小学5、6年生の読書感想文におすすめの本8選!(2021年版)
夏休み、読書の宿題は進んでいますか?
小学5、6年生の読書感想文‥‥‥。読む本の長さも長くなりますし、内容もぐっと深くなるので、これまで以上に気持ちが重いという人も多いかもしれませんね。ただ、内容が深くなるということは、実は読書感想文を書く時にはとっても書きやすいんです。読書感想文が少しでも書きやすくなる本選びのポイントを2つお伝えしますね。
- 自分が興味のあるテーマが書かれている本を探すこと
または、 - 自分の実体験と何か結びつけられるようなテーマの本を見つけること
本を読み終えたら、家族や友達におしゃべりするように、「この本にはこういうことが書いてあったけれど、私(僕)も前にこんなことがあって、その時、こんなことを思った。そのことをきっかけに自分はこう変わったけれど、本の主人公はこうだった。」などと書き始めてみませんか。
こちらは一例ですが、こんな風に少し気持ちを楽にして、周りの誰かに読んだ本のことを伝える気持ちで感想文に取りかかってみてはいかがでしょう。高学年向けの本は、あらすじや内容をきちんとまとめようと思うと大変なので、そこに重点を置くのではなく、自分の体験や感じたことを中心に書いてみることをおすすめします。こちらの記事では、新刊を中心とした旬のおすすめ本を学年別に4冊ずつご紹介します。各作品には【本選びのためのキーワード】もつけていますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
※選びやすくするために、小学5年生向けに4冊、6年生向けに4冊とおすすめ本の8冊を分けておりますが、小学5年生でも6年生のおすすめ本を、6年生でも5年生のおすすめ本を選んでいただくことは全く問題ありません。まずは「読んでみたい!」と興味を持った作品から、どんどん手に取ってみて下さいね。
小学5年生の夏の読書と読書感想文におすすめの本
『チギータ!』(ポプラ社)
東京五輪2020の卓球競技でも「チキータ」という単語をよく耳にしましたね。「チキータ」というのは、卓球の打法の一つで、手首の反動を利用した横回転のバックフリック。ボールが、チキータバナナのように曲がることから名づけられたそうなのですが、さらに本書によれば「相手がどんな回転のサーブを打ってきても、ほとんど影響を受けずに強く打ち返せる。相手のサーブの回転の軸を外すこともできるし、回転を利用してさらにはげしい回転をかけることもできる」という卓球の必殺技なのだそう。言葉で聞いているだけでもすごい技ですよね。しかしこの技が出てくるのはお話の後半で、しかもこの本のタイトルは「チキータ」ではなく、「チギータ」。それはいったいどういうことなのでしょう?
表紙が卓球をしている絵なので、卓球づくしのお話かと思ったら、お話の中心となるのは、毎月行われるクラスのレクレエーション決めについて。レクレエーションでなかなか卓球ができないことに対して、主人公の千木田(せんぎだ)と、親友のマッスー、クールな女子の松林が策を練って奮闘します。
「少人数の意見は切り捨てていいのか」?」「本当の公平さとは何か?」など、選挙にも通じるようなさまざまな問題について、お話をきっかけに考えてみませんか?
