絵本ナビスタイル トップ  >  絵本・本・よみきかせ   >   小学生の読書感想文におすすめの本   >   【2023年版】小学5年生の夏の読書を応援! 読書感想文にも!
小学生の読書感想文におすすめの本

【2023年版】小学5年生の夏の読書を応援! 読書感想文にも!

5年生の皆さん、本は好きですか?

毎日、勉強やクラブ活動、その他さまざまなことに忙しくて、とても本を読む時間なんてない! という声も聞こえてきそうですが、夏休みに読書感想文の宿題が出ると、なにか読まなきゃ……という気持ちになりますよね。本をまるごと読んで感想を書く。ちょっと面倒だな、うまく書けるかな、と後ろ向きの気持ちになってしまう人も多いかもしれません。この一見面倒だなと思われる読書感想文の宿題を乗り越える一番いい方法! それは本選びにあります。とにかく自分が好きだなと思う本や興味のあるテーマの本を選べば、だいぶ気持ちが楽になるはず!

 

2023年の絵本ナビ児童書ジャンルの夏のテーマは「本選びを楽しもう!」。

今夏、小学生の皆さんが面白い本と出会えるよう、新刊を中心に、選りすぐりの面白い本を学年別に紹介していきます。さらに一冊読んで気に入ったら、つぎに読む本に繋がるよう、同じ作家さんの本やテーマが共通している作品なども合わせて紹介していきますね。

小学生の皆さんが夏の間に、心に残る面白い本と一冊でも出会えるよう、応援します。

絵本ナビで紹介する「読書感想文におすすめの本」の選書のポイント

  • テーマがはっきりしていて分かりやすい
  • 読みやすい
  • 表紙やタイトルに惹きがあり、読んでみたい! という気持ちになるもの
  • 読み終えた時に心に残る何かがあること

の4点を重視して選書しています。

※本記事では、小学5年生向けとして3冊おすすめ作品を紹介しておりますが、無理なく読めそうなもの、逆に簡単すぎないものを選ぶことが一番大切です。小学5年生向けのおすすめ作品でピンとくるものがなかった時には、前後の学年(小学4年生向けや6年生向け)のおすすめ作品もチェックしてみてくださいね。

小学5年生の読書を応援! 読んでみたくなる本を探してみよう

『アーマのうそ』(文溪堂)

小さなうそがどんどん大きくなって……

どんなお話?

「あたし、世界一大きな人形を持ってる。あたしくらいの背があって、あたしの服が着られるの」

転校してきたばかりのアーマは、学校に友だちがいません。でもある日の帰り道、ジュディという女の子が話しかけられ、兄弟やペットがたくさんいるというジュディに対して、つい「世界一大きな人形を持ってる」とうそをついてしまいます。うそをついてしまったアーマは後悔し、ジュディが忘れてくれるようにと願いますが、次の日、話はクラスじゅうに広がり、おまけに学校行事の収穫祭で展示しようという話にまで発展してしまいます。
あとにひけなくなってしまったアーマは、さまざまな策を考え、さらにとんでもない行動に……。
アーマは、収穫祭に無事「世界一大きな人形」を持って行けるのでしょうか。それとも本当のことをみんなに伝えることができるのでしょうか? 

ここが面白い!

ついちょっとした気持ちでついたうそだったのに、実はうそだったと言えなくなってしまったこと、ありませんか?
うそだと言えたらどんなに楽か……。そう思いながらも言えずに、どうにかつじつまを合わせようとするアーマの行動にドキドキハラハラさせられます。一緒に住んでいる大おばさんが子どもの時に大きな人形を持っていたこと、アーマのお父さんが働いているボムラインデパートならどんな人形でも置いてあるという話など、もしかしたらうまくいくかもしれないという期待を持ったり、うまくいってもそれで良いのだろうか、と読者はさまざま気持ちを揺り動かされるのではないでしょうか。アーマと一緒に一喜一憂しながら読んでみてくださいね。

 

また、アーマに一番最初に話しかけてくれたジュディがとてもいい子だったり、ジュディの家で飼っている子犬やたくさんのハムスターがとってもかわいかったり、と、悩みを抱えるアーマの毎日の中で、ほっこりさせてくれる場面もたくさんあり、お話の楽しい部分です。アーマがお父さんと移り住んだボムライン屋敷に住む、ボムライン・デパートの経営者であるボムライン夫妻や、ボムライン屋敷の執事のディリンガム夫妻とのやりとりの様子にもユーモアいっぱいで、はじめは怖いと思っていた人たちへの印象が次第に変わっていくところなども注目どころです。

 

このお話の原題は『The Bad Times of Irma Baumlein』。そのまま訳すと「アーマ・ボムラインのつらかった日々」になるそうです。まさしくこのお話の内容を表しているようですが、もしこのタイトルだったらなんだか読む前からつらい気持ちになってしまいますよね。キーワードが「うそ」ということでそれを生かして、訳者の谷口由美子さんが『アーマのうそ』というタイトルにされたことで、ぐんと読みたくなるタイトルに生まれ変わったように思います。
「うそ」について、これまで自分がついてしまった「うそ」と合わせて考えてみると、感想文も広がっていくのではないでしょうか。
 

『人魚の夏』(あかね書房)

友だちの大事な秘密、どこまで守れる?

どんなお話?

