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【児童書ニュース】2022年8月から9月中旬発売の児童書おすすめ新刊情報

今何を読もう? 面白い本はないかな? 小学生の本選びに向けた情報のひとつとして、毎月、児童書の最新情報をお届けします。今回は、2022年8月から9月中旬に発売された新刊情報や児童書ニュースを。秋の読書の参考にしてみてくださいね。

2022年8月から9月中旬発売の児童書新刊ピックアップ

まずは、8月から9月中旬までの新刊の中から、話題のおすすめ作品をピックアップして詳しくご紹介します。

『やまの動物病院』

山と町とをこっそりつないでいる「まちの動物病院」で起こる、ユーモアたっぷりの交流。なかがわちひろさんによる新たな絵童話の登場です。

やまの動物病院

山のふもとにある小さな町。その町のはずれの一番山に近いところに立つ「まちの動物病院」。先生の名前は、まちのよしお。「よしよし」というのが口ぐせです。まちの先生は、ねこのとらまるとくらしています。

小さな町なので、けがや病気の動物はたまにしか来ません。うっかりいねむりだってしてしまいます。でも患者さんが来れば腕のいい先生を、とらまるは片目で熱心に眺めます。先生の治療をこっそり勉強しているのです。

ゆうやけ時刻になると、先生はドアの外にかけているふだを裏返します。
「まちの動物病院 きょうのしんさつはおわりました」
先生は、じぶんととらまるのごはんを作って、食べて、お風呂に入り、ベッドで本を読み始めるとまぶたがだんだん閉じていきます。そうなると、ここからはとらまるの出番です。
バリバリとつめをといで気合いを入れると、裏口にある「ねことびら」のふだをひっくりかえすのです。
「やまの動物病院 どうぞ」

規則正しく、でもなんだか楽しそうに暮らす先生と、一見ただ寝ているように見せかけておきながら、先生の治療をしっかり学び、夜になると山の動物たちの治療に忙しく奔走するとらまる。そのとらまるの二面性がとってもユーモラスで、また先生ととらまるがそれぞれにマイペースに暮らしながらさりげなくそばにいる距離感にほっこり心が温まります。

さらになんといっても楽しいのは、とらまるのところへやってくる山の動物たちの様子。とくにほおぶくろに口内炎ができてしまったリスや、ガラスびんを頭からかぶったカモが個人的なお気に入りなのですが、そのカモの治療が、ひと晩だけ入院していた犬の歯の治療に繋がる場面は最高です。もちろん先生は、犬の歯がなぜ朝になって良くなっていたかといういきさつは全く知らないのですけどね。

絵本の創作作品や翻訳作品でも人気のなかがわちひろさんによるカラーの挿絵がたっぷり入った楽しい絵童話。『天使のかいかた』『めいちゃんの500円玉』『すてきなひとりぼっち』など大人気の絵童話に続き、また新たな絵童話が誕生しました。はじめてのひとり読みにもおすすめです。ユーモアたっぷりの楽しいお話と、とらまるの気持ちが伝わってくる所作や表情に魅力がいっぱい。患者の動物たちもかわいらしく愉快に登場します。またシンプルながらも目に飛び込んでくる和の色彩が美しく、大人の読者も心を掴まれてしまいそうです。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

『お月さまになりたい』

1972年発表の名作童話が、半世紀を経てオールカラーの新版に!100%ORANGEの及川賢治さんが全ページにカラフルでポップなイラストを描かれています。

お月さまになりたい

学校の帰り、へんな犬に出会った「ぼく」。どうの長い、白と茶のぶちの犬です。ぼくはまっ白い犬が好きだから、白い犬だったらかってやるんだけど……と思ったとたん、犬はまっ白に! そのうえ「こうなれば、かってくれますね」なんて口がきけるのです。犬は、「じぶんがなりたいものになれる」といいます。でもぼくがふざけてリクエストしたものはおことわりです。ぼくの考えていることなんてちゃんと見抜いてしまう賢い犬なのです。

