新井洋行さんとコラボできる! 想像力と創造力を育む新感覚ワークZ会「こどもクリエイティブック」シリーズ誕生!
絵本作家としての独自の視点と子育て経験から、子どもたちに「新しい遊び」を提案し続けている新井洋行さんが、新しいワークブックシリーズをつくりました。それがZ会「こどもクリエイティブック」シリーズです。
実はこれ、おはなしに合わせて子どもたちが絵を描き足したり、紙を切ったり、シールを貼ったりして自分だけの絵本を作っていく、新感覚のワークブックなのです。「絵を描くのが苦手」「真っ白な紙だと、どう描いたらいいのかわからない」という子どもたちでも簡単に取り組むことができて、お絵かきが楽しくなる工夫がいっぱい! 親子で実際に体験してもらったワークショップの様子といっしょに、「こどもクリエイティブック」の魅力と遊び方を紹介。さらに、子どもたちといっしょにワークショップに参加してくださった新井さんに、子どもたちの様子を見た感想や、新シリーズへの思いを語っていただきました。
【ワークショップ】『新井さんと「こどもクリエイティブック」で遊ぼう♪』で発見! 自主性、集中力、想像力、創造力を育む4つの工夫
発売に先がけて、3人の子どもたちとお母さんふたりに参加してもらったワークショップ『新井さんと「こどもクリエイティブック」で遊ぼう♪』を開催しました。子どもたちがどんな風に楽しんでくれるのか、新井さんはちょっぴりドキドキしながらスタート! 子どもたちは描きたい絵を選ぶと、好きな筆記用具を持ってさっそく絵を描き始めてくれました。
※ワークショップで子どもたちが取り組んだ紙面は、制作中のものです。
それでは「こどもクリエイティブック」シリーズで絵を描く楽しさを体験できる4つの工夫を、ワークショップでの子どもたちの様子といっしょに紹介していきましょう。
工夫①「ようせいさんやかいじゅうたちを助けてあげる!」自主的な取り組みを促す子ども心をつかむおはなし
『こどもクリエイティブック かいじゅうたちをたすけて!』は、いたずら好きの大魔王グルデモスに消された、かいじゅうたちの大事なものを、絵を描いて取り戻していくおはなしです。
◎かいじゅうたちを助けて、自分だけの絵本を完成させよう!
◎かいて きって はって あそべる!想像力×創造力を育むアクティビティブック
「絵を描くのが好きな子も、絵を描くのが苦手な子も楽しんでもらえるようにと、ぼくが一番描きたい部分をみんなに描いてもらえるようにとっておきました。みんなの力でかいじゅうたちを助けてあげて!」(絵本作家・新井洋行)
大きな「つばさ」や、自慢の「しっぽ」、なが~い「つめ」……かいじゅうたちの大切なものがなくなっちゃった!?
描いて、切って、貼って、想像力×創造力でかいじゅうたちを元にもどしてあげる、アクティビティブックです。(子どもの創造を応援するシール、別冊おたすけパーツ付き)
最初に登場するかいじゅうギガドラスが消されてしまったのは、「つの」。確かにつのがないと、ギガドラスがちょっぴりかわいく見えますね。
3歳のゆうまくんは自分で読むのが難しいので、お母さんが隣でおはなしを読んであげました。「絵を描いて、かいじゅうさんたちを助けてあげて」と声かけすると、うれしそうに絵を描き始めます。
「困っている人を助けたい」という思いやりの気持ちは、自分よりも小さな子のめんどうを見たり、動物や植物を育てる中で育まれるだけでなく、物語の登場人物といっしょになって喜びや悲しみなどいろいろな気持ちを感じ、共感することでも育ちます。
また「こどもクリエイティブック」では、絵を描いたことで「自分の力で誰かを助けてあげることができた」という達成感を味わうことができるので、「もっと、もっと」とやる気も出てくるのです。
ときおり、描いた絵を見てお母さんが「いっぱい描けたね!」と声をかけると、ゆうまくんの筆がさらに進みます。まだ手指の発達が未熟な子が描いた絵は、何を描いたのかを見分けるのはなかなか難しいですが、「こどもクリエイティブック」は描くものの予想がつくので、大人も「きれいだね」や「かっこいいね」など具体的に感想を言うことができ、おしゃべりが弾むという発見がありました。
筆者の体験ですが、真っ白い紙に絵を描いて遊ぶ場合、よく子どもに「描いて」とおねだりされたことがあります。絵を描くのが得意ではないと、いきなり「描いて」はハードルが高いと感じてしまいますが、今回のワークショップ中に、大人に「絵を描いて」という子はひとりもいませんでした。それどころか、新井さんが「いっしょに描いてもいい?」とお願いしても、みんなに「やだ!」とお断りされてしまったのです。