【本選びのためのキーワード】
卓球、チキータ、多数決、小さい声(少数意見)
『おじいちゃんとの最後の旅』(徳間書店)
頑固で怒りっぽく、きたない言葉を平気で使うおじいちゃんと、おじいちゃんを慕う孫のウルフ。パパはおじいちゃんとしっくりいっていないけれど、ウルフはおじいちゃんと不思議と気が合い、仲良しだ。
足の骨を折り、さらに心臓を悪くして病院にいるおじいちゃんは、ある日、病院を抜け出す計画を企てる。行き先は、バルト海にある小さな島の中のおじいちゃんの家。おじいちゃんとウルフの旅を手伝ってくれるのは、パン屋のアダム。無謀だけれど、ワクワクして、ユーモラスで、ちょっと切ない旅の様子が描かれていきます。
感想文のテーマとしては、お話をきっかけに、自分の祖父母や、祖父母と親のことなど、家族について書いてみるのはいかがでしょう。
また、ウルフとおじいちゃんが両親や病院についたうそはいいうそだったのか、悪いうそだったのか、など、うそについて徹底的に考えてみるのも良いかと思います。
【本選びのキーワード】
家族を思う気持ち、家族関係、旅、うそ
『おじいちゃんとの最後の旅』
出版社からの内容紹介
スウェーデンを代表する児童文学作家
ウルフ・スタルク最後の作品。
挿絵は、
アストリッド・リンドグレーン記念文学賞を
受賞した絵本作家キティ・クローザー。
おばあちゃんが亡くなって、いま、
ぼくのおじいちゃんは病院に入院している。
おじいちゃんは、かなり口が悪い。
きたない言葉ばかり使うので、パパは、
おじいちゃんのお見舞いに行きたがらない。
でも、ぼくはおじいちゃんが好きだ。
おばあちゃんと二人で暮らしていた家に
死ぬ前に一度もどりたいという
おじいちゃんのために、
ぼくはカンペキな計画を立てた。
パパやママには、サッカーの合宿に行くと
うそをつき、
パン屋のアダムに協力してもらい、
フェリーに乗って、
島にあるおじいちゃんの家に行った。
病院にもどると、おじいちゃんは
天国でおばあちゃんに再会するときのために
きれいな言葉を使うことにすると
いいだし…?
切ない現実を、巧みに、かつユーモアを交えて
描く作風が人気のウルフ・スタルク。
胸を打つ、最後の作品。
読者の声より
おじいちゃんと孫のお話です。
おじいちゃんと、その息子である孫のパパは、正反対の性格で
あまり相性の良くない様子。
だけど
おじいちゃんと孫は、趣味趣向がとても似ていて
馬が合うようです。
ふと
自分と母方の祖母のことを思い出しました。
いまでも好きなものや好きなこと、好きな味は
全部祖母に教えてもらったものです。
連れ合いをなくして病院暮らしのおじいちゃんが
戻りたがっている家に
孫のウルフと、行きつけのパン屋のお兄さんとで
誰にも内緒で、戻る計画を立てるウルフ。
そんな大冒険が語られる前半から
だんだんと死期を理解して、
自分の豊かな死に際の実現に向けて、最後まで意欲的なおじいちゃんが描かれる後半まで・・。
自分の思い出といくつ重ねたでしょう。
孫のウルフがおじいちゃんから受け取ったものが
今後の人生の糧になる。
人は体が亡くなっても、魂は生き続けるのだなと、感じました。
(やこちんさん 50代・ママ 女の子16歳)
『ほんとうの願いがかなうとき』(偕成社)
チャーリーはいつも願いごとをしています。一番星や、四つ葉のクローバー、雨の中をとぶ鳥など、毎日なにか幸運のしるしを見つけたら、1日に何回だって願いごとをするのです。けれども何を願っているかは書かれていません。読んでいくうちに、なんとなくチャーリーの願いが想像できるのですが、けれども、最後にチャーリー自身も気づいていなかった「ほんとうの願い」に触れた時、ハッとさせられます。チャーリーのお世話をしてくれているおばのバーサや、足の不自由な友人ハワード、ハワードの温かい家族など周りの人の優しさが、チャーリーの心を溶かしていったのでしょう。
チャーリーの置かれている環境はなかなか過酷なものですが、お話の中にはたくさんの心動かされる場面があります。私が一番心を打たれ、涙が止まらなくなったのは、友人のハワードが川で願った2つのお願いの内容を知った時でした。
感想文を書く時には、ぜひ自分が心を動かされた場面について自由に書いてみることをおすすめします。
【本選びのキーワード】
願うこと、家族、本当の友達、優しさ
『ほんとうの願いがかなうとき』
出版社からの内容紹介
チャーリーは家族からはなれて、たった一人、いなか町のコルビーにやってきました。事件をおこした父親が拘置所にはいって、精神が不安定な母親も子どものめんどうがみられないので、姉さんのジャッキーともはなればなれになって、一度も会ったことのないおばさん夫婦にひきとられたのです。
