【編集長の気になる1冊】真剣すぎるよ、それは。『ねえ、どれがいい?』
息子がおもちゃを選ぶ時、ただならぬ緊張感が漂う。
「本当にそれでいいのか。」
そんな問いかけが必ずとんでくるから。それは今買うべきものなのか。どこにでも売っているものなのじゃないのか。それを選んで本当に後悔しないのか。そもそもそれはどうしても欲しいものなのか。
真剣すぎる時間が長く続き、もうこちらはどうでも良くなってしまう。だって間違えた選択をした途端、それはもう「不正解のおもちゃ」になってしまうのだ。おもちゃって、そんなに真剣に選ぶべきものなのかしら……。
だけど、もしそれが。
「どっちもいいのだけれど、でもどっちも嫌な気もする。」
「どっちも最高だけど、敢えて言うならば。」
そんな曖昧な選択だったとしたら話が違う。それはもう真剣に選びたい。
だって、どっちを選んだって正解じゃないし、不正解でもない。だからこそ、迷う楽しみがあるのだ。えいやっと選ぶスリルがあるのだ。ねえ、そう思わない?(と、心の中でつぶやきながらその時間をやり過ごす)
ねえ、どれがいい?
さあ、はじまりますよ! どこまでも広がる彼の世界。
みんな心してページを開いてね。
「もしもだよ、きみんちのまわりがかわるとしたら……
どれが いい?」
そうして男の子が提示するのは、3つの選択。大水に浸っている家と、大雪にうまっている家と、ジャングルに囲まれている家。うーん、どれも大変なことになっている。ダメダメ、深く考えちゃ。ぱっと選んで、どんどんいきますよ。
「ねえ、どれが いい?」
ジャムだらけになるのと、水をかけられるのと、泥んこになるのと。お城で食事か、気球で朝ごはんか、川でおやつ……これは本当に迷う。どれなら食べられる?どれなら我慢できる?どっちがいや?
どこからこんな想像が生まれてくるのでしょう。考えてもみなかった究極の選択ばかり。だって、ねえ。へびに巻かれるのは嫌だけど、魚に飲まれるのも怖いですよ。……だけど、子どもたちはこんな質問が大好きなのです! 見てください、その夢中になっている顔を。真剣に考えて選ぶその姿を。
作者ジョン・バーニンガムの頭の中は子どもそのもの。「いいな」と「いやだな」のギリギリのところを攻めてくるので降参です。楽しいに決まってますよね。誰と読むか、いつ読むか。そのたびに答えが変わってくるのも大きなポイント? 一人で、二人で、大勢で一緒に。いろんな楽しみ方をしてみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
今日もまた、朝からご飯にかけるのは納豆か卵か真剣に悩む息子。確かに、真剣に悩んで選ぶというのは大事な訓練になっているのだろう。毎朝それはそれは満足そうに食事をすませて学校に向かうのである。
私はと言えば、なんとなく美味しかった気がするな、というくらいの気持ちで毎日仕事に向かう。
……まあ性格かな、これは。
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磯崎 園子(絵本ナビ編集長)
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