「自分だけの絵」という気持ちが強いんだね。いっしょにお絵かきができないのは寂しいけれど、子どもにとって自分だけの世界があるのは、すごくいいこと。想定外の返事でしたが、それだけ楽しんでいる様子を見ることができて、うれしいです(新井)
お母さんが「いつも読んでいる絵本を描いている先生なんだよ」という声も耳に入らないくらい、ひたすら絵を描くことに集中している子どもたち。個人差はありますが、5〜8分程度で1見開きの絵を描き終わり、すぐに紙をペラペラめくっては新しい絵を描き始めるので、大人は見守って声かけするだけ。これなら雨の日の室内遊びや、走って遊ぶのが大変なおじいちゃん、おばあちゃんとも快適に過ごせそう。
このように、「こどもクリエイティブック」は子どもの自主性と集中力を引きだし、楽しくコミュニケーションできるワークブックだということがわかりました。
工夫②「なにかが足りない絵」が子どもの想像力と推理力を刺激! 説明なしで小さい子も取り組める絵の力
もう1冊のシリーズ『こどもクリエイティブック おとぎのせかいをたすけて!』は、いたずらずきの大魔法使いモルダルが魔法の杖で消してしまったおとぎの世界の大事なものを、妖精ポップルといっしょに、絵を描いて取り戻すおはなしです。
◎おとぎのせかいを助けて、自分だけの絵本を完成させよう!
◎かいて きって はって あそべる!想像力×創造力を育むアクティビティブック
「絵を描くのが好きな子も、絵を描くのが苦手な子も楽しんでもらえるようにと、ぼくが一番描きたい部分をみんなに描いてもらえるようにとっておきました。みんなの力でおとぎのせかいを助けてあげて!」(絵本作家・新井洋行)
『シンデレラ』の「かぼちゃの馬車」、『ヘンゼルとグレーテル』の「おかしの家」…おとぎのせかいの大切なものがなくなっちゃった!?
描いて、切って、貼って、想像力×創造力でおとぎのせかいを元にもどしてあげる、アクティビティブックです。(子どもの創造を応援するシール、別冊おたすけパーツ付き)
登場するのは『人魚姫』や『ありときりぎりす』など、世界の有名な童話の中のワンシーン。読み手は、大事な物を消していくモルダルを妖精といっしょに追いかけて、いろんな童話の世界を旅していきます。
『人魚姫』のページでは、顔を消されてしまった人魚姫が登場。おはなしを読まなくても絵を見ただけで、人魚姫になにを描いてあげればよいか、すぐに想像できるところが、「こどもクリエイティブック」の工夫のひとつです。
モニターで参加してくれたみゆちゃんは、お絵かき大好き。迷いなく人魚姫の顔を描き始めました。実はみゆちゃん、このページの絵を描くのは2回目なのですが、「同じ絵でも、また描きたいと言うんです」とお母さん。
みゆちゃんがお家で描いた1回目の絵と、ワークショップで描いた2回目の絵を比べてみると、驚くべき発見がありました。1回目の絵は顔だけを描いていますが、2回目はお洋服や妖精など、ほかの部分にも色をぬることができました。さらに、洋服に素敵な模様まで描かれています!
ワークショップでのみゆちゃんは、描きながら「こっちも色を塗る」と言って、右の絵を完成させました。「大事なものが消えた絵」という工夫が、子どもの想像力と創造力を刺激しているという手応えに発案した新井さんもびっくりしつつ、「何度でも楽しめるということが、実際に子どもたちの様子を見てわかったので、うれしいですね」と感想をもらしていました。
一方、『こどもクリエイティブック かいじゅうたちをたすけて!』でかいじゅうをお助けしているゆうまくんは、かいじゅうギロリロのページを見て、「こわい!」とびっくり。でもすぐに気を取り直して絵をよく見ると、すぐに描いていない部分になにを描けばいいのか気づいて、「めんめ(目)をかくの!」とペンを取って絵を描いていきます。
ヒントになったのは、同じ見開きに描かれている左側の小さなかいじゅう。良く見ると、右の大きなかいじゅうと形が似ています。「ひょっとしたら親子かも?」なんて、自然と推理力を働かせるしかけがポイントです。
先ほど「怖い」と言っていたゆうまくんは、お母さんの声かけで「やさしい目」を描くことにしました。
「こどもクリエイティブック」では、描くものを物語に沿って指定していますが、どんな風に描くのかは自由です。同じページにあるヒントに気づいても、かいじゅう=怖いものという概念にとらわれず、「やさしいかいじゅうにしたい」と笑った目をたくさん描いたゆうまくんの自由な発想に、大人たちは感心。同時に、絵を描くことで子どもが考えていることや思っていることが伝わってくるという、気づきがあったのです。
工夫③描いた絵本を人に見せたり、人が描いた絵本を見たりすると、絵を描く意欲がわいてくる!