そんな犬とやり取りするうちに、すっかりこの犬が好きになったぼくは、一緒に楽しい時間を過ごします。
そして、日暮れが近くなったころ、犬から、なんにでもなれるといったけれど、まだうまくなれないものがあることを打ち明けられます。犬がどうしてもなれないのは「お月さま」。でもぼくには、冷たい岩のかたまりであるお月さまになりたいという犬の気持ちが、どうにもわかりません。けれどもどうしてもあきらめられない犬は真っ白い海鳥になって空をのぼっていき‥‥‥。はたして犬はお月さまになることができたのでしょうか。そして、犬が行ってしまったあとの夜空を見上げるぼくは、いったいどんな気持ちだったのでしょう。

お話の中には、幼い子どもたちが知っているであろう感情があちこちに溢れています。仲良くなりはじめの時に他の存在にやきもちを焼いたり、どうしてもお月さまになりたいと言い始めたらきかない理屈抜きの願いをもつ気持ち、わがままで信念を曲げない犬に反発する気持ち、無茶な挑戦をする犬を心配する気持ち‥‥‥。また、「ひとりぼっちはさびしい」という犬の気持ちや、「ともだちがほしいの?」というぼくの問いかけに「うんうん」と答える犬の孤独や切なさは、ぼくの内面にある気持ちと共鳴していて、犬とぼくは心を通じ合わせていきます。そしてそれはそのまま読者である子どもたちにも共鳴するからこそ、心に深く残るものがあるのでしょう。

このたび、半世紀前の1972年に『おつきさまになりたい』としてあかね書房から刊行された一冊が新たな絵童話として偕成社より蘇りました。当時の絵を手がけたのは。佐野洋子さんでしたが、今回の新版『お月さまになりたい』では100%ORANGEの及川賢治さんが全ページにカラフルでポップなイラストを描かれ、作品のユーモアと可愛らしさを存分に表現されています。中でも、たびたび登場する、左ページに犬の顔、右ページにぼくの顔が並ぶページは、それぞれと目が合って気持ちが伝わってくるようで、友だちのような身近さを感じることができそうです。

作者の三木卓さんは、詩人、小説家として数多くの賞を受賞されており、子どもの本の世界では「がまくんとかえるくん」シリーズの翻訳者として有名ですが、その他自作のユーモアあふれる温かな絵本や童話を手がけられています。本作でも時おりくすっと笑ってしまうようなユーモアがありながらも、いつの時代も変わらない子どもたちの気持ちがしっかり汲まれており、この先も長く読み継がれる一冊となっていくことでしょう。

(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)

『こどもに聞かせる一日一話「母の友」特選童話集』

福音館書店創立70周年を記念して出版された「母の友」特選童話集。おやすみ前のひとときや、小学生の朝の読書におすすめの一冊。「ぐりとぐら」、「だるまちゃん」「ぐるんぱ」など絵本の人気者たちの単行本化されてないとっておきのお話が収録されているのだそう! 

 

「絵本を読むときの母の声は、普段の暮らしのなかで聞き流す声の言葉とは違って、気持ちが私の方へはっきりと向けられた声でした。そして語られる言葉や文が、私を別世界へとみちびくようにおもえました。」

(「一日一話をめぐって」松居直さんあとがきより)

こどもに聞かせる一日一話 「母の友」特選童話集

「こどもに聞かせる一日一話」は、福音館書店の雑誌「母の友」で長く続く人気企画です。短くておもしろい童話を30話一挙に掲載。気軽に読めて、子どもとおとなが一緒に楽しめると毎年好評をいただいています。この本には、21世紀以降、約20年分の「一日一話」から選んだ楽しいお話を中心に『ぐりとぐらのピクニック』や『だるまちゃんとうらしまちゃん』など、過去に「母の友」だけに掲載された、絵本の人気者たちの未単行本化作品を収録しています。

『みんなえがおになれますように ちがうってすてきなこと』

現在小学6年生のういさんによる、多様性を考える絵本。「トランスジェンダーの人は、何にこまっているんですか。」「ふつう、あたりまえ、ということばは、いやに感じますか。」など、当事者に対して、こどもならではの率直な質問と、当事者の方の真摯な回答が紹介され、気づきがたくさんある内容です。

