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絵本ナビ編集長の気になる1冊

……あれ、意外と悪くない!?

 

「誰にも言っちゃダメだよ」

 

幼い頃、夏休みや冬休みに祖母の家に行くと、いつも遊んでくれたのはいとこのお姉ちゃん。このお姉ちゃんが実にひとり遊びのプロ。

 

引っ越しが多かった家だけど、新しい場所に行くたびに「基地」をたったひとりで見事につくりあげては秘密で案内してくれるのです。

 

そこへ行くための道すじだって、簡単じゃありません。細く渡した鉄骨の橋をそおっと渡り、材木の山々をかきわけ、たどりついたのは広い空き地の隅っこ。誰かがいたようないないようなそこの場所にあるのは、私には見た事のない資材ばかり。子どもにとっては宝物、時間を忘れて遊んだものです。

 

ある時は椅子を使ってつくったテントの様な家だったり、がらんとまわりに何もない広場の窪みの中だったり、塀と塀の隙間だったり。バリエーションだってさまざま。

 

そんなお姉ちゃんの集大成と言えるのが、ある時「ちょっとおいで」と連れて行ってくれた場所。自分の部屋がなかったはずのその家だけれど、一回外に出てドアを開けたのは電気もついてないはずの暗いガレージ。「え?」と思ったのはつかのま。そこにはなんでも揃っていたのです! 読みたいマンガも、お姉ちゃんが愛してやまなかった熱帯魚も、素敵なねどこだってある。窓なんてないから、時間も気にせず、いつまでだって過ごしていられる。おやつだって持ち込み自由。隣人だと名乗る年下の姉弟の手下まで作って自由に出入りさせ……。

 

「あ、いけないいけない。
 ここから出られなくなる。」

 

今でもふと、空想の中でこの部屋に時々出入りする私なのです。
居心地のいい場所ってなんだろうって考えながら。

おおかみのおなかのなかで

おおかみのおなかのなかで

この絵本のはじまりは、なかなか衝撃的です。
ねずみが、おおかみにぱくっと食べられてしまうのです。
主人公なのに!

でも実は、面白いのはここから。
真っ暗なお腹の中でおうおう泣いていると、誰かいる。
見ると、パジャマを着てベッドに入って寝ていたらしい、あひるです。
驚くねずみをよそに、あひるはあっという間に朝食の支度を整えます。
(お腹の中で、ですよ)

「ようこそ わがやへ。
 ぱくっと くわれたけど、
 べつに どうってこと ないし」

なんでしょう、このカラッとした感じ。
そしてあひるの言う通り、おおかみのおなかの暮らしは意外と悪くないのです!
必要なものはおおかみに飲み込んでもらえばいいし、何よりおおかみは森では無敵。
安全なのです。
ふたりいれば、退屈だってしない。

ところが、ある日。
そんなおおかみの天敵がやってきます。
かりゅうどです。
おおかみ、大ピンチ!
その時、あひるとねずみのとった行動は……?

まさに予測のつかない展開の繰り返し。
あひるが何を言い出すのか、おおかみがどんな行動をおこすのか。
結局ねずみはどうするのか。
そりゃあそうですよね、最初の設定から想定外なのですから。
だけど物語のクライマックスはやってきます。
「おりゃーーっ!」
あまりに愛らしく、それでいて健気で、ユーモラス。
ちょっと涙が出てくるくらい。

世界中で大人気の絵本作家マック・バーネット&ジョン・クラッセンのゴールデンコンビによる最新作を、なかがわちひろさんによる軽快な翻訳で。大爆笑の連続に「これぞ絵本の醍醐味!」と幸せな気持ちになってしまうのは子どもたちだけではないはずですよ。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/121017/%E3%81%8A%E3%81%8A%E3%81%8B%E3%81%BF%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A7/

だけど、その「基地」もやがて退かなければならない時がきて。お姉ちゃんはあの時、少しは抵抗したのかな。もしかしたら隣人という名の可愛い手下二人を引き連れて一回くらいは突撃したのかもしれないね。
「おりゃーーー!」って。
 

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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