【お知らせ】月刊「こどもの本」2021年10月号・磯崎編集長の連載「絵本と年齢をあれこれ考える⑥」公開中!
磯崎編集長連載「絵本と年齢をあれこれ考える」第6回公開中!
日本児童図書出版協会発行の月刊誌、月刊「こどもの本」。協会に参加している児童図書出版社43社の新刊情報や、児童書にまつわるエッセイや評論を楽しめます。
その月刊「こどもの本」で連載中なのが、磯崎編集長の連載コラム「絵本と年齢をあれこれ考える」。タイトル通り、年齢別に楽しむ絵本についてのあれこれを、毎月正面から向き合いながら語っています。今回2021年10月号が販売開始、web版も公開中です!
【最新号】 月刊「こどもの本」2021年10月号
定価(本体150円+税)
定期行動のお申込み>>>
・心にのこる一冊
・私の新刊
・なになになあに?〜おくはらゆめなりの哲学〜⑩
・なぜ?どうして?日本の性教育④
・新聞書評に紹介された本
・絵本と年齢をあれこれ考える⑥
・我が社の売れ筋 ヒットのひみつ㉗
新刊案内127点
表紙のことば たけがみたえ
表紙デザイン 中島かほる
第6回のテーマは…空想と現実が溶け合って(3歳と絵本・前編)
大人になり、ふと手にした絵本を開いて驚くことがある。
「この景色、知っている」
自分の記憶を丁寧にたどっていくと、かすかに浮かび上がってくる断片的な光景。それは目の前に広がる絵本の中の場面と同じような、少し違うような。だけれども、確かにここを知っている。思い返せば、おそらく3歳の頃に読んだ絵本。もっと後だったかもしれないが、この年齢になってくると、出会った絵本の記憶がこうして少しずつ自分の中に残っていく。そして実際の絵の印象と大きく違っていたり、一部分だけを突出して記憶していたりする。この現象こそ「3歳と絵本の関わり方の面白さ」とつながってくるのである……(続きはこちらから↓)
絵本を「絵本の中の世界」として『てぶくろ』
降りつづく雪の中、ぽつんと落ちていたのは片方だけの暖かそうな手袋。最初に見つけたのは小さなねずみ。彼女は中にもぐり込み、言うのです。
「ここで くらすことに するわ」
確かに、ねずみが暮らすのにはいい大きさ。居心地も良さそうです。そこへやって来たのは、かえるさん。中に入りたいと言います。手袋の中にはねずみとかえるの二ひき。確かにこれも悪くない。ところが今度はうさぎがやってきて、言うのです。「ぼくも いれてよ」あっという間に三びきです。大丈夫かしら…。これで終わることなく、さらにやってきたのはきつねです。さらにさらに、おおかみも、いのししも、しまいには驚くほど大きいあの動物まで! いったい、そんなことって可能なの!?
ウクライナ民話から生まれた絵本『てぶくろ』は、日本でも1965年に内田莉莎子さんの翻訳で発売され、今でも変らず子どもたちに読み継がれている傑作です。
その魅力はいくつもあります。まずはなんといっても、少し不思議な展開です。最初はただの手袋だったはずなのに、「いれて」「どうぞ」の繰り返しにより、子どもたちの心にはドキドキが生まれてくるのです。「ほんとに入るのかな?」「ちょっと怖そうなきつねがやってきたけど、大丈夫?」「この後どうなるんだろう…」。新しい動物が登場するたびに心配になり、ページをめくればその様子に驚き、絵本と一緒にハラハラするのです。だけど、それこそがこのお話の醍醐味ですよね。
さらに、個性豊かな動物たちの表情も強く心に残ります。愛らしいだけでなく、それぞれの動物の持つユーモラスな部分や緊張感さえ漂う迫力の存在感までも描き出し、キャラクターを表わす印象的な衣装もお話の雰囲気を盛り立ててくれます。
そんな演出もあって絵本の世界に夢中になっている頃……物語はパチンと音がするようにふと終わるのです。残された子どもたちは余韻にひたりながら、きっと思わずこう言ってしまうのでしょうね。「もう一回!」
他にも色々な絵本をご紹介しています。ぜひ読んでみてくださいね。
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