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子どもの視点でストン!とわかる絵本 〜てらしま家の絵本棚から〜

赤ちゃん絵本の読みきかせ、がんばりすぎていませんか? 同じ目線で『あっ!』

絵本研究家のてらしまちはるさんは、子ども時代に自宅の「絵本棚」でたくさんの絵本に出会いました。その数、なんと400冊! 「子どもが絵本を読む目線は、大人の思い込みとはちょっと違う」そうですよ。

 

 

「赤ちゃんに絵本を読みきかせましょう」と、いろんなところで、いろんな人が、言っていますよね。

 

そりゃ、絵本のない子ども時代より、ある子ども時代の方がしあわせだとは思うんです。私自身が小さなころに、そのおもしろさをとっぷり味わわせてもらったから、実感をもってそう感じます。

 

でも、だからといって、大人が無理しすぎちゃうのは、しんどいですよね。

 

赤ちゃん絵本の読み聞かせ、がんばりすぎていませんか

「がんばる→期待はずれ→悲観」の残念ルート

「赤ちゃんに絵本を」というメッセージは、世の中のいたるところにあふれています。

 

生まれて数ヶ月の健診に赤ちゃんをつれていけば、初めての絵本をプレゼントしてくれる自治体が数多くあるのは、いい例ですね。

メッセージを受け取った大人に「大事なら、やってみようかな」と思ってもらえるのは、とてもうれしいことです。

 

けれど、家でやってみても赤ちゃんが反応しなかったり、おもちゃのように絵本をかじってしまったり……。

 

そんな光景に「うちの子は絵本に興味がないのかも」「私の読み方がマズイのかもしれない」と悲しくなってしまうママ・パパは、けっこう多いようです。

 

この話を聞くたびに、私は「絵本と大人とのすれちがいが起こっているなあ」と残念に感じます。だって、悲観する必要も、あきらめる必要も、がんばる必要も、本来まったくないからです。

 

絵本って、そもそも楽しむためだけに存在するもの。そんなにがんばらなくていいんですよ。

赤ちゃんと絵本を楽しむための3つの「がんばらない」

じゃあ、どうやったら楽しい絵本の時間を、赤ちゃんと共有できるのでしょうか?

 

それには、3つのコツがあるように思います。

① 絵本選びをがんばらない

② 持ち方をがんばらない

③ 一度でヒットさせようとがんばらない

それぞれをひもといてみましょう。

コツ① 絵本選びをがんばらない

もしもいま、赤ちゃんに絵本を買う前に下調べをたくさんしていたら、まずはそれをやめてみましょう。

 

最適な一冊を選び抜こうとして、肩にチカラが入りすぎているかもしれません。もっとリラックスが必要かも。

「絵本は楽しく」とつぶやいて、光る画面や紹介本をいったん閉じてください。

 

そして、赤ちゃん絵本のある場所に出向いてみます。図書館でも、お気に入りの書店でも大丈夫ですよ。

 

棚に並ぶ表紙だけをぼーっと見て、あなた自身が気になる一冊を選び、最後まで読んでみましょう。いまの主役はあなたです、赤ちゃんのことはいったん脇に置いて。

 

ちょっとでも気に入ったら連れて帰る、なんでもないと思ったら棚に戻します。連れて帰る絵本が見つかるまで、自分本位にこれをくりかえすのです。

 

大人が好きだと思える作は、赤ちゃんに読んであげるときも、自然と熱が入るもの。その熱が、絵本のある毎日をスタートさせますよ。

コツ② 持ち方をがんばらない

いざ読むときには、大人の目線の方向を、赤ちゃんと同じにします。たとえば、この写真みたいに。

大人と子どもの目線が同じ方向を向く姿勢の例

写真の子どもたちは、赤ちゃんというには大きい年齢なので座って読んでいますが、目線が同じならどんなでも大丈夫です。あおむけの赤ちゃん相手なら、大人もゴロンと寝転がって、一緒にあおむけで読むなんて楽チンですよね。

 

こうして目線をそろえるのが、家での絵本タイムの基本です。

 

メリットは、同じ絵本を同じスピードで楽しめること。それに、すぐ隣でおたがいの息づかいを感じるので、言葉にならない反応にいちはやく気づきあえて、言語・非言語両方のゆたかなやりとりが生まれやすくなります。

 

なにげないようで、けっこう大事です。というのは、この基本を知らずに、絵本を「イベント持ち」して読んでしまうケースが、ちらほら聞かれるからです。

 

いまは、いたるところで読み聞かせイベントが行われていますよね。「イベント持ち」といっているのは、そうしたイベントでプレゼンターたちが提示する絵本の持ち方を指します。

目線がそろわない「イベント持ち」の例

会場に向かって見開きを提示するこの持ち方は、大人数へ効率よく絵柄を見せるにはうってつけです。

 

一方で、よくも悪くも、読む人と聞く人の目線を分断します。

 

家でこれをしてしまうと、赤ちゃんが絵本のどこに反応しているのか、大人の側が正確に読みとりにくくなります。いえ、赤ちゃんだけじゃなく、どんな年齢の子にも、同じだといえます。

 