みんな えがおになれますように ちがうって すてきなこと

小学生のういさんによる、多様性、LGBTQ+についての絵本。ういさんが、オードリー・タンさん、さとうさん、杉山文野さん、ロバート キャンベルさんにきいたこと、考えたこと、たくさんの人につたえたいと思ったことをまとめました。

『魔女だったかもしれないわたし』

差別や偏見について考えさせられる深いテーマが込められた一冊。「多様性」の大切さが叫ばれ、ますます重要となっていく今とこれからの時代に手に取りたい作品です。

魔女だったかもしれないわたし

スコットランドの小さな村で、双子の姉と両親の五人で暮らす少女・アディ。
学校の授業で、自分の住んでいる村でかつて「人とちがう」というだけで処刑されたという魔女裁判の話を聞いたアディは、村の委員会で魔女の慰霊碑を作ることを提案します。けれども村の評判をおとしめるようなものを置く気にはなれないと「却下」されてしまいます。

アディは慰霊碑を作ることにこだわります。その理由はアディには自閉の傾向があり、人とちがうというレッテルを貼られているから。魔女裁判の授業の時、クラスメイトのエミリーに「アディも火あぶりにされてたかも」と言われ、担任の先生やクラスメイトから笑われたことも心に突き刺さっていました。アディにとって、村に慰霊碑を作るというのは、過去の魔女裁判の間違いを認め、同じことを繰り返さないようにするために必要なもの、さらにはアディ自身が自分らしく生きていくための戦いでもあったのです。

この作品の興味深いところは、歴史上の出来事と、現在の自分の状況を照らし合わせ、目の前にある現実の問題を少しでも良い方向にしようと模索し、行動するところにあるのではないかと思います。

登場人物の中でとくにアディにとって重要な存在として描かれるのが、双子の姉のひとり、キーディです。キーディもまたアディと同じ自閉の傾向があるため、アディの苦しみやつらさを誰よりも理解し、どんな時もアディを支えます。しかし大学生となって自分をコントロールする方法を覚えたかのように見えたキーディもまた、周りに合わせることの苦しみを抱えていたのでした。他、もう一人の姉や、アディの両親、学校の担任先生、図書館司書の先生、かつての親友や転校生などが登場し、アディに対してさまざまな態度で接します。読んでいると、自分だったらどの立場にたつことができるのだろうかと問われるようです。

数々の児童文学賞を受賞し、世界で高い評価を受けている本作には、昔から変わらずに存在し続けている差別や偏見について考えさせられる深いテーマが込められています。読み進めていくと、自分の中にある差別や偏見に気づかされたり、また「人とちがう」と周りから見られていたり、自分自身で感じている人たちがどんな思いで周りに合わせようとしているかを知り、想像することでしょう。また目の前で差別的な出来事が起こった時、止めずに傍観していることの罪もこの作品を通して考えたい大きなテーマです。
対象年齢は小学5、6年生ぐらいから大人まで。「多様性」の大切さが叫ばれ、ますます重要となっていく今とこれからの時代にぜひ手に取りたい作品です。

作者のエル・マクニコルさんはスコットランド生まれの児童文学作家で、ニューロダイバーシティ(脳の多様性)をテーマにした作品を次々に発表されており、本作はその最初の作品だそうです。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

「新装版 ハリーポッター文庫」シリーズ、ぞくぞくと刊行です。

今年2022年の3月から刊行が始まった「新装版 ハリーポッター文庫」シリーズ。9月に第5巻が4分冊で刊行となり、10月に第6巻、11月に第7巻と全20巻セットが刊行され、完結となります。

2022年は舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の日本での上映が開始となり、盛りあがりを見せているハリー・ポッターの世界。こちらの文庫版は、中高生から大人の方におすすめです。小学生には、「静山社ペガサス文庫版 ハリー・ポッター」シリーズ、または、佐竹美保さんの美しいイラストで再登場した「新装版 ハリー・ポッター」シリーズがおすすめです。

2022年8月から9月中旬、対象年齢別おすすめの児童書新刊

その他おすすめの新刊を対象年齢別にご紹介します。

小学校低学年から

小学校中学年から

小学校高学年から中高生に

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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