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絵本ナビ編集長の気になる1冊

そこにあるから、安心するもの。

 

小学生の頃、家から学校までは割と遠かった方だと思う。

 

家を出て、全体が坂道となっている団地を降りて行き、家がなくなってくると、川沿いをとぼとぼ歩き、手を上げて横断歩道を渡る。今度は右手に田んぼを見ながらさらにまっすぐとぼとぼ歩き、大きな歩道橋にたどりつけば、あと半分。

 

歩道橋を渡った先は、生い茂った木々に囲まれたトンネルの様な山道。舗装されていない道を、靴でジャリジャリ音をさせながらゆるやかに登っていく。左手に竹林が見えてきて、ちょっと薄暗くて怖いなあ…と思っていると、とつぜん明るく開けた道に出て、校門越しに大きな大きなクスノキが見えてくる。

 

ああ、着いた。
校庭で遊ぶみんなの声を聞きながら、最後に一番急な坂を登り切るとやっと学校に着く。そして、長い長い小学校の一日が始まるのです。

 

何十年も経った今、辿ってみればそんなに大した道程ではなかったことに驚くのだけれど、その頃の私にとっては毎日がちょっとした旅の気分。忘れ物などをして、一人で引き返し、一人で学校に向かう時は特に心細い。

 

帰りはもちろん、来た道を逆戻り。最後の坂道を上がる時、家の近くに立つ大きな鉄塔が私を迎えてくれる。
ああ、着いた。

 

いつもそこにあるから安心するもの。
いつだって自分を見下ろしてくれるって思うから、歩いていけるもの。
小さな子どもたちの登下校って、そういうものに支えられているのかもしれない。
思い返せば、私にとってのそれは校庭にあった大きなクスノキと家の近くの鉄塔だったんだな、と。


もちろん、空にかがやく星だって……

モグラのねがいごと

モグラのねがいごと

「あの美しく瞬いている星たちが、みんなぼくのものになったらいいのに…。」

思わずそうつぶやいのは、地面の下で暮らすモグラ。
トンネルでつなげた家は悪くない。住み心地満点です。
でも、ちょっぴりさみしくなることもあります。
そこで、流れ星を見つけたモグラはいそいで目をつぶり、お願いごとをしてみたのです。

するとどうでしょう。
目の前にたくさんのはしごが現れて…空にむかってのびています!
モグラは夢中ではしごをかけのぼり、星をとっては自分の家にはこびます。
星でいっぱいになった部屋の綺麗な事と言ったら。

でも、しばらくするとモグラは気がつきます。
空がまっくらになっているという事に。
……少しの悲しい気持ちと後悔を背負って歩くモグラが、その視線の先に見つけたものは?

『手と手をつないで』『かべのむこうになにがある?』も記憶に新しいドイツの絵本作家ブリッタ・テッケントラップが描く「もし、こうなったら」の世界。それはとてもきらびやかで恍惚とした光景で。だけどそこでは終わりません。その先にある、もっと大事なことに気がつかせてくれるのです。

誰かと好きなものが一緒、美しいと感じる心が一緒。
そう思うだけで、こんなにも嬉しい気持ちになれるなんて!
この絵本を誰と読もうか、想像するだけで楽しくなってくる一冊です。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

大事なのは、星がいつもそこで光り続けているっていうこと。
だからこそ、みんなが憧れ、みんなの希望になる。

 

だけど、好きなものは、自分だけのものしたい。
当然の気持ちです。
みんなも同じかもしれない…なんて、大人だって気が付くのは難しい。

 

絵本を読むということは、思っているよりも、大切な経験なのかもしれませんね。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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