【ランキング】2021年3月の児童書売上ランキングBEST10は?
今、絵本ナビで売れている児童書は? 話題になっているのはどんな本? なかなか見えづらい児童書の売れ傾向ですが、少しでも旬の情報をお伝えできるよう、1ケ月分のランキングを発表していきます。
さて、2021年3月のランキングにはどんな本が入ったのでしょう? 今年の3月は、東日本大震災から10年を迎えた節目の年ということもあり、絵本ナビでもテーマを作成し、紹介に力を入れてきました。そのテーマで紹介した本が今回上位にランクインしております。他はいつもの人気作品が目立ちますが、第7位からは目新しいラインナップもちらほら。記事の最後には、3月のおすすめ新刊や新刊ニュースなど、児童書の情報満載でお届けします。
2021年3月の児童書売上ランキングBEST10【2021/3/1~3/31】
第1位は、展覧会開催で盛り上がったアーノルド・ローベルの『ふたりはともだち』
みどころ
仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。
そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。
春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?
がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。
続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。
すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。
悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。
国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。
シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
クリアファイルがついた箱入り4冊セットもおすすめ。
新刊や展覧会関連本も発売となりました。
東日本大震災から10年目を迎えた今年発売となった、子どもたちに手渡したい1冊が第2位に。
みどころ
豊富なカラー記事とデータが満載。表紙を見て、一見、難しいのかな? 長いのかな? と思った子もいるかもしれませんが、本を開いてみると文章がひとりひとりに優しく語りかけるように紡がれていく、とても読みやすい1冊です。
「この本を手に取ってくれたきみへ」のメッセージの中に、「2011年の3月11日に大きな地震と津波が起こりました。その時きみは、何歳だったかな。」の語りかけがあり、この本が小学生や中学生に向けて書かれたことが分かります。ソフトカバーで軽く、難しい内容はほとんどありません。ひとりで読むとしたら、小学校4年生ぐらいからでしょうか。すべての漢字にルビも振られています。
本書は5章に分かれているのですが、第1章は、宮城県石巻市にある「石ノ森漫画館」での3.11からの5日間がまんがで描かれています。まんがを描かれているのは、漫画家の細野不二彦さん。最初がまんがから始まるので、本を読むのがちょっと苦手という子でも、無理なく読み進めていけそうです。
つづく第2章は、津波で大切な娘さんを失った中学校教師の平塚真一郎さんの「天国の笑顔のために」。とても胸が詰まり、読み進めるのがつらい場面もありますが、ここに書き紡いで下さったことに感謝すると共に、心に残ることばとたくさん出会うことができます。
第3章は、東北を代表する新聞社「河北新報社」が集めた被災地の「声」。41人の方それぞれの震災体験とそこからの日々のこと、読者へのメッセージが伝わります。それぞれに大きな困難や悲しみに見舞われながらも、周りの人々に支えられ、前に進んできた歩みが力強く感じられます。
第4章は、〇〇で見る3.11ということで、「新聞で見る3.11」「地図で見る3.11」「数字で見る3.11」「写真で見る3.11」……というように、とても分かりやすく震災に関するデータがまとめられています。
そして最後の第5章は、観光学者の井出明さんによる「死の意味と復興の力強さ」と題したまとめが語られます。
この章では「なぜ震災を学ぶのか」、その理由がストンと胸に落ち、さらに防災の世界でしばしば語られるという「2度目の死」ということについてじっくりと教えて下さいます。
震災の日のこと、大切な人を失った悲しみ、命のとらえ方、若い人に伝えたいそれぞれの方からのメッセージ‥‥‥。この本はたくさんのことを教えてくれますが、一貫して伝わってくるのは、命の大切さ、かけがえのなさです。
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新一年生にもおすすめのたんてい物語。ネートと一緒にナゾを解こう!
