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絵本ナビ編集長の気になる1冊

私の方が……ヒドイ!?

 

そういえば母はいつも兄の心配をしていた。

 

確かに小さい頃の兄は身体も少し弱く、その割に頑固者でどちらかというと変わりもの。対して私は根が怖がりのくせに家では態度が大きく、家族は私を中心に…いや、世界は私を中心に回っていると思っていた節がある。だからあまり心配はされなかったのかもしれない。

 

だとしても。
大人になってからもそれは変わらず。「そんなに心配しなくても?」と少しイラだったりして。そんなに息子が可愛いものかしら、と。

 

そして、時が経ち。私にも息子がひとり。
……はい、可愛いものでした。

 

すやすや眠る小さな息子の顔を見ながら「ご飯三杯はいけるな」とつぶやき、泣くじゃくる息子の顔を見ながら「可愛い」と漏らし、まだ頼りない足取りで歩く息子の小さな背中を見つめながら意味もなく切ない気持ちになったり、思春期でろくに返事もしてくれなくなった息子に対しても「それでも可愛いんだよねえ」と言ってみたり。
「私の時は子どもがそんなに可愛く見えたかしらねえ…」と、母親に言わせてしまう始末。どうやら私の方がヒドイみたい。大丈夫かしら。

 

だけど、息子は可愛くてたまらないのです。そして、いつもどこか切ない気持ちがつきまとうのです。この絵本を読んでいると、その理由が少しわかってくる気がして……。
 

ママの小さなたからもの

ママの小さなたからもの

「息子はかわいい。」

男の子を育てているママたちの頭の中をざっくり言うと、だいたいこんな感じ。だけど、これじゃあ足りないのです。どれだけかわいくて、どれだけ愛しているか。なかなか面と向かって言う機会は与えられてないけれど……この絵本を読むなら、ね。きみにも伝わるかな。

お話は、おやすみの時間に、ぼうやがママにぎゅーっとされながら質問するところから始まります。

「ねえ、ママ。
 ママはずっとぼくのこと好きでいきてくれる?」

そこでママは言います。
「じゃあ、こっそり秘密をおしえてあげるわ」

ママがぼうやのことを愛しているのは出会った時から。いや、会う前からずっと。愛されているってわかるでしょ? そうじゃないかもってきみが感じている時だって、きみがなさけない時だって、ケンカしている時だって……。

展開されるのは、めくるめく母と息子の蜜月の世界。ぼうやが「いい子」の時、「わるい子」の時。ぼうやが「素直」な時、「自分勝手」な時。ぼうやが「頼もしい」時、「まだまだぼうやな」時。左と右のページで絵を比較しながら、でもずっとママの気持ちは変わらないことを伝えていきます。

フランス生まれで世界18カ国語に翻訳されたベストセラーのこの絵本。とにかくぼうやの表情や動きが愛らしく、ママの姿もどこか洗練されていて素敵。フランスらしい独特な色彩も目を引きます。そして、日本語に訳してくれているのは作家・辻仁成。シンプルな言葉の中に、リアルな感情が見え隠れするのは、ママの気持ちがわかるから!?

そこには甘いだけじゃない、楽しいだけじゃない、子育ての大変さが伝わってくる場面もあったり。時にはお互いに存在を忘れるくらい何かに夢中になっていたり。愛しているけれど、「ママのものにはならない」っていうことをいつだって意識していたり。「楽しくて、幸せで、ちょっぴり切ない……宝物のような時間」が詰まっています。

たまには「愛している」と声に出しながら、息子の姿と重ねあわせ、その甘い気持ちを思いっきりかみしめてみるのはいかがでしょう? また明日から元気にやっていけそうです。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/123768/%E3%83%9E%E3%83%9E%E3%81%AE%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%82%E3%81%AE/
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「息子は私のものにはならない」
そんなことはわかっている。別にしようとも思わない。
なんなら、早く自立して出て行って欲しい。

でも、案外その日がくるのはそんなに遠くない……という現実からは目を背けているのかもしれない。

 

そんな情けない自分のことを思うと。

母が兄を心配することくらい、推奨してあげてもいいくらいなのです。

 

スマホに保存された小さい頃の息子の写真を眺めながら(!?)、そんな事を思った一日なのでした。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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