ずっと集中して自分の絵を描いていたすいちゃんが、ふと隣にいるみゆちゃんの絵をじっと見つめる瞬間がありました。新井さんが、みゆちゃんと絵についておしゃべりしている声が、耳に入ったようです。そしておしゃべりを聞いた後で、再び熱心に絵を描きます。お友達が描いた絵に刺激を受けて、「自分ならこう描く」とイメージがふくらんだのかもしれません。
絵を描くときは「ひとり」の時間ですが、描いた絵を見るのは「みんな」でできます。「こどもクリエイティブック」シリーズは、名前の通り「本」の形をしているので持ち運びしやすく、できあがったワークを絵本のように読み聞かせることもできます。そして大人でもうれしいのが、普通の絵本といっしょに本棚にしまうことができること。これなら、子どもが大きくなるまで大切にとっておくことができますね。
こうして、あっという間に45分のワークショップは終了。すいちゃん、みゆちゃん、ゆうまくん、そして新井さんとお母さんたち、お疲れさまでした!
工夫④「お助けパーツ」の切り絵とシールで絵が描けなくても楽しめる!
Z会「こどもクリエイティブック」シリーズには、「お助けパーツ」という、切り絵とシールとがついています。まだ筆記用具がうまく使えなかったり、絵を描きたくないというときは、ページに合うシールを見つけて貼るだけでも、絵本が完成します。
「お助けパーツ」は、各ページで「かいてみてね」と指示されているパーツのほか、自由に貼って楽しめる絵柄もあります。
さらに、初版限定でキラキラ光る「キラキラシール」もついてきます! ギガドラスが口からはく炎が、魔法みたいに見えますね。
切り絵やシールの使い方も子どもたちの自由。違うページに貼ってもいいし、それこそ真っ白な紙に貼って、「こどもクリエイティブック」とは違う絵を描いてもOKなので、自由な発想で「こどもクリエイティブック」を遊び尽くしてみてください。
◎かいじゅうたちを助けて、自分だけの絵本を完成させよう!
◎かいて きって はって あそべる!想像力×創造力を育むアクティビティブック
◎かいじゅうたちを助けて、自分だけの絵本を完成させよう!
◎かいて きって はって あそべる!想像力×創造力を育むアクティビティブック
こどもクリエイティブック おとぎのせかいをたすけて!
◎おとぎのせかいを助けて、自分だけの絵本を完成させよう!
◎かいて きって はって あそべる!想像力×創造力を育むアクティビティブック
◎おとぎのせかいを助けて、自分だけの絵本を完成させよう!
◎かいて きって はって あそべる!想像力×創造力を育むアクティビティブック
「こどもクリエイティブック」シリーズ作者・新井洋行さんインタビュー
新井 洋行
1974年、東京生まれ。二人の娘の父。絵本作家・デザイナー。 絵本に『れいぞうこ』(偕成社)、『いろいろ ばあ』(えほんの社)、『みず ちゃぽん』(童心社)、『どじにんじゃ』(講談社)、『おおごえずかん』(コクヨS&T)、『ころころぽーん』(ほるぷ出版)など多数。挿画に「パーシー・ジャクソン」シリーズ(ほるぷ出版)、「モーキー・ジョー」シリーズ(フレーベル館)など。くもん出版からは、「えほんとあそぼ」シリーズのほかに『ぴーかーぶー!』『カチン コチン!』(絵・小林ゆき子)の2冊がある。
想定外の遊び方をする子どもたちに「自由」な心を感じた
――ワークショップで子どもたちが実際に取り組む姿を見ていただきましたが、いかがでしたか?
