【ランキング】2022年8月の児童書人気ランキングBEST10は?
今、絵本ナビで売れている児童書は? 話題になっているのはどんな本? 2022年8月の児童書人気ランキングをご紹介します。8月のランキングでは、小学生の夏休みにどんな作品が読まれたのか、また課題図書ではどんな本が人気だったのかが分かる結果となっています。気になる作品を見つけたら、秋にも引き続き手にとってみてくださいね。
※通常のランキングでは、基本的に「児童書」(読み物)を対象にしていますが、今回課題図書に限り人気の傾向が分かるよう、「絵本」もランキングの中に入れております。
2022年8月の児童書人気ランキングBEST10【2022/8/1~8/31】
※課題図書8月第1位
2022年課題図書(小学校低学年の部)よりランクイン。「わたしたちは たくさんの いのちで できている」
おすしやさんに子どもたちがやってきます。
目の前に並ぶのは、美しい魚や貝たち。
「さあて、どれをおすしにしようか。」
キンメダイ、アナゴ、イカの順に、寿司職人がおすしにしてくれます。
まずはキンメダイの体をじっくり観察していきますよ。
せびれ、むなびれ、はらびれ、しりびれ、おびれ、角度を変えると金色に光る目、前から下からのぞいたり、口を開いて中を見てみたり。うろこをはがすと、子どもたちにうろこが飛んでいきます。赤くてとってもきれいなうろこ。水に入れると、ピンク色になってキラキラしています。頭を切り落とすと胃ぶくろが出てきました。胃ぶくろにはいったい何が入っているのでしょう? そのあと内臓を取って中をきれいに洗ったら三枚におろし、皮ももったいないのであぶってしっかりいただきます。
次はアナゴ。
顔を下から見たり、上から見たり、前から見たり。キバのように見えたのは鼻の穴で‥‥‥。お顔をじっと見ているとなんだか可愛らしく思えてきます。体を開いていくとホースみたいな腸が出てきました。おっ! 腸になにか入っています。ぐうっと押していくとおしりのあなから出てきたのはウンチ!「くさいのかな~!?」「そんなににおわないな。」
子どもたちの目の前でゆっくりと丁寧にさばかれ、どんどん姿が変わっていく魚たち。子どもたちは見たり、触ったり、においを嗅いだりしながら五感をいっぱいに使って、観察していきます。魚の体の細部にわたるたくさんの美しい写真から伝わるのは、大人でもなかなかお目にかかれないような魚の生態。「生きもの」としての営みです。胃ぶくろに食べたものが入っていたり、腸にウンチが残っていたりと、それはついさっきまで魚たちが生きていたという確かな証拠。その命の証拠を目のあたりにすると、一瞬とても食べられないような気持ちになりそうになるものの、いつの間にかすっかりおいしそうな姿に変わっていくところが不思議でなりません。
はじめから終わりまで圧倒されるのは、子どもたちの笑顔と驚きの生き生きとした表情。職人さんの説明のひとつひとつをじっくり聞いて、目をキラキラさせながら魚の細部を見つめる子どもたち。そこにはなんの躊躇も感じられません。本物を伝えるとき、受け取るときというのは、こんなにまっすぐに届くものなのだな、と心の奥底から不思議な感動が湧いてきます。
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(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
※課題図書8月第2位
2022年課題図書(小学校高学年の部)よりランクイン。環境問題や働き方の見直しなど、社会問題にまで視点が広がる一冊
捨てないパン屋として評価される田村陽至氏の人と思想を、食品ロスの専門家として数多くの受賞を誇り、食品ロス削減推進法成立の原動力となった井出留美氏が活写する。田村氏のモンゴル滞在の経験や、ヨーロッパへのパン修行の旅など、美しい自然風景と感動的なエピソードを交えながら、捨てないパン屋になるまでの葛藤を通じて、自然への深い愛情と、食品ロスなき未来への希望を描いたノンフィクション。
※課題図書8月第3位
2022年課題図書(高学年の部)よりランクイン。苦手を克服する子どもたちの成長を描いた物語
プリンツ賞オナー作家が描く、
心にひびく物語
小学校4年のゲイブリエルには、
こわいものがたくさんある。
クモ、いじめっ子の上級生、大きなトラック…。
でも、何よりこわいのは、5年生に進級すること。
5年になると、
いやな上級生と同じ校舎になるから…。
ぜったいに5年生にはならない、と決めた。
親友の女の子フリータは、これに大反対!
