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絵本ナビ編集長の気になる1冊

偉大なる創造主。

 

「カイジュウメだぞ~」

 

目を見開いて、大きなかぎ爪を持っているかのようなポーズをし、足を踏み鳴らしながら襲ってくるのは、幼馴染の小さな弟。

 

「カイジュウメだぞ~」

 

恐ろしく強い「カイジュウメ」は、何でもぶち壊し、逃げなければつかまり、言う事を聞かなければ何が起きるかわからない。物が飛んでくることだってある。爪がかなり痛い。その代わり、どうやら暗闇には弱いらしく、暗い小部屋にみんなで逃げ込めば襲ってはこない。ドアを隔てた遠くの方から「カイジュウメだぞ~」と勇ましい声が聞こえてくるのみなのである。


そして、暗闇の中でヒソヒソと“カイジュウメ”について話し合う。
「カイジュウメってなんだ?」
「やっぱり“怪獣目”なんじゃない? 指で目を見開いていたし」
「いや考えたんだけどね。あれはきっと、テレビでウルトラマンとかが怪獣に向かって『この、怪獣め~』と言っているのをそのまま覚えたんじゃないかと」

 

確かに、さすが年長者。それはかなり有力な説だと思いながらも、やっぱり“目”なんじゃないかと思ったりする。そんなこんな考え事をしていると…

 

「バン!」「きゃーー」

 

カイジュウメが思い切って暗闇の中に入ってきて、小部屋のドアを開けてきたので、一斉にバラバラになって逃げ出すのだけれど、なんだかみんな顔が嬉しそう。だって、楽しいんだもん。カイジュウメに襲われるの。


これは、私の幼い頃の断片的な記憶。とにかく「カイジュウメ」とはなんだったのか。それはわからずじまいだったのだけれど、その後も幼馴染で集まれば、必ず出現し、結果的に彼の世界の中で年上のお兄ちゃんお姉ちゃんたちがよく遊んでいたのだけはよく覚えている。つまり、私たちにとって、彼は偉大なる創造主だったのです。

大名行列

大名行列

「したにー、したにっ」「したにー、したにっ」
聞こえてきたこのかけ声、歴史や時代劇が好きな子ならピンとくるかな。
そう、お殿様を乗せた大名行列がやってきたようです。

いかめしい顔して腰には刀のお侍さん。籠に武器、大きな馬を引いて通り過ぎていくので、見ている私たちはもちろん頭を下げて通り過ぎるのを待ち……ん?

「なんか、この馬大きすぎない?」

思う間もなく、上から殿様が落馬してきて、ポチが馬の後ろ脚にかみつき、大名行列が大荒れになる、かと思えば今度はお団子屋に寄り道!?

「…なんか、へん!」

行列は忍者屋敷を通り、取組中のお相撲さんのいる土俵を通り、妖怪が出てきたと思えば、マンモスが…!? 一気に時代もスケールもごちゃまぜに。 一体ここはどこ? どこの世界にいるの? 大名行列を解説してくれる絵本じゃなかったの??

ちょっと油断して読み始めていた読者を、あっという間に混乱に陥れていくこの展開。それは、このスーパーリアリズムに描かれた絵のせいでもあります。説得力が違うのです。真面目なフリして、大ふざけに展開されていき、まんまとしてやられながら、私たちはこの先どこに連れていかれるのかドキドキ、ワクワクしてしまうのです。

最後にはなるほど納得のオチも待っていて…これは面白い絵本!ひとりでじっくり、親子で一緒に、大勢みんなで、それぞれの楽しみ方をしながら、さらに勝手に空想を広げていってくださいね。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/117861/%E5%A4%A7%E5%90%8D%E8%A1%8C%E5%88%97/

一見わけがわからなくても、よーく観察していると秩序がある。それが子どもたちの生み出す不思議な世界。もし出会えるなら、積極的にその世界に飛び込んでいかないと絶対にもったいないのです。どの世界も期間限定、あっという間に入口がわからなくなってしまいますからね。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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