【編集長の新宿絵本日記】なんだか眩しいその姿は…! 2018年5月8日『おもいついたら そのときに!』
一人暮らしの母が電話口でいつも、
「もう、忘れっぽくなっちゃって。やっぱり歳とるとダメね」
なんてしょぼんとしているから、心配して実家に帰ってみると…
なにやら早朝からバタバタ音がする。
慌てて外に出てみると、普段着にエプロン姿の母が、帽子をかぶってお庭の塀の上に。大きな枝切りバサミを持って、格闘中なのです。
「あそこの枝が切りたくて!」
それはそうかもしれないけど。危なっかしくて見てられない。
父に任せっぱなしだったお庭の手入れ。どうやら自分でやってみたら止まらないのだとか。天気が良くて、時間があるとムズムズしちゃう。ましてや、切らなきゃいけない枝を見つけると、今朝のように頑張ってしまうらしい。
なんだか眩しいその姿は、まさに…絵本『おもいついたら そのときに!』のおばあさん。もちろん、こんなにスーパーおばあさんではないですけれどね。
小さな丘の上の小さな家に、おばあさんとねこ、ひとりといっぴきが暮らしています。今日はいい天気。外へ出てみると、おばあさんの育てたチューリップが見事に咲いています。… と、ここまでは普通のおばあさんの普通で素敵な暮らし。
「わたしは はなづくりの てんさいだわ」
その瞬間、おばあさんの頭の中で何かがピカっと光ります。
そして、こう言うのです。
「おもいついたら そのときに!」
バタバタと動き出すその様子に呆気にとられていると、その間におばあさんはどんどん行動して、実行していきます。それからも、おばあさんのピカッは止まりません。自分のお料理にうっとりした時、自分で作ったドレスの出来上がりにうっとりした時、自分の髪を見事にゆいあげた時…その度にこう言うのです。
「おもいついたら そのときに!」
その行動力の積み重ねで、何が出来上がったかというと…すごい事になっていますよ。おばあさん、大丈夫!?
この勢い、この実行力、この破天荒さ。おばあさんがとにかくかっこいいのです。それは子どもたちの目にだって同じに映るはず。やれば何でもできちゃうって感覚、絵本だからこそ味わえるものですよね。
さてさて、おばあさんの「おもいつき」の連続から生まれたのは、なんと小さな町! なんだかとても居心地が良さそうですよね。明るく元気な気持ちになれる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
「ちょっとまって、ちょっとまって」。
慌てて一緒に高い所用の枝切りバサミを買いに行き、脚立を用意して、気になる所の枝を次々に切っていく。あれ?楽しい…。こんな便利な道具があるなら、なんでもっと早く買わなかったんだろう。気がつくと、すっかり夢中になっているのは私の方。「おもいついたらそのときに」の勢いは上手い具合に周りに伝染していくのです。
天気も抜群、道具も揃い、腹ごしらえも済まして。「今日、一気に全部やっちゃおうか!」目をキラキラさせながら私が言うと、母はひとこと。
「いや、今日はもうおしまい」
…え?
時間とパワーの配分もバッチリなのです。意外としっかりしている!?やっぱり、いつだって少しだけ私の一歩先をいく母なのでした。
こんなおばあちゃんになりたい!
この記事が気に入ったらいいね!しよう ※最近の情報をお届けします |