ゲイブリエルの弱虫をなおす作戦を考えて、
夏休みのあいだ、その作戦に、
ふたりでとりくむことになった。
とちゅうまでは、うまくいっていた。
ところが、ゲイブリエルのある思いつきのせいで、
フリータの家族をまきこんでしまい…。
1976年アメリカ・ジョージア州を舞台に、
偏見や人種差別の問題にふれつつ、
苦手を克服する子どもたちの成長を描いた、
心にひびく物語。
第4位 ふたりはともだち
がまくんとかえるくんの優しくユーモラスな友情ものがたり
仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。
そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。
春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?
がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。
続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。
すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。
悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。
国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。
シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
第5位 すうがくでせかいをみるの(※課題図書8月第4位)
2022年課題図書(小学校低学年の部)よりランクイン。「すき」を通して、自分なりの世界の見方をみつける絵本
うちの家族には、みんなそれぞれ好きなことがある。パパは絵を描くし、ママの部屋には昆虫の資料がたくさん。お兄ちゃんは音楽が好き。好きなことがあるって、いいな。私だっていろいろ挑戦してみるけど、なかなかピンとくるものがない。でもひとつだけ、これだって思ったのが……
すうがく!
彼女に言わせれば、すうがくはどこにでも隠れているんですって。公園にも、湖にも、窓からの景色にも、絵画の中にだって。かずや形のことを見つけて、それについて考えるのが楽しくてたまらない。彼女の目には、世界がどんな風に見えているんだろう。想像するだけで、ワクワクしてきますよね。
世界をみる方法は、いくつもある。こんな風に、自分が一番好きなことが見つけられたら、夢中になればいい。その先にはきっと夢をかなえるための扉が待っているから。作者の、子どもたちに託す気持ちが伝わってきます。
巻末には、主人公オリジナルの「数学ノート」付き。誰かの世界をのぞいてみることだって、好きなことを見つける一つの方法かもしれませんよね!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
第6位 おじいちゃんとの最後の旅(読書感想文記事より人気)
スウェーデンを代表する児童文学作家
ウルフ・スタルク最後の作品。
挿絵は、
アストリッド・リンドグレーン記念文学賞を
受賞した絵本作家キティ・クローザー。
おばあちゃんが亡くなって、いま、
ぼくのおじいちゃんは病院に入院している。
おじいちゃんは、かなり口が悪い。
きたない言葉ばかり使うので、パパは、
おじいちゃんのお見舞いに行きたがらない。
でも、ぼくはおじいちゃんが好きだ。
おばあちゃんと二人で暮らしていた家に
死ぬ前に一度もどりたいという
おじいちゃんのために、
ぼくはカンペキな計画を立てた。
パパやママには、サッカーの合宿に行くと
うそをつき、
パン屋のアダムに協力してもらい、
フェリーに乗って、
島にあるおじいちゃんの家に行った。
病院にもどると、おじいちゃんは
天国でおばあちゃんに再会するときのために
きれいな言葉を使うことにすると
いいだし…?
