スターになるには、理由がある。
「なんだか気になるんだよね、あの人」
大体、そこから始まって。
「あの人がいると、場が明るくなるんだよ」
本人のいないところでも話が出るようになって。
「今日、あの人いないの? 残念!好きなのに」
そうやって人気者って出来ていく。
絵本『オオイシさん』の主人公、オオイシさんだってそう。
その存在感は半端ない。
大きさも、顔も、形もいい。その上、大いに役に立つ。
人気者として文句なし、なのです。
だけど、オオイシさんはそこでは終わりません。
“スター”になるのです。
絵本を読む前にオオイシさんがスターだと聞かされると、
「え!?」
となる人も多いかもしれません。
だけど読んでいると、オオイシさんも絵本に登場する人たちもみんな、彼がスターになるのを自然に受け入れているように見えるのです。
オオイシさん
オオイシさんは売れっ子です。
「オオイシさん、いるかい?」
家にいるだけで、色んな人から声がかかります。
壊れた工事の車の代わりに道路をならしたり、
つけもの石や粉の粗びきをしたり、
相撲部屋でけいこの相手だってします。
その存在が「役に立つ」のです。
だけどある日、ちょっと変わった仕事の誘い。
なんと映画の撮影所の人がオオイシさんをスカウトにやってきたのです!
その仕事をきっかけに、オオイシさんはすっかりスターの仲間入り。
ところが仕事の最中、オオイシさんの身にとんでもないことが起きて…。
ゴツゴツ大きいオオイシさん。
無骨で素朴、ハンサムとは言いきれないけど…ほっとする顔立ち。
そんな彼の大活躍劇は、奇想天外なのに、ありえないはずなのに、
不思議とほのぼの、見ているだけで嬉しくなってくるのです。
北村直子さんの初の創作絵本『ワタナベさん』に続く第二弾『オオイシさん』。
どちらの主人公も味わいの深さが唯一無二。これはクセになりそう!
それにしても…最後の場面。
オオイシさんに新しい仕事が入ってくる理由が。
くーーー渋い!たまりませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
私にはなんとなくわかります。
オオイシさんが“スター”になる理由が。
でも、その答えは一つじゃないはずなのです。
だからこそ、面白いのかもしれません。スターを見るのも、この絵本を読むのも…!
こちらも合わせておすすめ!『ワタナベさん』
ワタナベさん
「ワタナベさん やってるー?」
ガラガラっと戸を開ければ、待ちかまえているのはワタナベさん。ワタナベさんは、おなべひとつでどんな料理でも美味しくつくる名人です。
次々に材料が入っていき、ボッと火がついてワタナベさんの顔が真っ赤になった頃、いいにおいがしてきます。ふたがパッと開けば、今日は得意なおでんの出来上がり。他にも、ちゃんこなべにロールキャベツ、カレーに炊き込みごはん。お客さんのために次々と完成させていくワタナベさん、それはそれは見事です。
ところが、最後のお客さんの注文が「ナポリタン3人前」。いくらワタナベさんでも、おなべひとつでナポリタンなんて作れるのでしょうか!?困ってしまったワタナベさんですが、悩んだ末に……「ひらめいた!!」
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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