絵本ナビスタイル トップ  >  絵本・本・よみきかせ   >   絵本ナビ編集長の気になる1冊   >   【編集長の気になる1冊】これって、人見知り……?『スモンスモン』
絵本ナビ編集長の気になる1冊

【編集長の気になる1冊】これって、人見知り……?『スモンスモン』

 

その子の家は、自分たちが住んでいる町のちょっとはずれた所にあり。
歳のはなれたお兄ちゃんやお姉ちゃん、そして小さな弟や妹までいるらしい。
家では、どんな時間を過ごしているんだろう……。

 

小学校高学年になってふいにやってきた転校生。彼女は最初から活発で明るくて、あっという間にクラスの人気者になっていく。運動神経は抜群で見た目はボーイッシュ。性格だってサバサバしていて、大きな声で笑うその姿に、私はあっという間に憧れの気持ちを抱くのです。

 

だけど毎日一緒にいれば、当然それだけじゃない彼女の姿も見えてくる。あんなに走るのがはやいのに、泳ぎの時間だけはまるで別人みたいにダメダメで。いつも笑っているものだと思ったら、急に怒り出すことがあったり。そもそも、引っ越してくる前の話は聞いたことないし、学校が終わっても意外と一人でいることの方が多い。

 

知らない部分が見えれば見えてくるほど、だんだんと疎遠になっていき。結局あまり友達にはなれなかったのです。


大人になった今。近づけなかったのは、知ろうとしなかった私の方に原因があるのだということは簡単にわかる。その先には、きっと魅力的な彼女や彼女をとりまく世界が広がっていただろうに。

 

だからこそ、今は少し努力をする。

 

どんなに知らない世界だったとしても。思いもよらない面が見えたとしても。ちょっとぐらいギョっとするようなことがあっても!? きっとその先に待っているのは……。

スモンスモン

スモンスモン

可愛らしいようだけど、なんだか不思議な風貌をした子がこちらを見て微笑んでいます。手にはまるくて美味しそうな果物を持っているみたいだけど……そこは、どこ? ちょっとだけ不安な気持ちになりつつ、絵本をめくってみます。

ゴンゴン星に住むスモンスモン。
朝になると、オンオンとロンロンをヨンヨンでつるし、
トントンで川をくだります。

ポンポンのそばではヨンヨンがのび、ロンロンがたくさん実っています。
スモンスモンはトントンにロンロンをつみこんで歩いていくと、
ストンストンを運ぶクロンクロンたちに出会い。

……え、なになに。
なにを言っているの?
ロンロンってなに、ポンポンってどれ?
ストンストンとクロンクロンって、いったいなんなの!?

いきなり頭が混乱してしまったあなた。
大丈夫です、私も同じ状態です。
特に、みっしりずっしりのストンストンが登場した時には、もう。

ところが、気を取り直してもう一度スモンスモンの世界に入ってみると。
奇妙な姿の彼らが愛らしくてたまらなくなり。
その素朴で優しい行動一つ一つに魅了され。
何度でも声を出して読むうちに、どんどんゴンゴン星のことがわかってきた気になって。
「あ、ゾンゾンにはきをつけて!」
……すっかり虜です。

さあ、あなたものぞきたくなったに違いない「スモンスモンの世界」。
大人も子どもも関係ありません。どっぶり浸かってみてくださいね。
ドイツからやってきた、異彩を放つ注目絵本です。

(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

みっしりずっしりしているストンストンの形態が私の理解の範疇を超えたので、一度は絵本を閉じ、棚に戻してしまったけれど。

 

「なんでこんな姿なの?」
「え、そんなところがのびちゃうの?」
「ゾッとするくらい力持ちだねえ…。」
「私だったら、ふかふかのポンポンの上にオンオンを乗せて、ヨンヨンで自分をゆわえて夜を迎えるのがいいな。」

 

気がつけば、すっかりあっち側の世界の住人になっている私がいる。
その発言には、遠慮もなにもない。

 

少しの努力のつみかさねの結果。
私はスモンスモンに近づくことができている。
いや……人見知りがなおった、だけなのかもしれない。

合わせておすすめ!

はじまりの はな

はじまりの はな

渡り鳥のローザは、自分のほっぺたと同じあかい色をした、〈ほっぺのはな〉が大好き。秋になり、たびだつときがきても、〈ほっぺのはな〉の種をはなそうとしない。渡りのとちゅう、つかれて川に落ち、仲間とはぐれたローザは、犬のミールと、飼い主のアンナに助けられた。ミールとアンナの家で、〈ほっぺのはな〉を育てながら、みないっしょに冬をすごし、春をまつ……季節のめぐりとともに訪れる出会いと別れを、すいこまれるほどに繊細な絵と、ふっくらとやわらかなことばで描いた、珠玉の絵本。

磯崎 園子(絵本ナビ編集長)

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
Don`t copy text!