ひたむきな人には道をゆずる。 2018年6月20日
「ヤクルトさん、きましたー」
オフィスの中で響くこの声に、まっさきに反応して席を立つ。なぜなら、買いに行くのが嬉しいから。それに、油断しているとすぐに売り子の方がいなくなってしまうから。どうしても飲みたいって訳でもないのですけれどね。その瞬間のウキウキが好きなのです。ちっぽけな話です。
ふと、右隣の席の人に聞いてみます。
「チラッと見かけたら、必ず追いかけてしまう程好きなものってある?」
その人はちょっと考えてから答えます。
「うーん…かき氷かな。かき氷のためなら、どこにでも行っちゃうな」
確かに夏になると、どこかしらでかき氷を食べたという報告が入ってくる。お腹が弱いくせに、氷ばっかり本当によく食べている。
左隣の席の人にも…というか、聞かなくてもすぐわかる。
「柴犬。」
なぜなら、机の上が「柴犬」だらけだから。聞くと止まらなくなるのは目に見えているので、聞くのはやめておきましょう。
そして思うのです。彼女たちは小さい頃、きっとこんな女の子だったんじゃないかなって…。
にじさん にじさん どこいった
「あっ にじさんだ!」
みずたまちゃんが見つけたのは、開け放った窓の外にちらりと見える綺麗な虹。
「にじさん にじさん あそぼうよ。」
みずたまちゃんは、虹が大好きなのです。急いで外へ飛び出し、虹の方へ駆け出していきます。さあ、追いつくかな? みずたまちゃんは「にじさん」と一緒に遊べるのかな?
「ねえ、にじさんは どこか しってる?」
追いかけていく途中、みずたまちゃんは虹色のねこやさかなや鳥たちに出会います。みんな、とにかく全身が綺麗な虹色。聞けば、みんな「にじさん」と一緒に遊んだって言うのです。いいな、いいな。みずたまちゃんは必死に探します。ところが、向こうの空から怪しい黒雲が近づいてきて…。
大好きな「にじさん」に会いたい一心で、ひたむきに走るみずたまちゃん。なかなか追いつけなくたって、思わぬ雨が降り出したって、一回家に戻らなくちゃいけなくたって、みずたまちゃんのその顔はとっても嬉しそう。だってね、遠くに見える「にじさん」のその姿。見たこともない形をしているんですもの! とんだり、およいだり、のびをしたりする…なんて言うんだもの!! ああ、絵本を読んでいる私だって「にじさん」と一緒に遊びたくなってきちゃった。
「うきうき、キラキラ、ピチャピチャ、ポツポツ、ふんわり」なんて表現したらいいのかな。かわかみたかこさんが楽しそうに描く、雨上がりの「にじさん」との世界。鮮やかで、眩くて、美しくて…!
良かったね、みずたまちゃん。その嬉しい気持ち、みんなにもちょっとおすそわけしてね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
嬉しくって、近づきたくて、走り出す!
こんな経験を一度でもしたことがあるってことが、とても大事。
ひたむきって、美しい。夢中になるって、キラキラしてる。
だから周りの人は道をゆずってしまう。
邪魔をしてはいけない、って思っちゃう。
そういうのって理屈じゃないですよね。大人になったって同じだと思うのです。
今、私が見かければ必ず追いかけて行ってしまうものと言えば……
結構あるのでそこは省略しておきます。欲張りな人は応援されませんしね。
合わせておすすめ! かわかみたかこさんの作品
磯崎園子(絵本ナビ編集長)
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |