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月別児童書ランキングBEST10

【ランキング】2023年8月の児童書人気ランキング発表! 夏休みに人気だった本は?

猛暑が続いた夏、子どもたちも大人の方もいかがお過ごしでしたか。面白く心に残る本との出会いはあったでしょうか。前回、7月から8/上旬(夏休み前半)の児童書人気ランキングに続いて、8月の人気ランキングをお伝えします。

夏休み中盤から後半にはどんな本が人気だったのか、総合ランキングと課題図書のランキングをご紹介します。

夏休み前半の人気ランキングも合わせてどうぞ。

2023年8月、児童書人気ランキング【2023/8/1~8/30】

新版でさらに読みやすくなったムーミンの物語、夏のお話。

ムーミン全集 新版(4) ムーミン谷の夏まつり

ムーミン谷が洪水に見舞われ、流れてきた家に移り住んだムーミン一家。あやしい家は、どうやら劇場というもので、ドタバタと芝居をすることになりますが…!? 一家離散の大騒動や、スナフキンとちびのミイのたのしい一幕も必見です。

1964年に翻訳出版されてから、55年もの間愛され続けてきた「ムーミン」の物語。大人気のキャラクター「ムーミン」は、この全集が原典となっており、今なおその魅力は増すばかりです。
この度、今の時代により読みやすくするべく、改訂を行いました。
初めての方も、ムーミンのことなら何でもご存じの方も、楽しんでいただける[新版]として、順次刊行して参ります。
1現代的表現、言い回しに整え、読みやすくなりました
2さしえがクリアな美しい線で再現されます
3原語最終版に基づき、より細部にこだわった表現に
4フィンランド最新刊と共通のカバーデザイン
5四六判ソフトカバーでコンパクトに
こどもから大人も楽しめる、大注目のシリーズ、決定版です!

算数の基本概念がよく分かる! ロングセラー『道具と機械の本』のデビッド・マコーレイによる算数図鑑

数と図形について知っておきたいすべてのこと

複雑な仕組みをアイデアたっぷりのイラストでシンプルに解説することで有名な世界的ベストセラー作家・イラストレーター、デビッド・マコーレイによる算数図鑑です。
日常生活でも一生つきまとう算数の基礎知識を、お金の計算や時間の計り方、地図の見方、建物の建て方、乗り物の動き方、表の作り方など60以上のトピックに分け、それぞれマンモスとトガリネズミによる一コマストーリーで解説していきます。
足し算、掛け算、約数、分数、比率、面積、体積、角度、数列、速さ、質量、確率…、言葉や数式だけではなかなか納得できなかった算数の基本概念が、子どもも大人も目からウロコが落ちるようにわかります。

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展覧会開催で、今年は『エルマーのぼうけん』にさらに注目が集まっています♪

エルマーのぼうけん

さあ、リュックサックに道具をつめて、エルマーと一緒に冒険の旅に出発しよう!

これは僕の父さん、エルマーが小さかった頃のある冒険のお話です。ある雨の夜、エルマーは、年取ったのらねこから、「どうぶつ島」に捕らえられているかわいそうなりゅうの話を聞きます。りゅうは、空の低いところに浮いていた雲から落っこちてきたちっちゃな子どものりゅうで、ジャングルの猛獣たちに捕まえられて、川を渡るために働かされているというのです。

エルマーは、すぐに助けに行こうと決心します。早速ねこにどうぶつ島のことや、持っていくものを教えてもらい、旅の準備に取り掛かります。エルマーがリュックサックにつめたのは、「チューインガム、ももいろのぼうつきキャンデー二ダース、わゴム一はこ、くろいゴムながぐつ、じしゃくが一つ、はブラシとチューブいりはみがき‥‥‥」などなどたくさんの道具。そして「どうぶつ島」へと繋がる「みかん島」行きの船に忍び込んだエルマーは、六日六晩たってようやく「みかん島」へ。ここで食料のみかんをリュックいっぱいに詰め込んで、夜の間に「どうぶつ島」へと渡ります。

「どうぶつ島」へ着くと、早速りゅうがつながれている川を探しに、気味の悪いジャングルの中を歩いていくエルマー。ジャングルでは、おかしな喋り方をするねずみや、うわさ好きのいのししに出くわしたり、とら、さい、ライオンなど恐ろしい猛獣たちにつぎつぎと出くわします。猛獣たちはたいていお腹をすかせていて、食べられそうになることもしばしば。さてエルマーは、どんな風に猛獣たちの危険をくぐり抜け、どうやってりゅうを助け出すのでしょうか?

