小学5年生、6年生のお子さん必見!課題図書、選び方と感想文を書くヒント
夏休みの宿題の定番といえば、読書感想文。課題図書のラインナップを見るといろいろな本が選ばれていて楽しそう。でもいざ書くとなると、どの本でどう書くか悩みの種になっている子も多いのでは?
感想文を書く時に一番重要なのは、ずばり本選び。ポイントは、最後まで読み通せる好きな本を選ぶこと! 表紙を見て直観で決めても、あらすじや本の体裁を見てじっくり選んでも選び方はどちらでも自由ですが、とにかく自分が面白そう、これなら感想文が書けるかも、と思える1冊を選んで下さいね。
これから紹介する高学年の部に選ばれた4冊は、どれも素晴らしい作品ばかり!
それぞれに読み応えがあり、感動があり、大人の私でもあらたに学ぶものがあり、今年の課題図書のラインナップの中でもオススメしたい作品が高学年の部に揃った、という印象です。感想文を書くための本は1冊ですが、夏休みの読書に2、3冊、いや思いきって4冊全部! 読んでみるのはいかがでしょうか?大人の方でもぐっとくる作品が揃っているので、親子で読んだ後に感想を交換してみるのもいいですね。
今回は、その珠玉の4冊の魅力をたっぷりお伝えし、後半では、読書感想文の書き方の基本をお伝えします。
2017年、高学年の課題図書4タイトルの中から、どれを選ぶ?
『チキン!』
どんな子におすすめ?
- ファンタジーや外国のお話よりも、自分の身近なお話の方が読みやすく好きだという子に。
- 言いたい事がうまく言えなかったり、逆に言いすぎてトラブルになってしまった事があったり……周りとのコミュニケーションに困ったことがある子に。
- 意見の伝え方やコミュニケーションの取り方について興味がある子に。
- 自分の性格とクラスメートの性格の違いなどについてよく考えることがあったり、あらためて考えてみたい子に。
どんな本?
168ページで、比較的短めで読みやすいお話です。
『かあちゃん取扱説明書』『糸子の体重計』で話題となり、今最も注目される児童文学作家の一人、いとうみくさんによるお話です。
六年生の主人公、ぼく(拓)のコンプレックスや、クラスメートとの関係などが等身大で語られ、同じ年頃の子どもたちの共感を大いに呼びそうです。
どんなテーマが込められてるの?
読みやすく親しみやすいストーリーの中に主人公の少年の成長がしっかりと描かれています。
登場人物の描写が優れていて、それによる感情表現が秀逸である点が評価されている作品です。
子どもたち同志のコミュニケーションにおける悩み(空気を読む、読まない)が提起されています。
『チキン!』の感想文を書く時のヒント
- 言いたいことが言えず、あらゆる面倒なトラブルを避けてゆるゆると生きている拓と、言いたいことを何でも言ってトラブルを巻き起こす転校生の真中さん。自分はどっちのタイプかな。
- 主人公の拓は、どうして面倒なことからできるだけ遠ざかりたいのだろう?同じような気持ちになることはある?
- 空気を読めないんじゃなくて、あえて空気を読まず、言いたいことを何でも言ってしまう真中さんをどう思う?
- いつも強そうで迷いがなさそうに見える真中さんが、実は抱えていた悩み……、それについてどう思った?
- 真中さんが転校してきてから、拓はどう変化していったかに注目して読んでみよう。なぜ変われたのかな?
- なにか面白い情報はないかいつも目を光らせている本馬くんや、クラスのボス的存在でケンカが強い嵐くん、女子のリーダー各の仙道さんや側近の西園さんと久田さんなど、クラスメートそれぞれの性格や行動、クラスで起こった事件などにも注目して感じたことを書いてみよう。
心に残るフレーズ(一部を紹介)
「…でも人間ってまちがいながら生きていくもんなんだよね。まちがっているってわかっていても、それを認めることができないときだってあるし」(85ページ)
「うん。あのさ、みんなが楽しくいられるのって、そんなに難しいことなのかな?」(153ページ)
『ぼくたちのリアル』
そいつの名前は秋山璃在(リアル)。
スポーツ万能。性格良好。顔がかっこよくて、気もきくから女の子にももてる。勉強も絵も書き初めも、カラオケだって、何をやらせても誰よりもできてしまう学年イチの人気者。幼なじみの渡(わたる)は、平凡な自分と比べて、そんな璃在(リアル)に昔からコンプレックスを感じていた。
しかし、小学5年生の新学期、美しい転校生の来訪によって、運命の日がやってきたのだった。
人気子役との恋がこじれた合唱祭、リアルの家族の悲しい過去、サジへのいじめ……。それぞれ助けあいながら、三人は次第に友情を深めていく。
出席番号一番、秋山璃在。二番、飛鳥井渡。三番、川上サジ。三人ですごした五年生の春と夏の思い出。ぼくたちは、少しずつちがう。だから支え合える。三人の少年の忘れられない夏の友情物語。
どんな子におすすめ?