新井:楽しそうでよかったです。自分が想定していること以外のことを、絵に描いているのを見て「子どもの発想って自由だな」と感じました。それが、描いている様子から伝わってきて、見ていてすごく楽しかったです。「いっしょに描こう」と誘ったら断られてしまったのも、「自分が書きたい」という気持ちの強さなんですよね。その強い気持ちがある、ということがうれしかったです。
――そのキッカケが、「大事なものが消えた絵」だったんですね。
新井:そうです。最初は、「大事なものが消えた絵」の消えた部分を、物語に沿って描いてもらうのから始まり、どんどん白い部分が増えていって、最後は自由に描くようになっていく本があればいいなと。1冊の「こどもクリエイティブック」を通して、絵を描く経験値というか、こうやって描けば楽しく自由に絵が描けるんだということをわかってもらえたら、うれしいです。
――新発売の「こどもクリエイティブック」シリーズのテーマはかいじゅうとおとぎ話ですが、ふたつのテーマを選んだ理由はなんですか?
新井:真っ先に思いついたのがかいじゅうでした。僕もかいじゅうが好きだし、想像するものといったらやっぱりかいじゅうだなと。僕は子育てする中で子どもたちといっしょに遊んできましたが、男の子はかいじゅう好きな子が多いという実感が一番にあったからですね。さらにもっと、いろんな子が絵を描きたくなる広いテーマはないかと考えて思いついたのが、童話でした。
――童話なら、絵のバリエーションも増えそうですね。
新井:そうなんです。意外だと思われるかもしれませんが、小さいうちはファンタジーよりも、人の顔や食べ物、乗り物など、現実にある自分の身の回りの事に興味を持っていることが多いのかなと秘かに思っていました。童話なら、そういった身近ないろんなものを描くことができるということで、決まりました。
――子どもに絵を描いてもらう工夫や、しかけとして考えた事はありますか?
新井:子どもたちが知っているモチーフということと、見た目で描きたくなるものを選びました。でもそれも、いろんなものを用意したとしかいえない。やっぱり人それぞれ好きなものは違いますから。その中でやっぱりみんな「顔」が好きなんだというのは、今日の様子を見て確信しましたね。
――ギロリロの目や人魚姫の表情は、本当に真剣な顔で描いていましたね。
新井:あとは、僕が一番描きたい部分を我慢して描かずに、みんなにえがいてもらえるように、とっておいたことです。一番描きたいと思った部分が消えていたら、みんなが自然と描きたくなるんじゃないかなと思って。
――なるほど! 「ラプンツェル」といえば「髪の毛」というイメージが強いです。
新井:最後に、1冊を通して難易度を少しずつ上げていって、最後はおはなしや描くものの指定がなくても、自由に絵を描くことが楽しめるようになったらいいなと思って作りました。
――確かに、パラパラとページをめくっていくと、後ろのページほど白い部分が多くなっている気がします。それにしても全部で96ページというのは、大ボリュームですね。完成するまでの過程で、特に苦労したことなんでしょうか?
新井:まさにページが多かったことです(笑)。子どもたちはいっぱい描きたいと思うので、満足してもらうために、いろんなかいじゅうやシチュエーションを考えました。でも苦労よりも、楽しかったことの方が大きいです。「こどもクリエイティブック」は僕にとっても夢の本。僕と子どもたちとのコラボレーションで完成する絵本というのは、なかなか珍しいと思います。ですから僕は描いていて楽しいことばかりでしたが、編集者さんの方が苦労してくれたと思うことが多いです。
――編集者の原さんはいかがですか?
原:私は絵本もドリルも作った経験がありますが、「こどもクリエイティブック」は、そのどちらとも違う取り組みになりました。子どもの満足度はどうやって測るのかとか、どんな構成がよいのかも手探りで、とにかく子どもたちに実際にやってもらおうと思い、子どもたちに何度か試作品をやってもらいました。そこで好反応を得て、商品化することができました。
新井:もうひとつ難しかったのが、「この本を、どう使っていいのかわからないという」指摘に対して、どんなアイデアを示せるかでしたね。絵を描くことに対する好き、苦手もありますし、同じ年齢・月齢の子ばかりが遊ぶわけでもありません。気持ちは十分わかりますが、できれば使い方を限定したくないという思いで、いろんなニーズに対応できるやり方を用意したというのが、正直なところです。
――「好きな絵」を選べる自由を味わえる幸せが、96ページというボリュームにつまっているなと感じました。ワークショップでの子どもたちもそうですが、1ページ目から描かなくても、好きなページから遊び始めてもよいのでしょうか?