特に注目したいのは、リュックサックに詰めた道具たちの活躍と、見返しに描かれた「みかん島とどうぶつ島のちず」。道具は、はじめはこんなものが何の役にたつのだろう? と思ってしまいそうなアイテムばかりなのですが、エルマーの知恵も合わさって、驚くほどぴったりはまって役に立つ様子にワクワクさせられます。道具を介した猛獣たちとのやりとりもユーモアたっぷり。何回読んでも繰り返し楽しませてくれる場面がいっぱいです。
「みかん島とどうぶつ島のちず」には、エルマーが冒険した場所や、エルマーの足取りが細かく描かれています。地図を見ながらお話を読み進めていくと、よりエルマーと一緒に冒険しているような臨場感が味わえるでしょう。お話の途中で、また一章ごとに、お話を読み終えた後になど、ぜひ地図をたっぷり眺めながら読んでみて下さいね。

日本では、1963年の刊行から50年以上も読み継がれ、幼年童話の最高峰とも呼ばれる本書。作者は、ニューヨーク生まれのルース・スタイルス・ガレットさんという女性で、このお話でニューベリー賞(アメリカで毎年最もすぐれた児童文学作品に与えられる)を受賞しています。さし絵は、お継母さんのルース・クリスマン・ガネットさんによるもの。細かいところまで丁寧に描かれながらも、ユーモアあふれる魅力的なエルマーやりゅう、猛獣たちのさし絵が、物語を一層楽しく盛り上げます。さらに英語版の文字の大きさや書体を決めたのは旦那様のピーターさんだそうで、刊行時は、家族総出でこの本を作るのに取り組まれていたそうです。

この後も、『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』と続いていく、エルマーとりゅうのとびきりの冒険と友情の物語。内容は5才ぐらいから楽しめるかと思いますが、子どもがひとりで読むのは小学2年生ぐらいまでは難しいのではということと、なかなかのハラハラドキドキの冒険となりますので、はじめはぜひ大人が読んで聞かせてあげて下さいね。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=534

2023年6月に再登場の、持ち運びに便利なソフトカバー版もおすすめ♪

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=20545
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第4位は同数の売れで、2タイトルが並びました。

第4位 ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ(新装版)

ネートと一緒にナゾを解こう! はじめてのナゾ解き物語との出会いに。

ぼくはめいたんてい(1) きえた犬のえ(新装版)

9歳のネートは探偵です。
今日もネートの元に1本の電話が入りました。
仲良しの女の子アニーから、なくなった絵を探してほしいとの依頼です。

すぐにアニーのところへ駆けつけるネート。
まず、アニーの話をじっくり聞き、部屋の中をくまなく調べます。
次に、その絵を見た他の人たちー仲良しのロザモンド、弟のハリー、犬のファングについて丁寧に調査していきます。
はたしてネートは、アニーのなくなった絵を発見することができたのでしょうか。

一見、すぐに解けそうと思わせておきながら、意外になかなか解けないナゾの面白さと、ネートのツボを押さえた探偵ぶりに子どもも(大人も!)たちまち心を掴まれてしまいます。
また9歳という年齢でありながら、どんなナゾが来ても常に落ち着き、周りから頼りにされているネート。子どもたちは、自分と同じぐらいの年齢の子の活躍とカッコよさにたちまち憧れてしまうのではないでしょうか。一方でパンケーキが大好物で、気が付けばいつもパンケーキを食べているところには親しみを感じてしまいますね。

こちらは、1982年の発売以来、たくさんの子どもたちに愛され、読み継がれてきた「ぼくはめいたんてい」シリーズの第1巻目。マージョリー・W・シャーマットさんによる全17巻となるこちらのシリーズは、5歳ぐらいから小学校低学年の子どもたちにちょうど良いハラハラさで、子どもたちがはじめて物語の楽しさに出会えるシリーズでもあります。つぎつぎにネートに降りかかるナゾ解きの面白さはもちろんのこと、巻ごとに増えていく個性的な登場人物、ネートからママへの置き手紙の内容など、読めば読むほど多くの楽しみをも発見できるでしょう。

すべての漢字にふりがながついているので、はじめての読み物としてもぴったり。ひとり読みに移る前に、まずは読んであげながら親子で一緒にナゾ解きを楽しんでみるのもいいですね。シーモントさんの温かくユーモアたっぷりの挿絵と、訳者の小宮由さんの柔らかな語り口も、子どもたちの読書をやさしく応援してくれます。お話の最後には「めいたんていのこころえ」もついていて、もし周りでなにかナゾが起きた時の役に立つかも!? さあ、ネートとどんどんナゾを解いて、一緒に名探偵になろう!