みどころ
9歳のネートは探偵です。
今日もネートの元に1本の電話が入りました。
仲良しの女の子アニーから、なくなった絵を探してほしいとの依頼です。
すぐにアニーのところへ駆けつけるネート。
まず、アニーの話をじっくり聞き、部屋の中をくまなく調べます。
次に、その絵を見た他の人たちー仲良しのロザモンド、弟のハリー、犬のファングについて丁寧に調査していきます。
はたしてネートは、アニーのなくなった絵を発見することができたのでしょうか。
一見、すぐに解けそうと思わせておきながら、意外になかなか解けないナゾの面白さと、ネートのツボを押さえた探偵ぶりに子どもも(大人も!)たちまち心を掴まれてしまいます。
また9歳という年齢でありながら、どんなナゾが来ても常に落ち着き、周りから頼りにされているネート。子どもたちは、自分と同じぐらいの年齢の子の活躍とカッコよさにたちまち憧れてしまうのではないでしょうか。一方でパンケーキが大好物で、気が付けばいつもパンケーキを食べているところには親しみを感じてしまいますね。
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全17巻のセットも好評販売中です。
第4位 『エルマーのぼうけん』
一年を通して人気のロングセラー。50年以上も読み継がれている名作です。
みどころ
さあ、リュックサックに道具をつめて、エルマーと一緒に冒険の旅に出発しよう!
これは僕の父さん、エルマーが小さかった頃のある冒険のお話です。ある雨の夜、エルマーは、年取ったのらねこから、「どうぶつ島」に捕らえられているかわいそうなりゅうの話を聞きます。りゅうは、空の低いところに浮いていた雲から落っこちてきたちっちゃな子どものりゅうで、ジャングルの猛獣たちに捕まえられて、川を渡るために働かされているというのです。
エルマーは、すぐに助けに行こうと決心します。早速ねこにどうぶつ島のことや、持っていくものを教えてもらい、旅の準備に取り掛かります。エルマーがリュックサックにつめたのは、「チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブいりはみがき‥‥‥」などなどたくさんの道具。そして「どうぶつ島」へと繋がる「みかん島」行きの船に忍び込んだエルマーは、六日六晩たってようやく「みかん島」へ。ここで食料のみかんをリュックいっぱいに詰め込んで、夜の間に「どうぶつ島」へと渡ります。
「どうぶつ島」へ着くと、早速りゅうがつながれている川を探しに、気味の悪いジャングルの中を歩いていくエルマー。ジャングルでは、おかしな喋り方をするねずみや、うわさ好きのいのししに出くわしたり、とら、さい、ライオンなど恐ろしい猛獣たちにつぎつぎと出くわします。猛獣たちはたいていお腹をすかせていて、食べられそうになることもしばしば。さてエルマーは、どんな風に猛獣たちの危険をくぐり抜け、どうやってりゅうを助け出すのでしょうか?
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「エルマーのぼうけん」シリーズは全3巻。続きもぜひ!
第5位 『なぞなぞのすきな女の子』
なぞなぞの楽しさがたっぷり詰まった1冊
みどころ
なぞなぞ遊びは好きですか? 答えるのも楽しいけれど、なぞなぞを出すのも楽しいですよね。特に答えられないような、なぞなぞが出せたら!
この本は、そんな、なぞなぞが大好きな女の子が主人公のお話です。女の子は、一緒に遊べるお友達を探しに森に出かけ、はらぺこオオカミと出会います。お母さんとなぞなぞ遊びをいつもしている女の子は、オオカミにぴったりの、何やら長いなぞなぞを出しました。オオカミは一生懸命考えるのですが、長いなぞなぞに、答えがいっぱい出て来てしまい…あらら? なぞなぞの答えは一つ、ですよね。さあ、オオカミは答えられるでしょうか?