新井:もちろんです。本当に自由に使ってもらえたらうれしいですね。
子どもたちの心に触れた瞬間
――子どもたちの様子で、印象に残ったことはありますか?
新井:『こどもクリエイティブック おとぎのせかいをたすけて!』に「ジャックと豆の木」のページがあるんですが、「大男はいないほうがいいから、描かない」という話はおもしろかったです。「なるほど、そうやって自分だけの物語を紡いでいくんだな」と思いました。
――『こどもクリエイティブック おとぎのせかいをたすけて!』には、23の童話が登場します。親世代が知っていても、子どもが知らない昔話や童話もありそうですね。そういう意味では、新しいおはなしに出会うきっかけにもなりそうです。
新井:それも楽しみ方のひとつですね。実は僕も絵を描くときに記憶があやふやになっていて、「シンデレラ」と「白雪姫」がごっちゃになっていたので、元のおはなしを読み直すといいなと思いました。
――シールというお助けアイテムがあるのは、先にシールを使ったもので企画を立てていたからということですが、シールの使い方の工夫などはありましたか?
新井:シールは、自由に遊べるようにという選択肢のひとつだったので、特に使い方は限定していません。それこそ、「子どもクリエイティブック」に使うのではなく、別の自由帳に描いた落書きに使ってもいいと思います。本当に自由に使って、何か子どもが作ったり描いたりするきっかけになったらいいですね。それこそ「正解」はないので、その子なりのやり方で、本当に世界に一冊だけの絵本を自分で作っていってもらえたらいいなと思います。
――新井さんは、これまで「インタラクティブえほん」シリーズ(くもん出版)や、「あけて・あけてえほん」シリーズ(偕成社)など、親子のコミュニケーションを意識した絵本を創り続けてきました。新井さんが創作活動でもっとも大切にしていること、こだわりをおしえてください。
新井:絵本というよりも、遊びとかゲームとかおもちゃ、新しい遊びのルールブックみたいな感覚で、自由に作っています。僕はちょっと親目線で作っているところもあるので、親子や子どもたち同士で楽しめる「おもちゃ」を作っている感じで、絵本としていうよりも、みんなで楽しむ新しいものを作っている感覚です。それがたまたま、紙をいっぱい綴じたものなので、絵本売り場で売ってもらえると、大人が探しやすくなるかなと。
――確かにそうですね。
新井:「絵本」と考えてカテゴライズしているのは、大人だけだと思うんです。子どもたちは「絵本」というカテゴリにも言葉にもまったく意味を見いだしていなくて、親がたまたま本棚にある本をもってきた、くらいの認識だと思っています。だからそこはできるだけ意識しないで、新しいものを生み出したいといつも思っています。
――絵を描くことで得られる、よい影響はあると思いますか?
新井:まず、ひとりでもできる遊びが増えることです。僕は3歳くらいから、一番好きなコトで今まで生きてきて、描くことで救われたことがいっぱいあります。退屈なときや、その場をなんとかやり過ごしたいときは、絵を描いていれば楽しい時間に帰れる。それが仕事にもなっています。だから、遊びがひとつ増えるとか、人生の選択肢がちょっと増えるという風に感じてもらえたらいいなと。無理にやることではないので、楽しいと思ったらちょっと得かなと思います。
――絵を描く子どもたちを見て、色やページ選びなど、いろんな刺激を受けているなと感じました。
新井:大人が考えていることと、まったく違う動きをしていましたね。親がペンを渡しても、違うペンを自分で選ぶ。それがすごい。例えば親はこの服を着るのが正しいと思って選んでいるのかもしれないけれども、実は子ども自身は、もっと自由に好きな色を着たいのかもしれない。それが良い悪いではなくて、子どもたちは、大人が予想していないような色に対する気持ちがあるのかもしれない。いっしょに絵を描くことで、そういう発見に繋がるんだなと思いました。
――いっしょに絵を描こうと誘ったら断られたのも、発見でしたね。
新井:びっくりしました(笑)。でも、大人の思い込みを押しつけるのではなくて、子どもたちの自由が一番。大人はそれをフォローして、子どもたちが自由にできるようにしてあげたいなと思いますね。そういう意味では、『こどもクリエイティブック かいじゅうたちをたすけて!』の後半ページにある「ペット」を描くページで、ゆうまくんが水色の丸をたくさん描いていたことが印象に残っています。「なんで水色の丸をたくさん描いたの?」ときいたら、「雪が降っている」と説明してくれたんです。