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

http://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=11928 楽しい登場人物もいっぱい!

第4位 大きい1年生と小さな2年生

子どもたちが1、2年生のうちに出会わせたい名作!

大きい1年生と小さな2年生

お話に登場するのは、体は大きいけれど弱虫の1年生のまさやと、体は小さいけれどしっかり者でけんかも強い2年生のあきよです。読む子どもたちは、それぞれどちらに親近感を覚えるでしょうか?

まさやは1年生になったばかり。家から学校までの「がけのあいだのみち」がこわくて仕方がありません。狭くて暗いし、木はしげっているし、時々カラスも鳴いていてこわいのです。けれどもお母さんからひとりで学校へ行くのよ、と言われ困っていると、次の日、2年生の子どもたち四人が迎えにやってきて、まさやはあきよに手をつないでもらい、登校するようになります。まさやはあきよがいるだけで心強い気持ちになり、だんだんあきよの強さとしっかりとした様子に憧れるように‥‥‥。一方であきよもまた、まさやを見守ることによって、体は小さくても自分は大きいのだという自信が湧いてくるのでした。

そんなある日、事件が起こります。
あきよが好きな「ホタルブクロの花」を、「じんじゃの森」に探しに行くことになったあきよとまり子(あきよの友達)とまさや。傷を作りながらもあちこち探して、やっとの思いで二つだけ手にするのですが、帰り道に3年生の男の子たちとケンカになり、踏みつぶされてしまいます。その時、あきよが泣く姿を始めて目にしたまさやは、あきよのために「ホタルブクロの花」を取りに行こうと決意するのでした。そして1週間後の日曜日、「ホタルブクロの花」がたくさん咲いているという遠い場所にある「一本スギの森」に向かって歩き出します。ひとりで学校へも行けないまさやが大きな勇気を出して頑張る姿がみどころです。

こわいものがたくさんあるまさやも、体が小さいことに強いコンプレックスを持っているあきよも、それぞれの悩みは本人たちにとっては深刻なものでしょう。大人も読んでいるうちに自分が子どもの頃に感じていた悩みや感情を思い出し、子どもたちが目にしている毎日や世界がありありと感じられるような体験をするのではないでしょうか。中でも「しっかりする」というのは、いったいどういうことなのか? とまさやが考える場面では、小学生になったらしっかりしなさい、しっかりしなくちゃいけない、と言われるのは昔も今もずっと変わらないテーマなのだなあ、と思わせられました。

1970年の刊行以来、50年以上も読み継がれているこちらのお話は、『おしいれのぼうけん』『ロボット・カミイ』でおなじみの児童文学作家古田足日さんが残された名作です。小学1、2年生の子どもたちが抱える不安や悩みはどんなに時代が変わっても変わらない普遍的なものであること、しかし、きっかけさえあれば、短い間でぐんと成長するたくましさを秘めていること、まさやとあきよがお互いに関わりながら大きく成長していく様子に子どもは子ども同士の関わりの中で育つ、という真理を見たりなど、何度読んでも胸を打つものがたくさんあります。

子どもたちが1、2年生のうちにぜひ出会わせてあげたい作品です。
しかし長さは166ページとボリュームがありますので、1、2年生でひとりで読めるという子はなかなかいないでしょう。ハラハラする場面もたくさんありますので、大人がお話の案内人となって読んであげることをおすすめします。各章の表題も、「ぼく、おなか すいたあ」「子どもには、たいていのみちは、はじめてのみち」「しんせつなおじさんか? ゆうかいはんか?」など、とても魅力的。章ごとに毎日1章ずつ読んでいくというのもいいですね。子どもたちへの応援の気持ちをたくさん込めながら、ぜひご家庭や教室で、読んでみて下さいね。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第6位 さかさまがっこう

学校で起こることが全部さかさまになっちゃったら……!?

