vol.3 後には引けない絵本『ぼくんちカレーライス』
どんなにグルメな人でも、どんなにお寿司が好きな人でも、少食な子でも、食いしん坊な子でも、「今日の晩ごはん、なにがいい?」そう聞かれた時。
もし、ご近所の家から“カレー”の匂いがしてきたら…
誰かが美味しそうに“カレー”を食べていたら…
「うちは今日、カレーなんだ」って自慢されたら…。絶対にこう答えるでしょうね。
「カレーライス!」
そして、いったんカレーが食べたいと思ったらおしまいです。口の中が全力でカレーの味を欲してしまうのです。
私も全く同じです。「今日はカレーライスにしよう。」そう思って、材料を切って、煮込んで、アクを取って、さあルーを入れよう!と思ったらルーがない……。(そういうわかりやすいミスをするんです)この絶望感と言ったら。普段は諦めがいいクセに、迷わず上着を引っかけて、すぐにルーを買いに行くほどです。
皆さんだってそうでしょう。ランチにカレーのつもりだったのに、お気に入りのお店が閉まっている。いやいやいや、探しますよね。カレーが食べられるお店。
カレーライスの持つ、この得たいの知れない強力な魔力はなんなのでしょう。しかも、この魔力はどんどん伝染していくのだから手に負えない。そんな「カレー食べたい病」に町ごとかかってしまったという現象を描いているのがこの絵本。
「きょう ぼくんち カレーライス!」
なんだか急にカレーライスが食べたくなってきた時、「きょう ゆうごはん なにが いい?」ってママが聞くから。ぼく、言っちゃうよね。
「カレーライス!」
八百屋さんで会ったくんちゃんに「きょう ぼくんち カレーライス」って自慢したら、くんちゃんも食べたくなっちゃって、聞いていた八百屋さんもなんだか食べたくなっちゃって。お肉屋さんも、つけものやさんも、曲がり角であった裏のおばあちゃんにまで「なんだかカレーライスが食べたくなっちゃう」気分が伝染していきます。とうとうレストランにも「カレーライスプリーズ」って注文が入り…!?
ああ、わかりますよね、この現象。そろそろ食べたいなあと思っていた頃に「カレーライス」っていう言葉を耳にしてしまったら、もう頭の中にはカレーの味が広がってしまって止まらないのです。これを「カレー食べたい病」というのでしょうか。強力な伝染力です。
そして最後の一押しが、どこかの家から漂ってくる「カレーの匂い」。もう、この頃には絵本に登場するほとんどの人が病にかかって、うっとりした顔をしています。
「みんながカレーを食べたくなる」というシンプルなお話なのだけれど、つちだのぶこさんが描く商店街や食卓はなんだか懐かしく、ユーモラス。どのページにもずっと眺めていたくなるような情報がたっぷり詰まっていて、何回読んでも飽きることはありません。そして、なにより“ぼく”のうちのカレーライスが最高に美味しそうなのです!
この絵本は、「今日はカレーにしようかな」って思っている日に読むのがオススメです。だって、読んだ後に本当にカレーを食べられる幸せっていったらないですよね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
どうでしたか?
……もうおわかりでしょう。この絵本は、いったん読んだら「後には引けない」のです。
今日のゆうごはんは「カレーライス」で決まりなのです。恐ろしいことです。あ、ルーを買って帰るのを忘れずにしてくださいね。
今日、カレーが食べたくなる絵本!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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