- 外国のお話やファンタジーではなく、自分の身近に感じられるお話が好きな子に。
- 友達関係、友情のお話が読みたい子に。
- 意外な展開があったり、登場人物に秘密があったり、ほのぼのとしたお話よりもドキドキしたり考えさせられるお話が読みたい子に。
どんな本?
222ページとボリュームがありますが、主人公の飛鳥井の語りで物語が進むのでとても読みやすい1冊です。
2016年6月の発売後、【講談社児童文学新人賞(第56回)】【児童文芸新人賞(第46回)】【産経児童出版文化賞フジテレビ賞(第64回)】と次々に賞を取り、今年かなり注目が集まっている作品です。
男の子同士の友情の描かれ方に、これまでにない斬新さを感じます。
どんなテーマが込められてるの?
人を表面だけでとらえるのではなく、その奥に悩みや苦しみがあることを思いやり理解すること、自分の弱い面や辛いことを友達に打ち明けることにより友情が深まり互いに成長できるというテーマが込められています。
『ぼくたちのリアル』の感想文を書く時のヒント
- なんでもできる万能の友人がいつも身近にいるってどんな気持ちだろう?主人公の飛鳥井(アスカ)と同じような体験や気持ちになったことはある?
- アスカ、リアル、サジの3人の友情についてどんな風に感じるか書いてみよう。
- 3人の友情に合わせて、アスカとリアルの関係、リアルとサジの関係、サジとアスカの関係についても考えてみよう。
- アスカのいいところ、リアルのいいところ、サジのいいところってどんなところだろう?それぞれの行動や言葉に注目しながら、自分なりに考えてみよう。
- 物語の後半で次第に明かされるリアルが抱えている秘密とサジの秘密……、その真実を知った後にもう1度本を読み返すと、あちこちにそうだったのか、とあらためて発見する部分(話の伏線)があります。2回読んでみるのもおすすめです!(より感想文を深めたい時に)
心に残るフレーズ(一部を抜粋)
「いいたいことをいえばすっきりするから我慢するななんて、おとなはたまにそんなことをいうけど、そういうのってちょっと無責任だ。すっきりするだけじゃすまないってことを、ぼくたちはけっこうちゃんと知っている」(147ページ)
「いろんな気持ちに気がつくのって、すごくむずかしいことだよね。自分の気持ちにさえ、気がつけないことってあるからさ。だから他人の気持ちはなおさらだ。」(156ページ)
『霧のなかの白い犬』
どんな子におすすめ?
- 日本のお話よりも外国のお話の方をよく読んでいる子に。外国のお話が好きな子に。
- 犬を飼いたいと思っている子に。犬が好きな子に。
- 外国の歴史に興味がある子に。
- 戦争や差別など深く考えるテーマでの感想文に挑戦したい子に。
どんな本?
223ページの読み応えのあるお話です。
長めのお話ではありますが、ジェシーの祖母が抱えている過去の苦しみにまつわる大きな謎が、読み手をお話の最後まで引っ張っていってくれます。
祖母の様子がおかしくなったこと、父親が外国人労働者によって職を失い遠くに出稼ぎに行くようになったこと、ある出来事がきっかけでいとこのフランが荒れ始めたこと、身の回りで起こっている差別、過去に起きた差別が引き起こした悲劇など、さまざまなテーマが出てくるので、感想が湧き出る切り口がたくさんあります。それぞれに深く考えさせられる問題が秘められているので、濃い感想文が書けるでしょう。
後半は、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害と強制収容所の歴史的事実が、授業で伝えられたり、クラスメートの祖母によって語られます。次第に重く苦しい内容になっていきますが、主人公である中学生の少女ジェシーの目線で語られていくので、読み手はジェシーの感情に共感しながら一緒に学んでいけるのが安心感になるのではと思います。
しかし、全体の重いテーマの中にも、シェパード犬のスノーウィの愛らしさや、ジェシーとクラスメートのベンとのほのかな恋愛など、ホッとしたり、ウキウキするような場面もあり、このあたりは高学年の女の子へのオススメポイントになりそうです。
どんなテーマが込められてるの?