さかさまがっこう

がっこうでつかうおはじきを わすれてしまっただいくん。先生におこられるかなぁと心配しただいくんはさかさまのおまじないをとなえてみました…。
すると、ふしぎなことに、わすれものをしても、テストのてんすうがわるくても、先生はニコニコしています!

第7位は同数の売れで、4タイトルが並びました。

第7位 ラベンダーとソプラノ

頑張り屋の小学生、中学生の皆さんへ。頑張ることに疲れたら読んでほしい一冊

ラベンダーとソプラノ

「楽しくやるってことを、頑張らなくていいってことだと思ってるよね。」
「二十四時間、毎日毎日、合唱コンクールのことだけを考えていたら、うまくなれるの?」
「まわりと競争して一番をめざすことだけが、えらいってわけじゃないじゃん。」

どのセリフも心の真ん中にささるような、ドキッとするやりとり。
クラスメイトや仲間と何か一緒に取り組んだことがある小学生、中学生の皆さんは、似たような場を体験したことがあるでしょうか。

中心となる舞台は、学校の合唱クラブ。合唱コンクールに向けて「今年こそ金賞を」と力の入る張りつめた空気の中で、「頑張る」ことに対して、さまざまな立場や考え方の人が登場します。部長としての責任感から部員や下級生への指導に厳しさが増していく部長の穂乃花、合唱クラブの厳しさに耐えられなくなり不登校になってしまった優里、合唱部の雰囲気と優里のことでもやもやしながらもなかなか自分の意見が言えない、このお話の主人公、真子。合唱クラブには所属していないけれど美しいボーイ・ソプラノの歌声をもつ朔(はじめ)、そして朔が参加する商店街の「半地下合唱団」の個性的なメンバー。

朔に誘われて「半地下合唱団」の練習に参加するようになった真子は、発声練習も基礎練習もせず声量がバラバラながらも、「半地下合唱団」の全員が楽しそうに歌っている姿に打たれます。さらに、思っていることをしっかり言葉にできる朔やメンバーとのやりとりを通して、だんだん自分の言葉を見つけていきます。

元々は友だちだった部長の穂乃花がどんなに部員に厳しい言葉をかけても何も言い返せない真子の姿に共感する人も多いことでしょう。けれども、どうしたら良いのか、ずっと悩んで考え続けていたことで、真子の内側の思いはしっかりとした言葉となっていきます。穂乃花や顧問の先生に対して真子の言葉があふれ出る場面には、お話を読みながら同じようにもやもやしていた私たちの気持ちも外に出ていくようで、清々しさを覚えたり、励まされるのではないでしょうか。さらに、合唱クラブの在り方に対して全部を否定するのではなく、相手にとっての「正しさ」を認めながらどっちが間違っているとか悪者というわけではない、という考えには、人と人とのコミュニケーションにおける大切なことを教えてもらった気がしました。

「力強く、澄んだ風に物語や想いがとけると、ラベンダーみたいな優しい香りがする」
小学校の入学式の時に、はじめて聴いた合唱クラブの歌に、いい香りのするラベンダーのような風が吹いてきたのを感じた真子。それ以来ずっと憧れ、四年生で期待に胸を膨らませて入った合唱クラブ。さて、思いを伝えた先の合唱クラブの歌声は、またラベンダーの香りを吹かせることができるのでしょうか。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

https://www.ehonnavi.net/ehon00.asp?no=176828

第7位 メメンとモリ

「新美の巨人たち」でも紹介された話題の一冊。「人は何のために生きてるの?」の3つのお話。

メメンとモリ

身も蓋もない言葉の中にだけ、
希望を見出せるときもある。
ヨシタケシンスケが描く
「人は何のために生きてるの?」の3つのお話。

『メメンとモリとちいさいおさら』
メメンが作ったお皿を割ってしまったモリ。
「世界にひとつしかないお皿なのに…」といつまでもクヨクヨしているモリに、
メメンは「大丈夫よ、また作ればいいんだから」と励まします。