せっかくコミュニケーションのために読むのに、持ち方ひとつで気持ちが通じあわないのは、なんとも残念ですよね。

 

それに「イベント持ち」をすると、なぜかたいていの大人は「イベントみたいに上手に読まなきゃ……!」と思いがちです。

 

でも別に、うまく読む必要なんてまったくないのです。

 

身近な大人がそばにいて、ふつうに読んでくれるだけで、子どもは満足ですから。実際、子どものころの私自身が、そうでした。

 

持ち方も読み方も、気ばらなくていいんです。子どもと一緒にたのしむことを第一に、自然体で絵本を開きましょう。

実は、この話をしようと思ったのは、私自身がある光景に危機感をもったからでもあります。

 

つい先日、某保育系短大で、赤ちゃん絵本の授業をしたときのこと。保育士をめざす生徒たちに2人1組になってもらい、赤ちゃんとその親になりきって、「家での」読み聞かせを疑似体験するワークをしました。

 

すると、全グループが例外なく「イベント持ち」で読み始めて−−。いっときワークを中断して、家での親子の関係性をイメージさせてから再出発する必要がありました。

 

保育者をめざす彼らでも、家と公の場との読みの姿勢を混同してしまうんだなあと、強く印象に残った出来事でした。

 

いまや読み聞かせイベントは、いたるところで催されています。そこでのパフォーマンス的な読みには、目を引く派手さがあります。

 

けれど、用途のちがう読みですから、家ではうまくいきづらいことを肝に命じてください。

 

この方法を誤ってチョイスして、一生懸命やってしまうと、子どもも大人も「絵本 = つまらないもの」というアンハッピーな誤解にたどりついてしまう恐れが大きいので、私はおすすめできません。

自然と目線がそろう、赤ちゃん絵本『あっ!』

赤ちゃん絵本のはじめの一歩。気楽に、といわれても困ってしまうのなら、おすすめしたい一冊があります。

あっ!

「はじめての絵本たいむ」シリーズ第8弾!
子どもが大好きな「のりもの」のオンパレード! のりものに興味を持ちはじめた赤ちゃんにぴったり!

部屋のミニカーをみつけて「あっ!」。
次の場面では運転手の“ぼく”が「ぶっぶー」とごきげん。
電車、船と次々にのりかえた“ぼく”は、最後に飛行機から「きーん! ばいばい!」

【公表された対象年齢】子どもから大人まで
【私がおすすめしたい人】赤ちゃんからお年寄りまで

『あっ!』だなんて、変わったタイトルですよね。絵本を開くと、私たちはその言葉を連発しながら、発見あそびをすることになります。

 

主人公と一緒に「あっ!」と指さした先に、青いくるまが。

 

青いくるまに乗りこんで「あっ!」と指さした先に、長〜いでんしゃが。

 

次々と新しい乗りものに乗りかえながら、発見はつづきます。

 

この絵本のすごいところは、さっき話した基本姿勢を、無言のうちに教えてくれるところです。

 

赤ちゃんも大人も、一緒に画面をのぞきこんでいなければ、お話が進みませんからね。

 

『あっ!』で姿勢の感覚をつかめたら、赤ちゃんとの絵本ライフはもう快調にすべりだしていることでしょう。

コツ③ 一度でヒットさせようとがんばらない

さて、最後のコツです。いいたいのは単純に「あせらなくてOK」ということです。

 

赤ちゃんが絵本に反応しだすには、ふつう、それなりの時間がかかります。

 

彼らにとって、絵本はただのモノでしかありません。なめたり、放り投げたりできるおもちゃです。

 

そこを大人が根気よく受け流しながらつきあって、何度もトライするうちに、だんだんと反応を見せてくれるものなんですね。

 

月齢や個人差も大きいですが、まずは10回くらいを目安に、同じ一冊を赤ちゃんの前で開いてみてはどうでしょう? 10回でだめなら、20回を新たな目標にしたっていいじゃないですか。

 

よく「うちの子、絵本ダメみたいで……」という声を聞きますが、実際には「絵本の素質」がもともとない子どもって、ほとんどいないと思うんです。

 

これは私が観察から得た感覚でしかありません。

 

けれど、たくさんの子どもが絵本とかかわる場面に身を置いてきて、そういう子たちがアプローチしだいで絵本へ反応を示すシーンに、何度となく立ち会ってきました(ただやはり、まれにアプローチできない子もいます。それもまた個性ですね)。

 

その瞬間を引き起こすのに必要なのは、大人がおもしろがって読んでくれることと、そのときの子どもの気分にフィットしていることです。

 

赤ちゃん絵本を何度も読み聞かせていて、赤ちゃんから反応が得られるのも、これが重なったときなんだろうなと推測します。

 

そのときがおとずれるのを、何十回と一緒に開きながら待つ。そういう時間も、絵本のたのしみのひとつではないでしょうか。

てらしま ちはる

絵本研究家、フリーライター。絵本編集者を経験したのち、東京学芸大学大学院で戦後日本絵本史、絵本ワークショップを研究。学術論文に「日本における絵本関連ワークショップの先行研究調査」(アートミーツケア学会)がある。日本児童文芸家協会、絵本学会会員。絵本専門士。

写真:©渡邊晃子

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