授乳期間中の母体の骨密度について
妊娠期、授乳期においては、母体の栄養状態にも留意する必要がありますが、人によっては授乳中の母体の骨密度に留意する必要があります。
妊娠中よりも授乳中の母体の骨密度は低下しやすい
妊娠中は母体から胎児に栄養供給するにあたり、母体において女性ホルモンのエストロゲンや活性化ビタミンDなどが上昇することで骨密度も上がり、母体が摂取した食品の消化にあたる腸管からカルシウムの吸収が進みますが、足りない場合は母体の骨からカルシウムが溶け出し胎児に栄養供給することになります。
骨から溶け出す量が多いと、母体の骨密度が低下することになり、妊娠初期と比べて出産後2週間において骨密度が約4%低下していた、との報告もあります。
出産後はエストロゲンが低減し、プロラクチンが上昇し、母乳が産生されやすくなります。そうすると骨密度を上昇させる働きが少なくなる状態で母乳産生に母体からカルシウムが流出する状態とも言えます。
授乳終了後、母体の骨密度は回復していきますが、授乳期間が長くなるほど母体の骨密度が低減する場合があり、回復が困難になる可能性もあります。
出産後、授乳と骨密度の関係
骨密度が著しく低減すると、骨折、骨粗しょう症のリスクが高まりますが、骨密度の維持には女性ホルモンが関与しているため、閉経後の女性は骨粗しょう症リスクが高まります。
閉経後だけでなく、生理が停止している間は、エストロゲンが低く骨密度が低い状態になりやすくなります。そのため、個人差がありますが、出産後の生理再開までの間は骨密度が低くなりやすい状態でもあります。
また、授乳をすることでプロラクチンが上昇しエストロゲンが低減するため、継続授乳中は生理再開しにくく、授乳期間が長くなると、生理停止期間が長くなり、骨密度低下状態を招きやすくなります(授乳を始め6カ月間後には、大腿骨や腰椎で約5%の骨密度減がみられる、との報告もあります)。
断乳をすると生理再開がされやすくなります。授乳中でも夜の授乳回数が減り、熟睡できるようになると生理再開されやすくなってきますが、授乳期間を6カ月以上と考えている場合や、生理停止状態が6カ月以上経過している場合は、母体の栄養・健康状態にも留意できると望ましいでしょう。
母体の骨密度維持において
極端なダイエット中の方において生理停止することがありますが、出産後に食事の量を極端に抑えたりすると、生理再開まで時間を要することがあります。
授乳期には高カルシウム食であっても、低カルシウム食であっても大腿骨の骨密度は減少し、海綿骨も皮質骨も薄くなる、との報告もありますが、授乳時にカルシウム欠乏食では血清カルシウムを減少し、副甲状腺ホルモンが上昇し著しい骨欠乏を引き起こす、との報告や、授乳期の骨密度低下の一因は血清カルシウム量の減少にあると考えられるが、血清エストラジオールの分泌の減少に起因して腸からのカルシウムの吸収が低下することも起因する、との報告もあります。
骨密度が低い状態にある場合の要因としては以下等を挙げる意見があります。
・生理停止(出産後の再開まで、閉経後含む)
・栄養が不足(カルシウム、ビタミンDなど)
・生理はあるが無排卵
・もともと骨密度が低い傾向にある方(家族性含む)
・運動量が少ない
・日光照射量がかなり少ない
・過度の飲酒
・過度の喫煙
・コーヒーの多飲(利尿作用が強くはたらいている状態)
・ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)の長期服用
・胃の切除後
もともと家族、近い親族において骨粗しょう症の傾向がある方においては、生理停止時では特に、バランスよい食事、運動、日光にあたるなど、出来得る対策を取り入れていけることが望ましいでしょう。
参照:「妊娠・授乳・離乳期における骨密度の変化と要因 文献による検討」、「長期授乳婦の骨密度に及ぼすカルシウム摂取量増大の効果および長期授乳後の骨密度の回復」
株式会社ウィルモア
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