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パパも絵本を楽しもう!

【パパも絵本を楽しもう!】絵本ナビパパスタッフが選ぶ4月の絵本

「子どもに読んであげる絵本を、パパが選ぶのってすごく楽しい。パパ自身がもっと絵本を楽しんだら、いろんなことを子どもと分かち合えるし、自分にも返ってくる。ママとパパ、複数の目線で選ぶと、子どもの本棚はすごく豊かになるんです。」  そう語るのは、絵本ナビスタッフの奥平亨パパ。2児のパパで、イベントなどでの読み聞かせ活動歴10年以上、ロングセラー絵本の知識はもちろん新刊情報もいち早くキャッチしている絵本のプロです。
たとえば、好きな詩を共有するように、パパも絵本を通して子どもたちに思いを伝えられたらいいですよね。
気負わず楽しく、パパ目線で絵本選び。奥平パパから子育て中のパパたちに向けて、絵本を選ぶコツと季節のおすすめ絵本を紹介します!

パパが選ぶ、4月に読みたい絵本

通学は冒険だ!

ぼくのかえりみち

ある日の放課後、そらくんは道にかかれた白線の上をたどって家に帰ることにしました。
落ちないように、ゆっくりゆっくり、そろーりそろり…。
まぶしいくらいの青い空に、あざやかな緑の田舎道。
そんななかで、そらくんの頭の中には さまざまな想像が広がります。
さて、そらくんは無事に家に帰れるでしょうか。
子どものころ誰もが一度は試みた遊びを、子どもの目線でダイナミックに描いています。

昔話の説話構造を解説した本や物語論などを読むと「人類共通の記憶」みたいなことが描かれていることがあります。経験も育った場所も異なるはずなのにそれはどこで埋め込まれたものなのか、とても不思議に思います。いや、ちょっと大げさですが、この本を最初に読んだとき、まさに「人類共通の記憶!」と思いました。

みなさんも駅から自宅までとか、公園からの帰り道などで子どもと一緒に白い線の上だけ歩いて帰ろう、なんて遊びをしたことないでしょうか?僕が聞いたすべての人にはこの「白い道をたどる遊び」の経験がありました。我が家では「白い線から落ちるとワニに食べられちゃう」とか、「5秒間だけは白から離れても生きていける」みたいなローカルルールを設定して、何度も何度もこういう遊びをしました。これを読んでくれている方にもきっと経験があると思います!

この本のすごいところは子どもが感じるだろう気持ちが「絵」にちゃんと落とし込まれているところですね。白い線からはみでちゃったらどうなるのか!?この絶望やそれに続く希望が見事に描かれています。

小学校からの帰り道は、本当に冒険に満ちた楽しいものですね!

学校を楽しもう!

給食番長

「嫌いなものなんか 残しちゃえ! 」番長にそそのかされた1年2組は、好き嫌いばかりでまだ入学以来一度もちゃんと給食を食べていません。ついに怒った給食の先生たちが、ある日家出してしまい、番長たちが給食を作ることに…。食育から、あいさつ、お掃除、生きものへの思いやり、時間厳守の大切さまで、笑って泣いて、楽しく学べる小学校絵本の決定版給食番長シリーズ! 大好評の博多弁バイリンガル絵本です。

よしながこうたくさんの2007年のデビュー作、『給食番長』。ちょっとリアルな、でも奇想天外なおはなしと、それにベストマッチした豪快な絵に出合った時の衝撃は忘れられません。標準語のほかに、博多弁も併記されているのですが、博多弁で読めば豪快さにも拍車がかかります、たぶん(僕は標準語で読むのが精いっぱいだけどそれでも十分迫力ある)。

小学校での読み聞かせボランティアの際、1年2組を担当するときは必ず持っていきます。1年2組のみんなは我がクラスのことだと思ってノリノリで聞いてくれるのが読んでいてとても楽しい。同じシリーズはほかに『飼育係長』『あいさつ団長』『おそうじ隊長』『ちこく姫』とあります。ユニークなタイトルと、絵もそれぞれ豪快で魅力的なのですが、ストーリーも子どもたちの喜怒哀楽がしっかり描かれていてドラマティック。すばらしいシリーズです。

新しい生活に、落ち着かない気持ちになったら…

かなしみがやってきたら きみは

かなしみは とつぜん くることがあるよ
きみのあとを ついて まわって
ぺったり くっついて きたりして――

だれにでもやってくる「かなしみ」。いきができなくなる「かなしみ」。きみをのみこんでしまう「かなしみ」
そんなきもちにそっとよりそう、とっておきの絵本。子どもから大人まで。

僕が住んでいる地元で関わった市民ミュージカルは、地域の歴史をたどったオリジナルストーリーの素晴らしいものなのですが、その中に主人公の心の動きを表現する天使と悪魔が出てくるシーンがありました。ふつう天使は「いいこと」を、悪魔は「悪いこと」を考えると思うんですが、主人公の優柔不断な態度によって、関わる人達を危険にさらしそうになってしまうシーンで、「十分頑張った」「いやまだまだできる」「これ以上無理」「お前の力にかかっている」と天使と悪魔が言い合うシーンがあったのですが、それぞれが、天使の発言だったか、悪魔のものだったか、もうどっちなのかよくわからなくなるところがありました。少し抽象的になりますが、こういうのは相対的なことで、見方によってはどちらが「いいこと」でどちらが「正しいこと」なのか言い切れないってことがしばしばあるなあとその時感じました。

僕がこの絵本を読んで最初に思い出したのはこの天使と悪魔の話です。「かなしみ」はふつう嫌なものとしてとらえられ、できれば遠ざけておきたいものじゃないでしょうか。でも、もし、私たちの心に「かなしみ」がやってきてしまったら・・・。この本を読むと、「かなしみ」ってそんなに嫌な奴じゃないし、時には一緒に過ごすのも悪くないかも、とも思えます。絵はとてもシンプルな線で描かれ、半透明に描かれた「かなしみ」も、読後はいとおしく思えます。新しい生活が始まって、忙しくてちょっと落ち着かない気持ちになったとき、きっと穏やかな気分にさせてくれる本だと思います。

ともだちや』友だちのいないさみしがりやのキツネが本当の友だちに出会うお話を、新しい友達のできるこの季節に。オオカミが出てくるのですが、その台詞を男性の声で読み聞かせしたら迫力出ること間違いなし!パパの読み聞かせにおススメです。降矢ななさんのオオカミの絵はつくづく素晴らしいと思います。

どんなかんじかなあ』声高に障がいを叫ぶのではなく、子どものしなやかな感性で違いを感じ取る。和田誠さんのやさしい絵もとても素敵。

アブナイかえりみち』「ぼくのかえりみち」とはまた違う「かえりみち」の本。小学生にとっては毎日の通学路は本当に”楽しい危険”に満ちているのですね。身近な冒険を楽しみたくなる。

教室はまちがうところだ』こう言い切ってくれると安心する。新1年生のみんな、教室は間違っていいところなんだよ!

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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