新井:なぜ雪を描いたのか、たぶん子どもはうまく説明できないでしょうが、自分が見てきた、自分の好きなものを紙の上で再現したいという気持ちが強いんでしょうね。
――子どもたちが見て感じている世界ってこんな風なんだと、大人の発見が多いワークショップでした。子どもの数だけ描く絵も違いますし、さらにみゆちゃんのように、描いた時期が近いのにも関わらず絵が違う場合もあって。
新井:もしかしたら、毎年同じ時期に「こどもクリエイティブック」を子どもに描いてもらったら、その変化や成長を楽しむこともできそうですね。
原:実は「この頃、こんな絵を描いていたね」という思い出をとっておけるように、表紙を開いてすぐのページに、名前と年齢を書くスペースを設けてあるんです。だから毎年描いたら、違うおもしろさがあるなと感じました。
新井:今日は、ゆっくりじっくりお絵かきに取り組む様子を見ることができて、本当によかったです。絵を描く過程で、お母さんの声かけによっても、全然違う引き出しがあることがわかりました。親にとっては「子どもがこんなことできたんだ」という発見があったし、子どもたちも自分が考えていることをちゃんと話してくれて、お互いに発見があるようなコミュニケーションがとれる。普段の親子の関係性が、いろいろ絵に表れるんだなと思いましたね。
――「こどもクリエイティブック」を親子で楽しむコツは?
新井:やっぱり会話だと思います。大人が見て子どもに感想を聞いたら、子どもが意見を言うというやりとりがあるからこそ、楽しめる。ひとりで黙々とやることもできますが、やっぱり話ながら楽しくやったほうがいいですね。一方的な読み聞かせよりも、それ以上に踏み込んだコミュニケーションをとれるツールだと感じました。親子でそれぞれ描いてみるのもいいかもしれません。あと、「こどもクリエイティブック」の絵を全部描こうと思ったら、意外と時間がかかるんだなって(笑)。良くも悪くも、ゆっくりたっぷり遊べそうですね。
――40分くらいかけて、ひとり6ページくらい描きました。
新井:このペースだと、完成までたっぷり遊べるし、もう完成させなくていつまでも続けられる楽しさもありそうですね。これは、実際にやってもらう姿をみて、わかったことです。僕たちも初めての試みだったので、子どもたちが楽しんでいる様をそばで見ることができて、本当に良かったです。
――親自身が、絵を描くのが苦手な場合はどうしたらよいでしょうか?
新井:逆に親御さんがそんなに上手じゃないほうが、余計に子どもたちのやる気がわくので、心配しなくて大丈夫だと思います。
――最後に、絵本ナビ読者にメッセージをお願いします。
新井:描くのが苦手というか、あまり好きではないお子さんも、自分で描くだけじゃなくて、簡単なところから順を追って、だんだん自分の絵を出せるようになるかもしれません。一度チャレンジしてもらって、もしかしたら絵を描くことが好きになるかもしれない。なのでぜひ一度楽しんでいただきたいです。
――ありがとうございました。
取材協力:Z会ソリューションズ
撮影:大塚成一
ワークショップ運営:絵本ナビ
構成・執筆:中村美奈子(絵本ナビ)
「クリエイティブック」オリジナル賞品が当たる! イラスト応募キャンペーン開催予告
「こどもクリエイティブック」シリーズの発刊を記念して、みなさんのイラストを大募集します!
ぜひハガキにイラストを描いてお送りください。
抽選で「こどもクリエイティブック」オリジナルの素敵なプレゼントが当たります。
応募作品の中から抽選で毎月プレゼント!
◆絵本作家賞 計5名
絵本作家・新井洋行氏がオリジナリティあふれる絵を選び、コラボイラストに!
そのイラストをオリジナルポストカードにしてプレゼントします!
◆クリエイティブック賞 計40名
オリジナルのスケッチブックを抽選でプレゼント!
※画像は変更の可能性があります
おまけ企画「こどもクリエイティブック」を絵本作家が描いてみた!
「『こどもクリエイティブック』で、ほかの絵本作家さんともコラボできたらうれしいな」という新井さんの呼びかけで、あくざわめぐみさん、市原淳さん、サカぐチタカユキさん、さとうまさのぶさん、中垣ゆたかさん、maruponさん(50音順)が素敵な絵を描いてくれました!
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