切ない現実を、巧みに、かつユーモアを交えて
描く作風が人気のウルフ・スタルク。
胸を打つ、最後の作品。
第7位は同数の売れで2タイトルがならびました。
第7位 つくしちゃんとおねえちゃん(※課題図書8月第5位)
つくしちゃんにはおねえちゃんがいます。二つ年上の四年生です。
頭がよくて物知りで、計算もはやくて、ピアノも上手。ちょっと怒りっぽくていばりんぼうだけど、つくしちゃんにとってじまんのおねえちゃんです。
おねえちゃんは、歩くとき、少し右足をひきずります。でも重いものはいつもおねえちゃんが持ちます。
ある日、学校の登校中に、つくしちゃんはランドセルの中身を全部道路に散らばしてしまいました。おねえちゃんは怒りながらも、すぐに教科書やノートを拾い集めてくれます。しかし大事な消しゴムが見つかりません。遅刻しそうになりながらも見つかるまで探してくれるおねえちゃん。登校時間まであと5分になった時、早く走れないおねえちゃんはつくしちゃんだけ走っていくよう言います。つくしちゃんは学校に着くなり、先生に必死でおねえちゃんが遅刻してしまった理由を話すのでした。
また、つくしちゃんが国語の時間に校庭を見ると、おねえちゃんがドッジボールをしています。おねえちゃんはぜんぜんボールに触れていません。おねえちゃんの方にボールが転がっても別の子が走ってきてボールをとってしまったり、おねえちゃんにパスしてくれる子がいないからです。その日の夕方、家に帰ると、庭でおねえちゃんが壁に向かってボールを投げる練習をしていました。おねえちゃんは、できないことがあると、くりかえしくりかえし練習するのです。
一見外ではしっかり強そうにしているおねえちゃんの違う一面をつくしちゃんは見つめます。いつも妹扱いされて悔しい思いもたくさんするけれど、おねえちゃんの右足のことを気にかけながら、おねえちゃんが人の知らないところで努力していたり、お母さんの前で泣いている姿など、いろいろな面があることを知っていきます。けれどもやっぱりおねえちゃんの方が一枚上手なことが分かるのが、おまつりの日の出来事。おねえちゃんはつくしちゃんが思う以上に、姉としてつくしちゃんのことを気にかけているのでしょう。
のんびりマイペースな妹のつくしちゃんと、優等生でがんばり屋のおねえちゃん。毎日の生活の中で繰り広げられる、姉妹の5つの物語は、お互いに相手を思いやる気持ちにあふれています。第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(小学校の低学年の部)にも選ばれているこちらのお話を書かれたのは、低学年向け読み物からYA作品までさまざまな年齢や立場の子どもたちの気持ちを丁寧に描き出すたくさんの著作があるいとうみくさん。全ページに丹地陽子さんの描くそれぞれの個性が伝わる姉妹の挿絵が入り、低学年の子どもたちでも楽しく読み進められる1冊となっています。
姉と妹が、笑ったり、泣いたり、けんかしたり‥‥‥。読む子どもたちの状況によって、どちらの気持ちにより共感するかなど感じ方はさまざまでしょう。姉妹という身近な関係だからこそ見えてくる姿や思いという部分にも注目したいところ。外からは見えないおねえちゃんの違う一面に友だちのことを思い浮かべたりもする人もいるかもしれませんね。姉妹それぞれの気持ちに触れながら、広くだれかの思いを想像するきっかけとなりそうな種が詰まった作品です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
第7位 ルドルフとイッパイアッテナ
猫と人間、それぞれの愛と友情の物語。
ひょんなことから、長距離トラックで東京にきてしまった黒猫ルドルフ。土地のボス猫と出会い、このイッパイアッテナとの愉快なノラ猫生活がはじまった……。
「ルドルフ」シリーズ。つづきも合わせて
第9位も同数の売れで2タイトルがならびました。
第9位 ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ(新装版)
みどころ
1982年の発売以来、たくさんの子どもたちに愛され、読み継がれてきた「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻目。マージョリー・W・シャーマットさんによる全17巻となるこちらのシリーズは、5歳ぐらいから小学校低学年の子どもたちにちょうど良いハラハラさで、子どもたちがはじめて物語の楽しさに出会えるシリーズでもあります。つぎつぎにネートに降りかかるナゾ解きの面白さはもちろんのこと、巻ごとに増えていく個性的な登場人物、ネートからママへの置き手紙の内容など、読めば読むほど多くの楽しみをも発見できるでしょう。
すべての漢字にふりがながついているので、はじめての読み物としてもぴったり。ひとり読みに移る前に、まずは読んであげながら親子で一緒にナゾ解きを楽しんでみるのもいいですね。シーモントさんの温かくユーモアたっぷりの挿絵と、訳者の小宮由さんの柔らかな語り口も、子どもたちの読書をやさしく応援してくれます。お話の最後には「めいたんていのこころえ」もついていて、もし周りでなにかナゾが起きた時の役に立つかも!? さあ、ネートとどんどんナゾを解いて、一緒に名探偵になろう!
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
第9位 さかさまがっこう(読書感想文記事より人気)
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秋山朋恵(あきやま ともえ)
絵本ナビ 副編集長・児童書主担当
書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。
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