戦争は過去のものでなく現在の問題であると同時に、戦争は何に起因するのか、再び戦争を起こさないためにどうすればよいかを考えさせられます。
家族の愛情、友情、認知症などあらゆる問題が描かれています。
『霧のなかの白い犬』の感想文を書く時のヒント
- 友達やクラスメートの境遇や性格についてどんなことを思いましたか?(車椅子の親友ケイトの性格や行動について、アフガニスタンから亡命してきたヤスミンについてなど)
- ある出来事がきっかけで変わってしまったいとこのフランの行動についてどう感じましたか?
- ジェシーのおばあちゃんを苦しめている過去の出来事についてどう思いましたか?
- 物語の最初と最後にはさまれているジェシーによる「現代のおとぎ話」についてどんな感想を持ちましたか?
- ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の歴史や強制収容所で起こったことについてこれまで知っていましたか?あらたに知ったことはどんなことでしたか?実際に起こった出来事としてどう受け止めましたか?(感想文を深めたい時は、この問いに挑戦してみましょう)
- 物語を読み終えて、再び戦争を起こさないようにするにはどうしたら良いか、自分なりの考えをまとめてみましょう(感想文を深めたい時は、この問いに挑戦してみましょう)
心に残るフレーズ(一部を紹介)
「ですから、みなさんに心からお願いしたいことがあります。どんな小さな偏見や人種差別も見逃さないでください。同じ性別の人を好きになる人がいてもいい、自分と異なる宗教を信じる人がいてもいいし、宗教なんてまったく信じない人がいてもいい。単に経済的に裕福だからと言って、その人が価値ある人だと思ってはなりません。……」(164ページ)
『転んでも、大丈夫:ぼくが義足を作る理由』
どんな子におすすめ?
- スポーツが好きな子に。
- オリンピック観戦が好きな子に。
- 将来、誰かの役に立つ仕事がしてみたいと考えている子に。
- 実際に起こっている事象を描いたノンフィクション作品に興味関心が強い子に。
どんな本?
ページは190ページとボリュームがありますが、字が大きく、口絵やコラム、写真、図などが盛り込まれているので、それほど文量を感じずに読めてしまう1冊です。
義肢装具士という仕事について理解が深まると同時に、義肢装具士の臼井さんの言葉や行動に心を打たれる箇所がたくさんあります。そこにはどんな仕事にも共通する、仕事をする上での大切な心構え、人とのコミュニケーションの取り方の極意がちりばめられています。
義足の歴史、作り方、種類、義肢装具士になる方法などあらゆる義足についての知識が学べます。
病気や事故で足を失った方たちの気持ちを感じ取ることができるのと同時に、たとえ自分の足を失っても義足で厳しいレースに挑戦するアスリートたちの努力と熱意に感動します。
パラリンピックですごい記録を作っている外国の選手や日本の選手の話が興味深く、より深くパラリンピックを知れ、次回の開催が待ち遠しくなります。
どんなテーマが込められてるの?
2020年の東京パラリンピックを控え、障害者スポーツやパラリンピックに対する関心が高まります。
義足づくり、義足を使う人に対する著者の思い入れが伝わり、障害者への思いが深まる内容です。
『転んでも、大丈夫:ぼくが義足を作る理由』の感想文を書く時のヒント
- 義足についてこれまで耳にしたり、実際に見たことはありましたか?
- 義肢装具士という職業を知っていましたか?
- この本を読んで、初めて知ったことはどんなことですか?初めて知ったことについてどんな風に感じましたか?
- 本の中には、義肢装具士の臼井さんの素敵な言葉がたくさん出てきます。とくに心に残ったのはどんな言葉でしたか?どうしてその言葉が心に残ったのかを書いてみましょう。
- 本の中には、大事な足をうしなってもくじけず、たくましく生きている人たちが何人も登場します。ただでさえ厳しいアスリートの道に挑戦し続けている人たちの姿に、どんなことを感じますか?