いい考えを出すには、手を頭にあてて目をつぶって考えるといいのよと、アドバイスする女の子。オオカミが目をつぶって考えているうちに、逃げてきてしまうなんて、何て頭がいいんでしょう! 間が抜けたオオカミとおりこうな女の子の楽しいお話が2話入っています。オオカミの表情がユーモラスで、くすくす笑ってしまいそうですね。(そうそう、女の子のお母さんのなぞなぞの出し方もとてもすてきなので、こちらにも注目下さいね。)
本の見返しにも、楽しいなぞなぞがたくさんのっているので、ぜひお子さんと挑戦してみてくださいね。このお話はもともと、作者の松岡享子さんが、人形劇のために作ったそうですよ。手袋や布でオオカミ、女の子、うさぎなどを作って演じてみても、楽しそうですね。
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第6位 『番ねずみのヤカちゃん』
みどころ
ドドさん夫婦の家の壁と壁のすき間に住む、おかあさんねずみと、四ひきの子ねずみ。そのうち四ひき目は、「やかましやのヤカちゃん」とよばれていました。
どうしてこんな名前がついたかって?
それはね…このヤカちゃん、とてつもなく声が大きかったからなんです。
たとえばこんな風。おかあさんねずみが、ドドさん夫婦に存在を気づかれないよう「けっして音をたててはいけない」と注意している時も「うん、わかったよ、おかあさん」と答える声のなんと大きいこと!他にもおかあさんねずみの注意に対して、全部うんと大きな声で答えるヤカちゃんのお返事の繰り返しが何とも愉快でたまりません。でもお返事のしかたから、ヤカちゃんがとっても素直でまっすぐで良い子だということが伝わってきて、どんどんヤカちゃんを応援したくなってしまいます。けれどもやっぱりその大きな声のせいで、ドドさん夫婦の家にねずみがいることがばれてしまって…。
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第7位は同数の売れで4タイトルが並びました。
第7位 『チュウチュウ通りのゆかいななかまたち 1番地 ゴインキョとチーズどろぼう』
みどころ
絵本の次の段階に何を読んだら良いか迷ったら、まずこちらの「チュウチュウ通りのなかまたち」シリーズ(全10巻)をおすすめします。
舞台は、ネコイラン町のチュウチュウ通り。1番地から10番地まで、それぞれ個性的なハツカネズミが住んでいます。1巻目は1番地に住むおじいさんネズミ:ゴインキョのお話、2巻目は2番地に住む古道具屋さん:クツカタッポのお話……10巻目は10番地に住む郵便屋さん:スタンプのお話と、10匹のハツカネズミを主人公にした楽しい事件のお話が10続きます。
1巻目のゴインキョは、お宝をどっさり持っているおじいさんネズミ。ネズミのお宝といったら……?!そう、それは金色にかがやくチーズ!ゴインキョは、そのチーズを眺めたり、においをかいだりするのが大好きで、でもひとりじめせずに友だちにごちそうすることも好きで、ゴインキョ家のチーズ・パーティは、チュウチュウ通りで有名でした。
しかしある日、ゴインキョの元に「きんきゅう」と書かれた、どろぼうへの警告の手紙が舞い込みます。宝物のチーズがあぶない?そしてゴインキョの身にも危険が!?
(続きはコチラ>>>)
第7位 『おはなし きょうしつ』
みどころ
学校に通う子どもたちが教室でふだん目にしている、たくさんの道具やものたち。
ページを開くと、なにやら楽しそうなひそひそ声が聞こえてきますよ。
ちょっと聞いてみましょう。
「ふでばこ」―ふでばこがしたじきに、もんだいを出しています。
「さて、もんだいです。きょう、ぼく ふでばこの なかには、なにが はいっているでしょうか?」
したじきはすぐに こたえます。「えんぴつと けしごむと ものさし、それから、あかえんぴつも はいってる」
「せいかいです。でも、まだ、なにか はいっています」…。
(さて何がはいっていたのでしょうか?)
「うわぐつ」―うわぐつの かたほうが いいました。「あした、おやすみだよね」「うん、そうだよ」もうかたほうが答えると、
「もうすぐだね。もうすぐしたら、いえに かえって きれいに あらって もらえるんだね」「たのしみだね」…。
(うわぐつたちは、このあと無事に洗ってもらえたのでしょうか?)
