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絵本ナビ編集長の気になる1冊

【編集長の気になる1冊】ぼくだけの冒険…を見てみたい。『ぼくといっしょに』

 

「ああ、おかえり。やっと帰ってきた。」

 

バスのステップをふらふらの足取りで降りてくるのは、小学校低学年の頃のわが息子。目はほぼ閉じており、放っておくとそのまま地面で寝てしまいそうなので、全身を抱えながら運転手さんに声をかける。

 

「いやあ、この子座席から見えなくなっちゃうんだもん。全部まわってからもう一度来たよ。」

 

お礼を言ってバスが走り去ると、息子の頭はすでに夢の中。必死で部屋まで連れていき、そのまま寝かせてため息をつくと、今日も考える。長い旅だな…。

 


行きは自転車で送って20分、帰りはバスで20分。毎週末に通わせているスイミングスクールである。道筋で言うと、まっすぐ行って右に曲がったら大通りを渡り、さらに少し行って左へ曲がり線路を通り抜け、すぐ。つまり結構な近所と言える距離。

 

練習が終わると自分で決まった時刻のバスに乗り、一人で帰ってこれるようになるのだが。……これがなかなかすんなり行かない。バスは大回りをしながら、それぞれの子の家の近い場所で降ろしていってくれる。息子も、ほぼ家の前までバスが来てくれる。

 

ところが、予定時刻になってもバスが通らない。息子が降りてこない。いったいどこへ向かっているんだ。どこをどうぐるぐる回ったら、こんなに時間がかかるんだ。待ちくたびれた頃、満身創痍の息子が帰ってくる。まるで長く闘いの続いた壮大な冒険から帰ってきたかのように。また今日も。

 

ああ、例えば空から、あるいはどこか高いところから、息子の帰り道を見る事ができたなら。この絵本みたいにね……

ぼくといっしょに

ぼくといっしょに

「ぼくのうちが、どこかわかる?」

一体どこから呼びかけているのでしょう。広がっているのは、様々な形をした家や大きな庭、そして川や牧場まで見える魅力的な町。どうやら世界で一番大きな庭があると言うのだけれど……あ、いたいた! 赤い服をきた男の子、それがこの物語の主人公。これからお母さんに頼まれたおつかいに行くんですって。

「そんなのかんたんって、思うでしょ?」

でも、それはどうやらとっても遠くて危険な道。ドラゴンが住んでいたり、大男が眠っていたり、おそろしいくまが潜む洞窟や、おまけに人食いザメや海賊のいる海だって通らなくちゃいけない! 果たして彼は、無事に帰って友達と川で遊ぶことができるのでしょうか…。

オランダではロングセラー絵本として読み継がれているこの絵本。誰にでも経験のある日常の出来事の中で、だけど同時に果てしなく壮大な冒険の物語が始まるのです。とてもユニークなのは、読者の視点。主人公の「ぼく」がとてつもなく小さく描かれおり、子ども達は彼を探しながらも、今何が起きているか、どこに何がいるのか、「ぼく」に教えてあげなければいけません。つまり、自分からどんどんお話に参加していくことで、さらに絵本の世界が豊かになっていくのです。

大人が素朴で美しいオランダの村にうっとりしていると、子どもたちは知らないところで真剣な戦いの真っ最中。想像するだけで素敵な時間ですよね。でも眺めてばかりいないで、大人だって絵本の中に隠れている沢山の物語を探してくださいね!

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

https://www.ehonnavi.net/ehon/146252/%E3%81%BC%E3%81%8F%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%AB/
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電話をしてみると、大抵は「トイレが長くて乗りそびれちゃったみたい」「遊んでいて一本遅れるようです」という答え。たまに「乗ったんですけどねえ」という時はなんのことはない、爆睡しているのだ。体を動かした後に更に人一倍遊んでから乗るのだから、それは座席からずり落ちるほど寝るはずだ。いやでも、この目で確かめるまではわからないぞ。もしかしたら!?

 

スース―寝息をたてながら寝る息子のおでこをなでながら、毎週そんな想像をして楽しんでいるのは……私の方なのでした。お疲れ様。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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