- 義肢装具士の仕事はただ単に患者さんに義足を作るだけでなく、他にもとても大切な役割を果たしていることが伝わってきます。義肢装具士は足を失って苦しんでいる人たちにとってどんな存在なのかについて考えてみましょう(感想文を深めたい時は、この問いに挑戦してみましょう)
心に残るフレーズ(一部を紹介)
「どんなにむずかしい注文がきても、ぼくは「無理です」とか「できません」とは、けっして言いません。聞いた瞬間から、どうすればその人の願いをかなえられるのかを、必死に考えはじめるのです。」(40、41ページ)
「なにごとも、人にやらされるのではなく、自分からやれば、たとえ失敗したとしても、結果をちゃんと受けとめ、別のやりかたで前に進むことができるからです。」(137ページ)
読書感想文を書くときの基本構造
さて、感想文を書く本が決まったら、次は書き方です。
読書感想文の書き方の本を参考に、感想文の組み立て方の例を3つほどご紹介します。
※高学年の部の文字数は、本文1200字以内です。
感想文の書き方例 その1
参考図書:『読書感想文がスラスラ書ける本 小学5・6年生』(上條晴夫/企画・監修、永岡書店)より
感想文を書き始める前に、組み立てメモを作って、感想文全体のイメージをとらえましょう。
組み立てメモがあれば、書く内容や順番に迷わずに感想文が書けます。
感想文の組み立てメモ
はじめ
本を読んだきっかけや、本のあらすじを書くまとまり
☆次の七つのパターンから、使ってみたいパターンを選んでみよう
- 題名・表紙が気に入った
- 内ようが興味のあるものだった
- だれかにしょうかいしてもらった
- じぶんとの共通点があった
- 本のあらすじ
- 読み終わった直後の感想
- 作者・シリーズ本などのしょうかい
なか
印象に残った場面の説明と、その場面での自分の感想を書くまとまり
☆本を読みながら「なか」に書く感想のもとを見つけるには、「ふせん」を使うとよい。心が動いたところにふせんをはって、書きたいことを考えてみよう。
「なか」の書き方のコツ
- 説明の部分と、自分の感想や考えの部分をはっきり分けて書く
- 「なか」の段落をかえるときに、段落と段落をつなぐ言葉を使う
- 気持ちの表現を工夫する
おわり
本を読んで強く思ったことや、考えたことを書くまとまり
☆次の四つのパターンから、終わり方を選んでみよう
- 本を読んで強く感じたこと
- 登場人物と自分をくらべたこと
- 作者が伝えたかったこと
- これからの自分の目標や希望
感想文の書き方例 その2
参考図書:『お父さんが教える読書感想文の書きかた』(赤木かん子/著、自由国民社)より
- 原稿用紙を赤いペンで3行ずつ、四角く囲んで、高学年の場合は、20ブロックに分ける。
- 最初のブロックに、感想文の題名と名前を書く。
- 2~4番目のブロックには動機(本を選んだ理由)を書く。
- 5番目のブロックには場面設定(あらすじ)を書く
- 6番目のブロックには、5番目に書いたことへの感想を書く。
- 5と6の「あらすじを書いてそれについての感想を書く」を何回か繰り返す。
- 本の話と自分の体験を比べて書く
- 結論を書く。
感想文の書き方例 その3
参考図書:『読書感想文がラクラク書けちゃう本』(宮川俊彦/著、小学館)より
とっちゃまん(著者の宮川俊彦さんの愛称)式組み立て理論
- 本との出会いを書く。具体的なエピソードを入れる。
- ざっと読んだ感想をひとことで印象的に書く。
- 本のテーマについて書く。
- そのテーマだと思った理由を書く。
- 大づかみしたストーリーや大切だと思うことを文中から引き出して書く。
- ストーリーや大切だと思うことについての、きみの意見を書く。
- 「もしも」の文を書く。
- 「もしも」の文の理由、きみの意見のモトを書く。
- 「だから」の文で、意見をまとめる。
- 感じたことをつけ加えて書く。
- 最後のまとめを書く。
いかがでしたか?
課題図書のラインナップの中から自分に合った本は見つけられたでしょうか。また読書感想文をどう組み立てたら良いか、少しでも参考になりましたか?
今年の夏は、感想文をつらいものと思わずに読書自体をたっぷり楽しめますように。
秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)
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