教室で使われているものたちがどんなことを考えているのか、それぞれの特徴がよく表れていて、なるほど!と思ったり、くすっと笑ってしまったり。(続きはコチラ>>>)
合わせて読んでみてね。
第7位 『クレヨンマジック』
みどころ
「もしきみがたいくつをしているのなら、いいことをおしえてあげましょうか。」
そんな風に呼びかけられたら、好奇心いっぱいの子どもたち、いや大人だって、
気になって仕方なくなってしまいますよね。
さらに表紙を見ると、紙ひこうきに乗った男の子と黒猫が、白い柱に囲まれた
現実ではないどこかに迷いこんだようで、不思議な雰囲気がぷんぷんしてきます。
さあ!どんどん胸がワクワクしてきたら、早速本のとびらを開いてみましょう。
登場したのは、雨降りの中、どこかに出かけるのも面倒で、遊ぶ友達もいなくて
窓の外をぼんやりと眺めている男の子。
どこからか声がしてきます。男の人の声でしょうか?それとも女の人の声?
(続きはコチラ>>>)
第7位 『ジェインのもうふ』
他、新刊の中から売れた作品、話題となった作品をご紹介します。
世の中のあらゆることをコントロールしているのは、数学? 入学・進級に向けて今人気の1冊
出版社からの内容紹介
算数や数学に対するきみの考えがすっかり変わるかもしれないよ!
きみは気づいていないかもしれないけれど、暗号を解くことからテレビ番組で賞品を当てることまで、そして、彗星の予測から犯罪事件の解決まで、世の中のあらゆることをコントロールしているのは、数学なんだ。
この本では、とっても重要な数学の考えや数学にかかわる発明が「どうやって生まれたのか」を探り出し、「どのように利用するのか」を説明して、ピラミッドの測り方から大金持ちになった方法まで、「どんなことに役立っているのか」を見つけていくよ。
算数・数学の面白さがわかる絵図鑑。
東日本大震災から10年を考える新刊。表紙の美しい写真が目を惹きます。
出版社からの内容紹介
東日本大震災から10年をむかえる福島県。地震と原発事故という二重の災害ののち、人びとのくらしはどのように変わったのでしょうか。「ランドセルは海を越えて」の写真家・内堀タケシが、震災後の福島の人びとのようすを取材し、その表情や風景を、福島の人びとの声とともに伝える写真絵本。
人気絵本シリーズ「ノラネコぐんだん」から登場した読み物シリーズ第2弾!小学2年生ぐらいから。
出版社からの内容紹介
宝物を詰めた袋を背負い、あちこちの名物魚料理を味わいながら世界を旅していたノラネコぐんだん。
あるレストランで、「最近、人喰い鬼が子どもをさらって食べているらしい」という恐ろしい噂を耳にして……!?
「初めての読み物」に最適な、大人気冒険物語シリーズ第2弾!
こちらが第1弾。本格的な冒険が繰り広げられます。
最後に2021年3月の新刊の中から、おすすめの作品をご紹介します。
2021年3月のおすすめ新刊情報(小学生から中高生向けの新刊です)
また新刊ニュースとして、ポプラ社から児童文庫の新レーベル「ポプラキミノベル」が創刊となりました。 小学校中学年から高学年ぐらいの子どもたちが楽しく読める児童文庫の登場です。「どこよりも名作が充実!」を掲げ、従来の古典名作以外に、今まで児童文庫で紹介されてこなかった「新しい名作」も積極的に刊行されるとのこと。また、映画や舞台、近現代の小説からも古今東西の傑作が登場予定だそう。他、ポプラ社おなじみの人気作家さんの新作や、ポプラ社以外で活躍中の作家さんによる、創作ジャンルも充実していくとのことで、どんな作品が登場するのか楽しみですね。
「ポプラキミノベル」3月発売の作品はこちら
秋山朋恵(絵本ナビ 児童書担当)
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