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絵本ナビ編集長の気になる1冊

かばんの大きい人、小さい人、中くらいの人。

 

息子が出かける時のかばんは、とても小さい。
かれこれ7〜8年位ずっと使っている20×15㎝程しかないそのかばんに、ゲーム、ソフト、財布、漫画、下手したらペットボトルまで。何でも入れて持っていく。彼曰く、「これが、ちょうどいい」のだそう。

 

一方。私の友人の持っているかばんは、いつもとても大きい。
ずっしりと中身の詰まったそのかばんは、面積の広さだけでなく、見るからに重そうで…。それでも足りない時は、2つ目、3つ目のかばんを同時に持っていたりする。

 

そのちょうど間くらいの、つまり普通の大きさのかばんを持っている私から見ると、息子のかばんの小ささが心配でたまらないし、友人のかばんの大きさを見て、もっと減らせるだろうと思う。だけど、ふたりとも言うのです。

 

「これが、ちょうどいい」

 

本当にそうなの? 
なんか、荷物がはみだしているように見えるよ。
同じ物が2つ3つ入っているんじゃないの?
それとも、ふたりとも見た目はちがうけど、入る容量は同じだったりして!?
…なんていらぬ想像までさせられる。かばんって奥がふかい。

 

でも、おかあさんたちが持っているかばんは本当に何でも出てくる「魔法のかばん」。いったい中に何がはいっているの?
 

かあさんのまほうのかばん

かあさんのまほうのかばん

ぼくの妹は「まこ」。あかちゃんのまこは、ぼくが遊んであげると「おーおー」って足をバタバタさせる。
かあさんは、まこのことを「じょうず、じょうず」とすぐ褒める。
ぼくはもっといろんなことができるのに。
みんなでレストランに行くとき、かあさんはお出かけ用のいつもの「まほうのかばん」をもっていく。
「まほうのかばん」って何だろう?

かあさんのかばんからは、「ちちんぷいぷ~い」ってガーゼ、よだれかけ、おむつ、着替え、タオル、おもちゃ……。
なんでも出てくる。でも、まこのものばっかり。
「なーんや、ぼくのもん はいってないんや。あれは、まこの まほうのかばんなんや。」
ちょっぴり落ち込むぼく……。
けれど、家に帰って、ばあちゃんのかばんを見せてもらったぼくは、意外なことに気づきます――。

「かばんの中をのぞく」のは、その人の大切にしているものや、ヒミツをのぞかせてもらうことに似ているかもしれません。
かあさんのかばんの中にぼくはいないのか、と落胆した男の子。
ぼくは愛されているんだろうかと自信を失いかけたおにいちゃんが、ばあちゃんとかあさんのかばんの中身を知ることで、みるみる自信を取り戻していきます。
「まほうのかばん」にはじつはちゃんと「ぼくのだいじなもん」も「すきなもん」も入っていて、「ぼくも大事にされていた!」と気づくのです。

かばんの中身がこまごまと見開きいっぱいに描かれたページは、楽しさ満点!
ばんそうこう、ルーペ、あめだま。合羽、お絵かき帳、折り紙のメダル。石ころ、図鑑。
ばあちゃんのかばん、かあさんのかばん、そしてぼくのかばん。
それぞれ「その人らしいもの」がいっぱい登場します。
そして「家族の他の誰かのためのもの」も……。

小さい子どもがいるおかあさんのかばんは、いつだって大荷物ですよね。
それは、子どもが楽しく快適に過ごせるようにとあれこれいっぱい入れるから。
「まほうのかばん」はおかあさんの愛情のしるしなんですね!

読み終えてあたたか~い気持ちになる絵本。子どもに、愛されている自信を与えてくれる絵本です。

 

(大和田佳世  絵本ナビライター)

つい先日、雨が降って寒くなり、帰る間に風邪を引きそうだとぼやいたら、カーディガンを着ていたその友人が、なんと、かばんの中からもう1枚カーディガンを取り出して言うのです。「これを着ていけば?」

 

…必要な物がすぐ出てくるかばん、確かにそれはちょうどいい。納得です。

 

息子のかばん、私のかばん、友人のかばん。

パパのかばん、ばあばのかばん、じいじのかばん。

社長のかばん、営業の人のかばん、若手社員のかばん。

それぞれの人の「ちょうどいいかばん」。しばらくは興味が尽きなさそうです。

磯崎園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部

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