『メメンとモリときたないゆきだるま』
夜のうちに降った雪。メメンとモリは次の日の晴れた朝、張り切ってゆきだるまをつくりました。
でも雪は足りず、晴れて溶けかかり、できあがってゆきだるまは想像していたものと違いました。
複雑な顔をしてゆきだるまを見つめるメメンとモリ。
でもゆきだるまは、そんなふたりの顔を冷静に見ていたのです。

『メメンとモリとつまんないえいが』
つまらない映画を見てしまったメメンとモリ。「時間を損しちゃったね」と話しているうちに、
モリは「みんなは楽しいことをしているのに、ぼくだけ損をしているみたい」と思いはじめます。
そんなモリにメメンは「いきものはべつに楽しむために生きているわけじゃないからね」と言うのですが…。

 

第7位 ふたりはともだち

40年以上愛され続ける友情ものがたりの名作

ふたりはともだち

仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、可笑しくて、ちょっぴり切ない……様々な愛すべきエピソード。アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズは幼年童話の傑作として、子どもから大人まで、たくさんの人たちに40年以上も愛され続けています。

そのシリーズ第1作目が『ふたりはともだち』、5つのお話が収録されています。

春が来たからと大急ぎでがまくんの家に走っていき、「おきなよ!」と大きな声で呼びたてるかえるくん。お日さまがきらきらして、雪も溶け、新しい一年がはじまったかと思うと、いてもたってもいられないのです。ところが、がまくんは布団の中。もう少し寝ていたいのです。11月から眠っているがまくんは「5月半ば頃にまた起こしてくれたまえよ。」なんて言うのです。そこで、かえるくんは……?

がまくんを外に連れ出して遊ぶためなら頭の回転だって早くなるかえるくんと、カレンダーに合わせて簡単に5月だと思い込んでしまうがまくん。最初のお話「はるがきた」で、幼さと可笑しさがたっぷり詰まったふたりのキャラクターを存分に味わうことができます。

続く「おはなし」と「なくしたボタン」では、それぞれのやり方でお互いを思いやっている様子(大いに巻き込みながらね)を、「すいえい」ではちょっぴりブラックな面をのぞかせつつ、思いっきり笑えるエピソードを披露してくれます。

すっかりふたりの世界観に夢中になった頃、登場するのが最後の「おてがみ」です。

悲しそうな顔で玄関にすわっているがまくん。なんでも「もらったことのないお手紙を待つ時間」なんだと言うのです。それを聞いたかえるくんは、がまくんに内緒でお手紙を書くことにします。ところが、配達を頼んだのがかたつむりくんだったので……。

国語の教科書に採用されたことで、今では多くの子どもたちに知られているのがこのお話。いずれ届くことも、その内容までもわかっているお手紙をじっと待つがまくんとかえるくん。その幸せそうな様子に、「手紙」の持つ力を感じずにはいられませんよね。

シリーズ4冊。がまくんとかえるくんのキャラクターを知れば知るほど、どのお話も読み返したくなる珠玉のエピソードばかり。日本では三木卓さんの翻訳で楽しむことができます。

(磯崎園子  絵本ナビ編集長)

第7位 モモ / 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

忙しい! という方にこそ読んでほしい名作。もし、あなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら……?

モモ / 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語

赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人間が平等に持っている24時間。自分の時間を自由に使えるのは当たり前? でも、もし、あなたの時間が、知らないあいだに盗まれていたとしたら……?

どこからともなくやって来て、町の円形劇場の廃墟に住みついたモモ。みすぼらしい服装に、ぼさぼさの巻き毛をした小さな女の子モモは、豊かな想像力と、特別な力を持っていました。モモに話を聞いてもらうと、ふしぎなことに悩みがたちどころに解決してしまうのです。

ある日、町に灰色の男たちが現われてから、すべてが変わりはじめます。「時間貯蓄銀行」からやって来た彼らの目的は、人間の時間を盗むこと。人々は時間を節約するため、せかせかと生活をするようになり、人生を楽しむことを忘れてしまいます。節約した時間は盗まれているとも知らず……。異変に気づいたモモは、みんなに注意をしようとしますが、灰色の男たちに狙われるはめになります。