一番星や、四つ葉のクローバー、雨の中をとぶ鳥など、毎日なにか幸運のしるしをみつけては、願いごとをするチャーリー。
近所で見かける、やせたのら犬に自分と似たものを感じて、なんとかつかまえて飼いたいと思ったチャーリーを、クラスメイトのハワードが手つだってくれるようになります。
家族からひきはなされ、怒りとさびしさから、かたくなに自分にとじこもっていた少女が、その気持ちを理解してくれる人たちの中で少しずつ心をひらいていき、自分のほんとうの願いを知るようになる物語。
児童図書作家画家協会(米国)・クリスタルカイト賞受賞作。
『5000キロ逃げてきたアーメット』(学研)
世界で起きている難民問題。日本に住んでいるとあまり身近に感じることはないかもしれません。けれども、もし同じクラスにやってきた転校生が難民だったら‥‥‥? というところから想像できるこちらのお話は、難民について初めて知ったり考えたりするきっかけとなる貴重なお話です。9歳の女の子アレクサのクラスにやってきたのは、アーメットという男の子。何か事情がありそうなアーメットに、アレクサは、何の偏見も持たず、仲良くなりたい一心で親切に振舞います。そのうち、アーメットがシリアから逃げてきたこと、その途中で両親と離れ離れになってしまったことを知り、アーメットのために思いきった行動を計画します。
もし自分がアレクサだったらどうするか? というところから書き始めてみると、感想文が書きやすいかもしれません。
【本選びのためのキーワード】
難民とは? 友情、いじめ、差別、学校、家族、肌の色の違い
『5000キロ逃げてきたアーメット』
出版社からの内容紹介
主人公のクラスに、男の子が転入してきました。ライオンのような瞳を持つ彼は、しゃべらないし、笑わないし、だれとも遊びません。彼がイギリスの学校にやってきたのには、理由があったのです…。難民問題を通してえがかれる、友情と勇気と冒険の物語。
小学6年生の夏の読書と読書感想文におすすめの本
『ずっと見つめていた』(偕成社)
小学六年生の越(えつ)は、埼玉県の浦和市から山梨県の南アルプス市に一家で引っ越しをします。それは化学物質過敏症である妹のつぐみにとって、少しでも良い環境を、との両親の判断でした。けれども越にとっての生活は、便利な都会暮らしから一気に不便な田舎暮らしへと変わり、心穏やかではありません。
「コンビニまで自転車で何分?」「ケータイの電波は?」「ポテトチップスは買える?」「通う中学校は?」「自分の将来は?」さまざま揺れる越。けれども田舎での生活に少し慣れた夏休み、夏期講習で埼玉に1週間戻ってみると、以前いた時とはまるっきり見る目が変わっている自分に気づきます。大切なのは、勉強を頑張ってレベルの高い高校に入ること? それとも非常事態に人を助けるたくましさを持っていること? 都会での暮らしと田舎での暮らしの両方を経験したことではじめて価値観を大きく揺り動かされる越の姿にどんなことを感じるでしょうか。
また、越の目から見た妹のつぐみの変化や、越の気づきなどに注目してみるのもおすすめです。
【本選びのためのキーワード】
家族、都会と田舎、進路、豊かさとは? 美味しいごはん
『ずっと見つめていた』
出版社からの内容紹介
小学6年生、越の一家は、妹つぐみの化学物質過敏症が治らないため、埼玉県から富士山の見える山梨県に引っ越す。都会から南アルプスのふもとへと大きく環境が変わった越は、複雑な思いで地元の中学校に通う。母親は、地元の食材を使った自然食の食堂をオープンさせるが、この地域の有力者からいやがらせにあい、お店もなかなか軌道に乗らない。埼玉時代の親友、直登から夏期講習にさそわれた越は、同じ中学に通う結衣と塾のセミナーに参加するも、つぐみがマムシにかまれたという緊急の連絡が入り、急きょ家にもどる。著者の実体験をもとに書かれたある一家の再生の物語。
『夏に降る雪』(フレーベル館)
この本には、長崎県佐世保市に実際に存在している「無窮洞」という防空壕の話が出てくるのですが、防空壕について、なにか聞いたことはありますか? 防空壕というのは、戦争中に空襲から避難するための場所で、「無窮洞」はなんと子どもたちが掘った場所なのだそうです。このお話では、子どもたちが「無窮洞」の存在を多くの人に伝えるための演劇に奮闘します。
東京から長崎に引っ越して友達もいなくてつらいことばかりだった主人公の大河は、演劇に挑戦することで、多くの仲間と出会い、また戦争体験者の話を聞くことで大きく成長していきます。
お話を通して、戦争について初めて知ったことがあったら、それを感想文に書いてみませんか?
