【クリスマス】大切なものはたくさんあるけれど…
あと1時間、あと10分だけ。
どうしても今日中にこの仕事を終わらせておきたい! そうすれば明日はもっとスムーズに事が進むから。
これって、とても大事なこと。
「こっちに来て!」
呼ばれているけれど、もうちょっと待って。今目の前にある、これだけ片付けてしまえばスッキリするから。
これだって大事にしてること。
ダイエットもしたいけど、今日はどうしてもこの美味しそうなランチが食べたい。節約しているから、自分に似合うってわかっていてもこのお洋服は買わない。可愛くて仕方がないけれど、我慢して息子には厳しく接する。だけど本はいくらでも買っていいと決めている。朝、家を出る時は右足から…。
私たちは、大人になればなるほど「大切にしていること」が増えていき、何かある度に「どちらが大切か」を選択していかなくてはならない。そして、日常の中で沢山の細かい選択を迫られているうちに、いつのまにかどれが一番「大切なこと」なのか、わからなくなってくるのです。
だけど。
目の前で、心の底から、心臓のありったけでするこんな「願いごと」を見てしまったら。なんだか、居ても立ってもいられなくなってくるのです…。
テオのふしぎなクリスマス
「流れ星だ」
テオは目をとじ、両手のこぶしをぎゅっとにぎり、舌をかみ…。お父さんがいつも言っていたのです、願いごとをするときは、心臓のありったけで願わなくちゃいけないって。テオは心臓のすみからすみまで、全部をこめて、願いごとをします。
「ひとりぼっちじゃなく、いられますように」
今夜は、クリスマスイブです。なのに、テオのお父さんとお母さんは、いつものように仕事で留守。ベビーシッターは、テオをほったらかして居眠りをしているのです。
すると、テオのうしろで、クリスマスツリーが、さわさわと音を立て…古ぼけたツリーの飾りたち(天使、ブリキの兵隊、コマドリ、木馬)が動きだします! テオは、とりあえずひとりじゃない。でも、彼らはそれぞれ自分たちの願いがあるようで、それを叶えるためにみんなで外へ出かけ……。こうして、テオと飾りたちの一夜限りの冒険がはじまります。
みんなが本当に大切にしているものを次々に見つけていくなか、テオの心からの願いは叶うのでしょうか。
読み応えのあるストーリーだけれど、愛らしく、カラフルで華やかなイラストが全ての場面を彩りながら進んでいくので、ちっとも長さは感じません。そして、少し切なさを感じるテオの置かれた環境だって、優しく包み込んでくれているようです。そして、最後。感動のクライマックスの場面へと連れていってくれます。テオ、お父さん、お母さん、どの立場の視点から読んだとしても、少し鼻の奥がツンとくるような奇跡を起こしたのが、まさかあの子だったとは!
表紙はまるでツリーの飾りのようにキラキラとひかり、表紙カバーをはずせば更に驚きの装飾が入っている素敵な装丁は、もちろんクリスマスプレゼントにぴったりな一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
絵本に登場するのは、自分が一番「大切にしているもの」が見えている人(おもちゃ)たち。そして、その願いは深ければ深いほど、きっと叶うものなのかもしれません。だって、テオの願いは、確実に世界を少し動かしたんですから。
さあ。この絵本を手にしたら、すぐに大切な人のところに駆けつけなきゃね!
2017 新刊クリスマス絵本!
磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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