不気味で恐ろしい灰色の男たちに、たったひとりで立ち向かうモモ。彼女をひとりぼっちにしようとする時間泥棒たちのずるがしこい作戦の数々! いったいどうなっちゃうの? と、予想できない展開にハラハラドキドキ、目が離せません。そんなモモに手を差しのべるのは、時間をつかさどる不思議な老人マイスター・ホラと、ちょっと先の未来を見通せるカメのカシオペイア。彼らとモモとの哲学的なやりとりは、私たちに対する問いかけであり、「時間とは日々の生活であり、その人自身である」という真理を教えてもくれます。そして疲れてしまったモモの心を、温かいもので満たしてくれるのが、黄金色のクロワッサンとホットチョコレート! この最高の組み合わせは絶対に忘れられません。

「モモのところに行ってごらん!」困ったことがあるとき、人々はこう言います。モモは、生きていく上で何が一番大切か、何を守るべきかを知っているのです――友だち、想像力、自由。遊ぶ時、モモと子どもたちは想像力を全開にして驚異の大冒険に乗り出します。その興奮を、みなさんもぜひ一緒に体感してください。「時間がない」「そんなの役にたたない」なんて口にしがちな、忙しがっているすべての子どもと大人に読んでもらいたい一冊です。この物語を読めば、時間に対する考え方が変わってしまうかもしれません。

2023年8月、小学生向け読み物、総合ランキング:第11位から20位はこちら

2023年8月、課題図書ランキング

さて、今年の課題図書、8月はどんな本が人気だったのでしょう。読書感想文用の駆け込みもあったようで、7月のランキングから少し変化がありました。課題図書には読み応えのある面白い本が揃っていますので、夏の宿題とは別に、楽しむための読書として手にとってみることをおすすめします。

中学校の部より『人がつくった川・荒川 水害からいのちを守り、暮らしを豊かにする』

人がつくった川・荒川 水害からいのちを守り、暮らしを豊かにする

首都圏をつらぬき、流域に約1000万人が住む荒川は、人の手でつくられた川であることを知っていますか。かつて、荒ぶる川=荒川の流れを変えることで江戸の繁栄はうみだされ、たび重なる洪水から人々を守ってきました。川の歴史と流域の暮らしの変化をていねいに追いかけながら、地球温暖化が原因とされる近年の大規模な水害をどう防ぐかまで、荒川の過去・現在・未来を旅します。

低学年の部より『よるのあいだに… みんなをささえる はたらく人たち』

よるのあいだに… みんなをささえる はたらく人たち

昼のあいだ、いろんな人が仕事をしている。

朝早く、おいしい朝食を買おうと、人々がパン屋を訪れる。
彼らは、電車や乗って、会社に向かう。
会社のビルでは、大勢の人たちがフロアを行き来して、働いている。

でもじつは、夜のあいだにも、いろんな人が仕事をしてる。

夜は道が空いていて、物が運びやすい! トラックの運転手さんが夜のあいだに小麦粉を届けてくれるから、パン屋さんは朝早くにパンを焼ける。
ビルの掃除をするのだって、人のいない夜のほうがやりやすい。夜のあいだに清掃員さんが掃除をしてくれているから、みんな気持ちよくフロアを使える。
それから、線路の工事をしてくれる、作業員さん。電車が走っていない夜のあいだに、線路のトラブルを解決して、安全を守ってくれている。

多くの人が寝静まる時間に働く人々をテーマにした、ユニークな視点のお仕事絵本。ひとつひとつのお仕事をくわしく掘り下げていくのではなく、紹介するお仕事のそれぞれが、互いに、あるいは昼のお仕事と、どう関わり合っているのかということについて、さまざまな表情を見せる夜の町でゆっくりと視点を移しながら紹介していきます。

みんなが眠りについている時間にも、途切れることなくどこかでだれかが働いていて、そういうお仕事ひとつひとつが、人々の生活全体を支えている。考えてみれば当たり前だけど、自分で気づいて、思い描くのはむずかしい。そんなぼくらにあたらしい視点で社会を見つめる目をくれる、「ありがとう!」のイマジネーションにあふれた一冊です。

(堀井拓馬  小説家)

低学年の部より『それで、いい!』

それで、いい!

