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おいしい絵本。

vol.8 知れば知るほど遠くなる…

 

「どんな食べ物が好き?」

 

定番でありながら、究極でもあるこの質問を受けた時、悩みに悩んだ末、こう答えます。

 

「うどんが好き。」

 

麺類は全部好き。でも、何がなくなったら困るか…と考えれば、やっぱりうどんです。ラーメンやスパゲッティは、どんなお店で食べても大体美味しいし、間違いない。自分で作っても美味しいし、信頼感が別格。ところがうどんに関しては、自分にぴったりくるものにはなかなか出会えないのです。どうしてなのでしょう。もちろん全国の美味しいうどんを食べるのは、人生の楽しみ。でも、「あと一歩!」とか生意気なことを言ってしまうのです。

 

だから、日頃から考えに考えます。
「私は、うどんの何が好きなのか。」
めんは弾力がありすぎても、やわらかすぎでも何か違う。のどごしがいいってどんな感じ? つゆの味は濃すぎても違うし、薄いのも違う。めんに染み染みなのがいい。一人きりで食べている方が美味しいし、作ったら作った分だけ食べたい。熱いよりも、なんなら少し置いてぬるめの方がしっくりくる。お店のうどんより、冷凍のうどんが美味しく感じてしまう。
…なんだか、好きすぎてめんどくさいことになっているみたい。うどんのことを知れば知るほど、求めれば求めるほど「究極のうどん」から遠ざかっていくようです。

 

うどんが好き、うどんが食べたい。
突き詰めていくと、そこにいたのは…うどんかいじん!?

うどんドンドコ

うどんドンドコ

ぼくが夜中にトイレに起きた時、窓の外に見えたのは……怪しくてヘンテコリンな姿。
「あ、おとうさんが むかし、うどんを たべたっていってた…うどんかいじんだ!」
確かに白くてうずを巻いているその顔はうどんです。

ぼくが慌てて追いかけていくと、「てんぷらうどんのなみふたつ、おまちどおさま」 古川さんちのねこのミャアとニャアに出来たての熱いうどんを渡しています。どうやら、うどんかいじんは出前中。大きな釣鐘に化けたたぬき、きつねのタクシー、大きな鶴…。次から次へと変わったお客のところへうどんを届けにいきます。

ぼくと、のらねこのねこ吉は、自分たちもうどんを食べたくて、思わずうどんかいじんの後についていってお手伝い。なにしろ、次のお客はうどん二ひゃくです! ガチャガチャ、ドンドコ、ズルズルドン、シューシュー。バタバタで大騒ぎな時間が終わって、うどんも届け終わると、ようやく一息。そして…?

突然現れた「うどんかいじん」なるものに、目を奪われているうち、奇天烈な展開にどんどん巻き込まれていくこのお話。「ぼく」と一緒にふぅー…と一息ついていると、なんだか今度は強烈にうどんが食べたくなってくるのです。

これは夢なのか、現実なのか。「うどんかいじん」は、お腹が空いているから登場したのか、うどんが食べてもらいたいから姿を見せたのか。伝わってくるのは、みんなの食へのパワー。みんながうどんを食べたがっています。山崎克己さんによるナンセンス絵本の世界。ぜひうどんを食べる時のような勢いで楽しんでみてくださいね。

 

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

「うどんが好き」とは言うけれど、語れば語るほどわかるのは、どうやら自分はグルメとは違うってこと。私は一体うどんの何に惹かれているんでしょうね。
 

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部

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