れて、何かを一緒に作っているところです。二人ともニコニコ笑顔で、とても仲が良さそうです。少し写真がわかりにくいので、遠くの席の子どもにもわかるように義手の子の手を指差しました。そしてもう一度「ともだちって すばらしい」。
最後の詩を読み終えると、子どもたちは、また拍手をしてくれました。
友達と顔を見合わせながら、拍手をしている子もいます。
「ともだち」……いつまでも 大事にしてほしいです。
(あんぴかさん 40代・ママ 女の子15歳、女の子8歳)
『ともだち』って、こんな絵本
「ともだちって」
かぜがうつっても へいきだっていってくれるひと
いっしょに かえりたくなるひと
「ともだちなら」
いやがることを するのは よそう
「ひとりでは」
もてない おもいものも ふたりでなら もてる
つまらないことも ふたりでやれば おもしろい
ともだちってなんだろう・・・例えば子どもたちがそんな風に思っていたとしたら、こんなにも具体的にわかりやすく教えてくれる答えはないですよね。
谷川俊太郎さんの詩に、和田誠さんのほのぼのとした絵が子ども達の心にぐっと近づいてきます。
そこで、詩の内容は広がっていきます。
「どんなきもちかな」「けんか」「ともだちはともだち」
それぞれのテーマに続く詩はひとつひとつ、どれも相手の気持ちを想像することにつながります。ともだちはどんな気持ちになるんだろう、ともだちにこういう事をするのは良くないな、お父さんお母さんだってともだちみたいな時があるな。
こんな風に考えられるようになったら、想像する力は大きくなっていきます。
会った事のない子だってともだちになれるかもしれない。
その子たちが困っていたら、なにをしてあげられるんだろう。
難しいことはありません。だれだってひとりで生きていくことはできない、みんなともだちが必要なんだ、そういう大切なことは小さな子どもたちにだってきっと伝わるはずです。
「ともだちって すばらしい」
子どもから大人まで、年齢に関係なく読み続けていきたい一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |