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【読んでみた】戦いの記録ではなく、人々の暮しの中の記憶や思いを知ること。『戦中・戦後の暮しの記録』

 

「ねえ、ちょっと着てみてくれないか」

 

この言葉は、戦時を生きた女性、森定子さんのご主人の、亡くなる前の一言です。食べるものもなくなり、定子さんの大切な花嫁衣装を売りに出す事にした前日。ご主人は病床からそう言うのです。

 

病気で苦しみ、辛い時制だからこそ、最後に一目幸せだった頃の象徴のような妻の花嫁姿を見たかったのでしょうか。そんな一言が印象的な、戦時中の暮しのお話。

朗読会で出会った、戦争を考える本

先日、とある書店で開催された朗読会へ行って来ました。会社の友人に声をかけてもらい「女優さんの朗読を聴いてみたいな」という軽い気持ちでお邪魔した会でした。

 

朗読会はとても素敵なものでした。しかし最後に心に残った思いは、題材への関心。

それもそのはず。この朗読会は、私達が忘れてはいけない「戦争」の記録を扱った書籍の出版記念会だったのですから。

 

冒頭のお話は、暮しの手帖社より刊行された『戦中・戦後の暮しの記録  君と、これから生まれてくる君へ』という書籍の一編です。

 

戦中・戦後の暮しの記録  君と、これから生まれてくる君へ

戦中・戦後の暮しの記録 君と、これから生まれてくる君へ

『暮しの手帖』創刊70周年記念出版
あの日々をどう生きたか。手記、手紙、絵、写真――157の体験
これが戦争なのだ。

『戦争中の暮しの記録』(1969年刊)から約50年――。
ふたたび『暮しの手帖』は、戦争体験の手記を募りました。
今回は、戦時中の記録に加え、戦後の混乱期のできごと、そして戦後生まれの方には、体験者からの「聞き書き」での投稿も呼びかけました。この募集に応じて届けられた2390通の応募作品から、157点を選び、まとめたのがこの一冊です。本書は、庶民の戦中・戦後の暮らしがわかる貴重な記録であり、あの戦争を生き抜いた方々からの、いのちのメッセージ集です。

戦争体験から目を背けていた人にこそ読んでほしい一冊

今もこれからも、ずっと伝えていかねばならない、先達の貴重な体験談。

終戦から73年を迎えた2018年に刊行するにあたり新たに投稿を呼びかけたところ、あの頃には書くことが出来なかった思いや記憶が、なんと2390通も集まったそうです。

 

戦争を知らない時代に生き、そして耳に聞く戦争の怖さから戦争と言うものを避けに避けて30年以上生きてきた私。でも、出会ってしまったこの一冊。

 

戦争の本と言っても、主人公が活躍する物語ではありません。戦争がどんな物なのかを伝える本でもありません。ただ戦時を生きた方々の、今でも心に残る当時の暮しの中の記憶、思いが綴られた一編の集まりです。もしかしたら、戦いの記録ではなく「暮しの中の思い」だからこそ、少しだけでも身近に当時の事を受け止められるかもしれない。亡くなる直前、妻の花嫁姿を見たいと願った夫の思いは、戦時下でなくても共感出来る感情だとも思う。

話は変わりますが、6月に亡くなられた絵本作家かこさとしさんは、戦後、大人が敗戦の責任をなすり付け合う姿に失望し「子どもの未来のために生きる」と決意され、沢山の素晴らしい絵本を生み出されました。

 

そんな思いがこもった絵本と育ってきた私達は、いま何が出来るのでしょうか。戦争を2度と起こさない為には、戦争を知ることを避けていてはいけない。戦争を体験した方々が残された言葉を、次の世代に少しでも引き継いでいくことが、もしかしたら恩返しになるのかもしれない。そう思ったりもするのです。

この本、そして50年前に刊行された前作に託された編集者の方々の思いも、とても重く、そして大切な呼びかけとなっています。最後に、書籍の冒頭にある編集者の方の言葉を一部添えさせていただきます。

「いま、君は、この一冊を、どの時代の、どこで読もうとしているのか、それはわからない。君が、この一冊を、どんな気持ちで読むだろうか、それもわからない。しかし、君がなんとおもおうと、これが戦争なのだ。それを君に知ってもらいたくて、この貧しい一冊を、のこしてゆく。」

 

『戦争・戦後の暮しの記録 君と、これから生まれてくる君へ』 冒頭の編集者の言葉より 一部抜粋

山本寛子(絵本ナビショップスタッフ)
掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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