また、人前で話すだけでも苦手だったのに、主役に抜擢されてしまった大河の頑張りにも注目してみて下さいね。
【本選びのためのキーワード】
引っ越し、戦争、戦争遺跡、演劇、仲間
『赤毛証明』(くもん出版)
生まれつき、赤茶色の髪の毛をした「堀内めぐ」。中学一年生。
通う学園は校則が厳しく、頭髪は黒髪でなければならないのですが、生まれつき髪の色が違う場合には「生まれつき」という証明をもらわねばなりません。それが生徒手帳に押される「赤毛証明」の印。本のタイトルにもなっていますね。この「赤毛証明」を毎朝校門で提示しなければならないことに疑問を感じためぐは、「ふつうって何?」を自由研究のテーマにして、徹底的にこだわり、考えます。はたして、めぐが出した結論は、「規則」を変えられるのでしょうか?
皆さんもこのお話を通して、「ふつう」について考えてみませんか?
またお話の中には、大切な友達なのに、自分よりも優れていることに対して、またほのかな恋心をめぐって、嫉妬してしまうといった感情も描かれます。このあたりに注目してみても、感想文が書きやすいかもしれません。
【本選びのためのキーワード】
ふつうって何? 親友、嫉妬、先生、バスケットボール
『キャプテンマークと銭湯と』(KADOKAWA)
突然告げられた、サッカークラブのキャプテン交替。もうすぐ中二になる周斗は、誇りにしていた「キャプテンマーク」を、他のチームから移籍してきた大地に渡さなければならなくなります。コーチの決定に納得がいかないまま、その後の試合でもチームメイトとぶつかり孤立してしまう周斗。そんな周斗が思いがけず再会したのは、小さい頃におじいちゃんとよく行った銭湯でした。薪で沸かしている、まろやかでひのきの香りのするお湯は、周斗のかちかちになっていた心や体をほぐしてくれます。また、銭湯で出会う番台のおばあさんや、銭湯マニアの女子高校生、塗り壁職人のヒロさんとの交流もみどころ。感想文を書く時には、周斗に共感した部分などを中心に書いてみたり、部活やクラブチームの経験のある人はその経験を思い出しながら書いてみるのはいかがでしょうか。
【本選びのキーワード】
クラブチーム、部活、仲間、嫉妬、自分を見つめる、銭湯、おじいちゃんとの思い出
『キャプテンマークと銭湯と』
「キャプテンは、」 耳の奥がきんとした。
「大地にお願いしたい」
背筋は伸びきったまま、制止した。息も止まった。周りがかすかにざわついた。
そのざわつきを押さえるように、「はい!」
威勢のよい声が、後ろからまっすぐ飛んできた。
「よし。大地、頼んだぞ」
「そうだ、周斗。キャプテンマーク、あとで大地にわたしといてくれ」
ずっとつけていたサッカーのキャプテンマークを、他のチームから移籍してきた大地に渡さなくてはいけなかった周斗。くやしくて、チームメイトからも孤立してしまう。自分がいやになっていた周斗が出会ったのは古ぼけた時代遅れの銭湯だった。あさのあつこ氏の推薦デビューの著者が描く、切なく温かい感動の物語。
いかがでしたか?
どれも読み応えがあって、心に残る作品ばかりです。
読書感想文や夏休みの読書の目的以外でも、ぜひ手にとって読んでみて下さいね。
秋山朋恵(あきやま ともえ)
絵本ナビ 副編集長・児童書主担当
書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。
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