きつねは絵を描くのが大好きです。何かにすごい! と気持ちが動いたら、勢い良くどんどん描いていきます。けれども、絵を見たやまねこから「ほんものとは ずいぶん ちがうな、へんなのー。」と言われたり、あひるからも「もっと きちんと いろを ぬらなくては だめですよ。」と言われてから、急に周りの目が気になるようになってしまいます。

そんな中、展覧会に絵を出品することになったきつね。みんなを見返したくて、「すごい絵」を描いてやるぞ! と意気込みますが、描いても描いてもこんな絵じゃだめなんじゃないか、もっとすごいものを描かなくちゃと焦ってばかり。描けば描くほど楽しくなくなってきて、みんなにどう思われるかばかり心配になって、とうとうきつねは絵を描けなくなってしまいました。
その後、ためいきをついてばかりのきつねでしたが、てつぼうができずにからかわれている友だちのうさぎとのやりとりを通して、大切なことを思い出していきます。
そして展覧会の日がやってきて……。

自分の好きなこと、やりたいことに対してただ気持ち良くやればいいのに、つい周りの目が気になってしまうこと、子どもたちにもきっとたくさんあることでしょう。なかなか自信が持てなくて、周りの意見が気になってしまうきつねの姿に共感する子も多いのでは? きつねの姿と友だちのうさぎのやりとりを通して、とても大切なメッセージが伝わってきます。

絵本から童話、紙芝居まで、子どもたちの心の動きを丁寧に綴った作品をたくさん生み出されている礒みゆきさんが描くとっておきのおはなしは、うさぎが登場するあたりからの展開に驚きがいくつも隠されていて、何度もハッとさせられると同時に、温かい気持ちが充満してきます。はたこうしろうさんが描く、きつねの表情や動きも生き生きとして、なんて魅力的なのでしょう。さらに、きつねが描いた絵もおはなしの中で見ることができるのですが、その絵もとっても素敵なんです。

「かきたいから かく。かきたいものを かく。」
きつねが自分に向けてつぶやくこのセリフは、絵のことだけでなく、いろいろなことに共通する大切なこと。小学1、2年生向きのおはなしではありますが、小学生全員に伝えてあげたいメッセージが詰まっています。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第4位は同数で4タイトルが並びました。

第4位 スクラッチ

中学校の部より『スクラッチ』

スクラッチ

「もういやだ―――!!! コロナふざけんな―!!」
すぐに気持ちを外に表す鈴音(すずね)と、めったに取り乱すことなく、平常心を常としている千暁(かずあき)。バレー部のキャプテンの鈴音は、コロナ禍で「総体」(総合体育大会)が中止となり、憤りを隠せません。一方、美術部部長の千暁も出展する予定だった「市郡展」の審査が中止になってしまいます。平常心で、大きなパネル絵の作成に黙々と取り組む千暁ですが、絵を見た顧問の仙先生に「君はこの絵を描いていて楽しかったか?」と問いかけられ、初めて自分の絵がわからなくなってしまいます。

ある日、鈴音は千暁の描きかけのキャンバスを目にします。さまざまな運動部のメンバーがスポーツをする姿を描いたその絵は、はっとするほど美しいあざやかな色づかいと躍動感にあふれていて、鈴音は感動します。真ん中でバレーのアタックをしているのは、多分、私。けれどもその直後、鈴音は不注意で絵に墨を飛ばしてしまい……。

コロナ禍という状況の中、正反対ともいえる性格の、千暁と鈴音の思いが時に交錯しながら、二人の語りで物語が繰り広げられていきます。そこにクラスメイトの文菜や健斗の悩みが加わり、中学三年生の夏が展開されます。

注目したいのは、コロナによって引き起こされるさまざまな出来事にとまどいながら、自分の本当の気持ちを模索したり、周りの友だちや先生や家族の気持ちをあれこれ慮る登場人物たちの姿。それぞれが関わり合う様子に素敵な場面がたくさんあります。とくに素敵だと感じたのは、千暁と、美術部の幽霊部員健斗とのやりとり。お互い別世界の人間だと思っていたふたりが、実はお互いのことを「すごい」と思っていたことを知り、ふつふつと笑い合いながら心を通い合わせていく場面はとても優しく、爽やかです。また、不思議なキャラぶりを発揮している顧問の仙先生が、自分らしい絵を見つけるために奮闘する千暁をそっと見守り、何気なくサポートする数々の場面も大きなみどころです。