小5になる春、知里は海で呼びとめられ、不思議な約束をします。知里のクラスに自分の子が転校するので友だちになってほしい、というのです。知里を呼び止めたのは、「海野春」という名前の人魚。人魚の春さんは、知里のお母さんの友だちだというのでした。
そして新学期、知里のクラスに「海野夏」という転校生がやってきました。真っ黒でつやつやした髪があごの辺りまでのびてきれいな顔立ちをしています。クラスメイトの男子が「海野さんは、男子ですか? 女子ですか?」と問いかけるのですが、性別がはっきり明かされないまま、夏は知里にだけ、人魚は大人になってから性別が決まること、まだ性別を決めかねていることを打ち明けます。さらに自分が人魚だということを信頼する人に話して一年その人が誰にも話さなかったら、大人になってから陸で生活できる権利が得られる、と言うのです。

そんな中、クラスで街の合唱コンクールに参加する話が持ち上がります。しかし、ある理由から夏は歌を歌う事ができません。そしてその理由も知里だけが知ることになります。こうして、夏と知里には二人だけの秘密ができていくのですが、一緒に仲良くしている仲間から、夏の秘密を教えてほしいと迫られて……。
知里は、夏の秘密を守ることができるのでしょうか。

ここが面白い。

「海野夏」の性別が男であっても女であっても、主人公のぼく・知里はそんなことは関係ないと思い、夏のことをどちらでも好きだと思います。お話の中で、夏が言う「そもそも、人間の男と女は体格とか力とかいろいろちがうみたいだけどさ、学校生活に性別なんて関係あると思う? それに、こんな大切な個人情報がもれるから、『男なのに、女なのに』なんて言われて傷つく人が出てくるんだよ」というセリフが出てくるのですが、男か女かというのは大切な個人情報というところに、考えさせられるものがありました。

 

人魚の「海野春」(海野夏のお母さん)から息子と友だちになってほしいと頼まれたこともあり、知里は夏が困らないようにそっと見守り、時には手助けをするのですが、知里もまた夏がやってきたことにより、教室の中で感じていたコンプレックスを乗り越え、クラスメイトとの関係を改善させていきます。


その後さまざまな出来事をきっかけに、クラスメイトのレオや鈴原さんや福本くんも、知里や夏と仲良くなっていきます。五人で一緒に過ごす夏休みの様子はとても楽しそう。友だちと過ごすかけがえのない日々の輝きがまぶしく感じられる、夏にぴったりの作品です。

友だちの大事なことをどこまで一緒に大切にしてあげられるか、相手を思いやるとはどういうことなのか、について考えながら読んでみませんか。

『トーキングドラム』(PHP研究所)

この楽しさをだれかに伝えたい!

どんなお話?

トーキングドラムとは、西アフリカの太鼓の奏法で、音の高さのちがう太鼓を使って言葉の長短や強弱、高低をまねて、話をすること。つまり話太鼓のこと。本作品では4人の小学生がこのトーキングドラムに挑戦します。

 

主人公の林万来奈(通称マッキー、六年生)が学校が終わった後に通う「放課後子ども教室」。低学年30人ほど、中学年20人ほどがひしめく中で、4人しかいないマッキーを含む高学年のメンバーは肩身が狭く、いつもはしっこの方でひっそりと過ごしています。マッキー以外のメンバーは、愛ちゃん(五年生)、健太(五年生)、田沼伸二(通称タヌ、六年生)の4人。これといって共通点のない4人でしたが、ある日、健太の手作りの楽器を目にしたことをきっかけに、自分たちの力で楽器を作ることに。さらにはその楽器を使ってストリートパフォーマンスにも挑戦してみようと考えるのですが……。


家にも学校にも居場所がないと感じていたり、停電時のこわかった体験でひとりで家にいられなくなってしまったり、人前で発言するのが苦手だったり、マイペースさゆえに周りから変わっていると見られていた4人が、楽器作りと仲間の存在を通して、自信を取り戻していきます。

ここが面白い!

はじめはどうやって手作りで楽器を作るのだろう? 本当に作れるの? と思ってしまいますが、身近な材料を集めて、試行錯誤して作り上げていくその過程にワクワクさせられます。そんなものが使えるの!? とびっくりするような材料も出てきて面白いですよ。4人が作るのは、沖縄のカスタネット、ギロという楽器、両面太鼓、大太鼓、複合パーカッション。この楽器は実際にも作ることができるそうなので、楽器作りを夏の自由研究や工作の宿題にしても良さそうですね。

 

楽器作りを通して、それぞれができないことではなく得意なことを生かしていく姿が印象に残ります。とくにマイペースで変わっていると周りから思われていた健太が、どんどんものづくりの才能を発揮してみんなから一目置かれていくところは、素敵な場面。さらに4人がだんだん息が合って仲間になっていく様子にも注目してみてくださいね。


そして、手作りの楽器を手に4人が挑戦した、ストリートパフォーマンス。うまく言葉にできなかった想いが、リズムにのって飛び出し、みんなの元へ届いていきます。4人が思いきった演奏ができたのも仲間の存在があってこそ。これまでなんとなく居場所のなかった4人は、安心できる心のよりどころとしての場所を見つけられたのでしょうか。演奏の日の「楽しい!」という気持ちと爽快感を登場人物たちと一緒に味わってくださいね。

いかがでしたか。
今回5年生で紹介した作品には、自分の性格や、主に友だちとの人間関係に悩みながら、心地良い関係を探っていく主人公たちの姿が描かれているという共通点がありました。現実の世界でも、自分のことや、友だち関係にいろいろ悩みがあることでしょう。本の中の登場人物の姿や言葉から、なにか勇気づけられたり、前に進む元気をもらえる、そんな本との出会いをしてもらえたらいいなと願っています。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当。書店の児童書仕入れ担当、小学校の図書室司書(8年)を経て、2013年より絵本情報サイト「絵本ナビ」に勤務。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選び、さまざまな切り口で紹介している。編著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
Don`t copy text!