【編集長の気になる1冊】記憶の中で鳴っているのは…?『どしゃぶり』
「バラバラバラ…ババババババ!!」
目を覚ますと、前が何も見えないくらい強く打ち付ける雨。
ここはどこだろう。そうだ車の中。
大きな音はフロントガラスに当たる雨の音。
数秒経つと、急に不安になってくる。
…母親はどこ?
次の瞬間、雨にも負けない大声で泣き出す私。すると、遠くの方から微かに聞こえてくるのは、駆けてくる靴の音。
「ごめん、ごめん! びっくりしちゃった?」
傘を閉じながら、母親が運転席に戻ってくる。何という事はない、私が寝ている間にちょっと車を停めて他の人とおしゃべりをしていて、その間に私が目を覚ましてしまった、というだけの話なのです。
だけど、これがおそらく私の中の一番古い雨の記憶。幼稚園に入ったか、入っていないかの頃。後ろの席で目を覚ました瞬間、目に飛び込んできたのは外が見えない程打ち付ける雨。その光景が今でも鮮烈に残っているのです。車に一人残されたショックや、外の景色が何も見えない不安。そういう感情を思い出しながら、必ず同時に記憶の中で大きく鳴るのは「ババババババ」という雨の音。
…ああ、これは雨の記憶であり、音の記憶でもあったんだな。
ふと、そんなことを思ったのは、この絵本を読んだから。
どしゃぶり
暑い暑い夏の午後。ぼつっ、ぼつっ、ぼつっ。
突然アスファルトを濡らすのは…
「あめだ!」
大きな水玉がはじけ、傘の上に太鼓の様な音を鳴らしながら、
「ずだだだだだだだ ぼぼぼぼぼぼぼ ぼぼぼぼぼ」
すごい勢いで降ってくる。
「ずざあ ずざあ」「じゃばばば ざばああああ」「ぽとととと ぴしゃっ」
これは、雨の声? 雨のうた? ぼくのところに降ってくる。
ぼくだって、こうしてはいられない。
雨の中を走り出し、はだしで水しぶきを飛ばし、思いっきり顔にあびて。
遊ぼう、遊ぼう、もっと遊ぼう!
おーなり由子さんとはたこうしろうさんのコンビで描き出す、夏の午後のある一瞬。
カラカラに乾いた地面の上が、あっという間に瑞々しい風景に一変。
雨も男の子も、言葉も、構図もなんて大胆なのでしょう!
その思い切りの良さに、あっという間に引き込まれ、思わずつぶやいてしまうのです。
「真似したい…」
どしゃぶりの雨を存分に楽しむ様子の気持ちよさそうなこと。生き生きと描かれる雨のしずくの美しいこと。びちょびちょになるのって、こんなに楽しかったっけ? 読んだ後、文字通り「雨が待遠しくなる」絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
しとしと降る雨、ざあざあ降る雨。濡れないように気をつけたり、水たまりに飛び込んだり。雨の日の記憶って、本当にさまざま。
ぼくのところに降ってくる雨。それは、美しくて、気持ちよくて、遠慮がない。気持ちが昂る夏の雨。そういえば、そんな記憶もあった気がする。絵本みたいに突然やってくる夏の午後の夕立ち。そして思い返してみれば、そこには必ず全てをかき消すくらいの大きな「雨の音」があったような…。
確かめたい! もうそれだけで、今年の夏の夕立が楽しみになっちゃいますよね。
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磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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