【入園・入学 絵本】ここを邪魔してはいけないのです…。
「私の背より大きくなったら、息子ばなれをしよう」
小さな息子が可愛くて仕方がないので、そうやって常に自分に言い聞かせていたあの頃。そういえば……隣にいる息子はとっくにでかい。私が見上げるほどでかい。いつから、そうなった!?
背が大きくなれば可愛くなくなるか、といえば。
困ったことに、母親の気持ちは全然変わらない。
おそらく背の問題ではないのでしょう。
大きくなるって、どういうことなのか。
思春期で縮こまっている心が、今よりずっとずっと大きくなった時のことを言うのか。
それとも、父親よりも頼もしくなって、大きく見えてきた時を言うのか。
……わかっています。
そんな事言っているうちは、息子ばなれなんて出来ないのです。
大きくなるって、どういうことなのか。
この絵本には、大人に対してもヒントが詰まっているような気がします。
おおきくなるっていうことは
2歳が3歳になって、4歳になって…
どんどん大きくなる子どもたちに向かって、私たち大人は言わずにはいられません。
「おおきくなったね」
でも、子どもたちはどう感じているのかな。
おおきくなるって、どういうことなのかな。
この絵本は、一緒に考えてくれます。
「おおきくなるっていくことは…」
洋服が小さくなるってこと。新しい歯がはえてくること。
あんまり泣かないこと、高いところに登れること。
それから、それから。
小さい子どもたちの毎日は「おおきくなる」喜びでいっぱい!
だけど、園長先生は言います。
「おおきくなるっていうことは
じぶんより ちいさなひとが
おおきくなるってこと」
それって、どういうことなのかな?
ピーマン村シリーズの中でも、特に進学・卒園の時期に人気のこの絵本。保育士でもあった中川ひろたかさんが投げかける一つ一つの言葉は、小さな子どもたちが自分たちでも考えられるように優しくわかりやすいのです。そして、そのシンプルな言葉に心情をのせてくれるのが村上康成さんの絵と構成。熱い気持ちには体温を感じる背景色、未知の世界へ飛び出していくかのような場面には、白の背景を。読んでいる人たちが思い思いに気持ちを映していきます。
ところで、おおきくなるっていうのは、どういうことなのか。大人だって一緒に考えたくなる一大テーマなのかもしれません。読んだあとも、絵本を大切にとっておいてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「あんまり なかないってこと」の場面で、涙が少し出ているのに、ぐっとこらえている表情。これがたまらない。子どもなりに、心の中でたたかっているのでしょう。乗り越えようとしているのでしょう。
ここを邪魔してはいけないのです。
おおきくなろうとしていることを、さえぎってはいけないのです。
……でも。
可愛い。大泣きしていたって可愛い。
困ったものです。
「ピーマン村の絵本」シリーズ
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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