本書が刊行された2022年の夏は、未だ出口の見えないコロナとの共存生活が続いています。しかしこの物語がしっかりと読者に見せてくれるのは、行事やイベントが中止になろうとも、マスクが外せなくとも、私たちの日常は消えてしまったわけではないし、薄まったわけでもないということ。また、コロナであろうとなかろうと中学三年生の登場人物たちが進路に悩んだり、自分らしい在り方を探し求める姿は、読む私たちを大いに励ましてくれるのです。

千暁が真っ黒なキャンバスに「スクラッチ手法」で力強く刻んでいった先に見つけるひとすじの光――。その光のように、目をそらさなければ必ず前に進める、希望が見えてくるということを提示してくれる本書は、ふと立ち止まってしまった時にも私たちの背中を押してくれるにちがいありません。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第4位 けんかのたね

低学年の部より『けんかのたね』

けんかのたね

 

忙しい一日を終えたお父さんが家に帰ると、家の中は大さわぎ! いぬは、ねこをおいまわし、4人のきょうだいは大げんか。「いったい、だれをしかっていいのやら……」と途方にくれるお母さん。

「わたしは、わるくない!」と、いちばん上のおねえちゃんのドラ。
「ちがう! ぼくのせいじゃない」と弟のフランク。
「あたしのせいじゃない」と妹のエミリー。

つぎつぎに自分のせいじゃない! といいわけする子どもたち。
一方、いぬのボンゾーとねこのプッスはいいわけができません。

結局すえっ子のミーナの言い分から、もめごとのはじまりはねこのプッスということに。そのプッスが向かったのは、ねずみのところ。「もとはといえば、おまえがわるいんだよ!」とねずみに襲いかかろうとするプッスに対して、ねずみは意外な行動をとって……。ここからお話は意外な方向へ展開していきます。

ひとつの「たね」からどんどんもめごとが繋がっていくさまと、その逆が起こっていくさまを同時に目のあたりにできるところが、このお話の面白さ。とくにドタバタのケンカ劇が修復していくさまには、しっかりと心に残るメッセージがあります。子どもたちにとっても大人にとってもどこか身に覚えのある身近な日常の光景だからこそ、より心に響いてくるものがあることでしょう。

『おやすみなさいフランシス』でおなじみのラッセル・ホーバンさんが描く、ユーモラスながらも心に残る温かい家族のお話。小宮由さんの生き生きとした会話で進む語り口は、子どもたちに読んであげるのにもぴったり。登場人物のセリフの口調の違いからそれぞれの性格もよく伝わります。挿絵を描かれているのは、小学校の国語の教科書の表紙画なども手がけられている大野八生さん。けんかというテーマを和らげる、大野さんの明るくコミカルな絵は親しみやすいですね。中でも特にいいなと思った挿絵は、「けんかのたね」がどんどん繋がっていく様子がひと目で分かる表紙と、ねずみが丁寧に暮らしていることが伝わる壁の中のねずみの住まいの様子の絵。ぜひお話と一緒に楽しい挿絵の細部も楽しんでみて下さいね。

小学1年生ぐらいから大人の方まで、幅広い年齢の方におすすめしたい絵童話です。

(秋山朋恵  絵本ナビ編集部)

第4位 給食室のいちにち

中学年の部より『給食室のいちにち』

給食室のいちにち

病院の給食室に勤務経験がある、児童文学作家+おいしい食べもののコミックエッセイで人気の画家が、給食室の現場をリアルに再現!
給食はどうやってできるの? 栄養士ってどんな仕事?身支度、検収、打合せ、調理、片づけ、食に関する指導、献立づくりまで、小学校の給食室と栄養士の現場をいきいきと描きます。安全でおいしい給食はどのようにして教室まで届けられるのか、楽しく学べる絵本です。

第4位 ライスボールとみそ蔵と

中学年の部より『ライスボールとみそ蔵と』

ライスボールとみそ蔵と

古い蔵で手作りみそを作る家に生まれたジュンは、お父さんから「もっとみそに興味を持って」と言われるのがいやでたまりません。
そんな時、ロンドンからの転校生、ユキちゃんに「蔵を見せてほしい」とたのまれます。
これがきっかけで、ジュンの心はだんだんと変化して…。
ジュンがみそ蔵で思いついたアイデアとは?

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これから秋に向けて、より落ち着いて読書に集中できそうな良い季節がやってきます。気になっていたけど夏に読めなかった! というような本があったら、再チャレンジしてみてくださいね。

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秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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