「へろへろ」の継承者にはなれる?なれない?
昔からそう。
可愛い服を着てきたのに靴下の穴があいている。それなのに、今日は上履きを忘れている。教室の真ん中で思いっきりすべって転び、注目の的になる。
立てかけてあった高飛びのマットが倒れてきて、ひとりだけ下敷きになる。やっと這い出た先には気になる男の子が立っている。笑ってごまかしていると、たまたま通りかかった校長先生に注意をされる。
全体集会で校長先生のお話を聞いているうちに寝てしまう。はじっこの席だったから椅子から転がり落ちてしまう。あろうことか、椅子がそのままものすごい音を立てて壊れ時間を止める。
夢を見てもそう。
忘れ物をしたからと家に電話をかけようとすると、自分の家の電話番号がどうしても思い出せない。思い出してもダイヤルが全部紙になってかけられない。やっとかかっても、滑舌が悪すぎて何を言っているのか伝わらない…。
大人になったって変わらない。
約束の時間まで余裕のタイミングで家を出ているのに、忘れものをとりに帰り、バスに乗り遅れ、あげくに電車を乗り間違える。
私の人生、割とへろへろです。大したことのない小さなことだって、2つ3つ重なってくると、結構なダメージ。そんな風に長年生きてきて培った教訓は「受け入れる」こと。笑い飛ばせるようになってくれば、こっちのものです。
…でも、さすがの私も「へろへろおじさん」の不運にはかなわない。それは頭も抱えてしまうはずなのです。
へろへろおじさん
登場するのは、素敵なひげに、オシャレなスーツ、帽子もかぶって、なんだか立派なおじさんです。ところが…
このおじさん、とことんツイてない。
遠くの町に住んでいるお友だちに書いた手紙をポストに入れるために、部屋を出ます。すると、階段からだだだんっ。外にでれば上からおふとんがどさっ。よそ見していれば、なぜか犬の綱を足につながれ、お気に入りの帽子は自動車にひかれてぺっしゃんこ…おじさんは、もうすっかりへろへろ、ヨレヨレです。でも、まだまだおじさんの一日は終わらない!?
「こんなことってある?」
でも。でも…なんだか可笑しくなってきちゃうのです。あまりにも不運に不運をかさねていくおじさん。その見事なドタバタとヘロヘロは、まるで喜劇。子どもたちの笑いを誘うのです。
それでね。最後の最後にまたおじさんの不運はやってくるんだけど…最高に素敵な瞬間が待っているんですよ!
読んだあとは、まるで映画を一本見終わったあとみたいな気持ち。
ありがとう、へろへろおじさん。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
ここまでいくと「プロ」ですね。不運の内容は一流、積み重ね方も絶妙すぎて、もはや素人には真似できない域までいっている。だから笑いも起こるし、哀愁を漂わせ、感動で涙すら誘ってしまう。すごいよねえ、へろへろおじさん。私はまだまだ、見習わなくては。
あ。へろへろおばさんは何だか笑えないから、やっぱりやめて、普通に気をつけて生きることにしよう。
どうも気になる「おじさん絵本」
磯崎園子(絵本ナビ編集長)
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