【今週の今日の1冊】秋から冬にかけて読みたくなる、きつねとたぬきの名作絵本
10月12日~10月18日までの絵本「今日の1冊」をご紹介
急に寒くなったからでしょうか。気持ちが温かくなるような絵本が読みたくなり、ふと、きつねやたぬきの絵本が目に留まりました。そのふかふかそうな毛の感じに惹かれると同時に、お話の舞台が秋や冬の景色が多く、今の季節に読むと臨場感が増すような気がします。さらに調べていくと、きつねやたぬきが登場する絵本は名作の宝庫だということに気づかされます。大人の方にはすでに知っている有名なお話が多くあるかと思いますが、あらためて読み直してみれば、心までほっこり温かくさせてもらえそうです。
今週は、きつねとたぬきが登場する名作絵本をたっぷりご紹介します。
10月12日 きつねとたぬき、仲良くなれるかな?
月曜日は『こぎつねコンとこだぬきポン』
みどころ
1977年発売以来ロングセラーの大型絵本。
ともだちがいないこぎつねのコンとこだぬきのポンは、ある日、がけの向こうに、だれかさんの姿を見つけます。
家に帰って「ともだちって、あの子のこと?」と聞いてみると、どちらの両親も身ぶるいし「たぬきなんかわるがしこくて」「きつねなんかずるがしこくて」決して遊んではいけないと言います。
それからというもの、コンの家でもポンの家でも化け方の特訓がはじまりました。
いざというとき「たぬきから」「きつねから」身を守れるように。
コンとポンは練習に夢中。二人ともしばらく「川むこうのだれかさん」のことは忘れていました。
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読者の声より
友だちがほしくてたまらないコンとポンの愉快なお話
きつねとたぬき、仲良くなれるかな?
ながーいお話ですが、熱心に聞いていました。
キツネとタヌキの子供が出会って仲良くなるんですが、大人たちは「たぬき(キツネ)は悪いやつだ!」と言う先入観から友達になるのを反対します。
子供は素直だし、偏見もない。素敵なことだし見習いたいけども大人はどうしてもそうは出来ないんですよね。
でも、2匹の交流で、大人たちの考えも変化していきます。
その様子が凄く良かったです。
(lunaさん 20代・ママ 男の子5歳)
10月13日 切なくも温かい名作を柿本幸造さんの絵で
火曜日は『ごんぎつね』
みどころ
森の中にひとりぼっちで暮らす、いたずら狐のごん。ある朝、兵十が川で捕っていた魚やウナギが網にかかっているのを見て、ついいたずら心で逃がしてしまいます。後でごんは、そのウナギは兵十の病気の母親のために捕ったものだということを知ります。ごんは、なんとか償いができないかと行動を起こすのですが…。
言わずと知れた名作「ごんぎつね」。子どもの頃、教科書や学芸会でこのお話に触れ、なんて可哀そうなお話なんだと涙した記憶があります。ごんが可哀そうだと思ったのか、兵十に同情をしていたのか、そこのところは覚えていないけれど、子どもながらに切ない気持ちになったのだと思います。
切なさを恐れずに、大人になって改めて読んでみると、この物語からは、可哀そうなだけはでない、ごんの純粋な気持ちによる行動、その尊さが浮かび上がってくるのです。ちょっとしたいたずら心から兵十を悲しませることになってしまったと後悔するごん、何とか喜んでもらいたい一心で栗や松茸を運ぶごん、せっかく行った善意を神様に取られてつまんないやと思うごん。なんて人間くさく愛らしいのでしょう。
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読者の声より
新美南吉さんの「ごんぎつね」はとても有名なお話で,私が子供の頃の小学校の教科書にも載っていました。
子供なりに悲しく切なく感動したことを覚えています。
だからこそ,我が子にも絶対に読んであげたいお話です!
「ごんぎつね」,たくさんの方がイラストを描かれた絵本があるので,読み比べてみるのも面白いですね。
こちらの「ごんぎつね」は,愛嬌あるごんのイラストが魅力的で本当にこぎつねらしいといいますか,子供らしさを感じさせるごんでとてもよかったです。
ごんの表情からも気持ちが伝わってきて,ぐっときました。
(まゆみんみんさん 30代・ママ 女の子4歳)
10月14日 おじいさんとたぬきのやりとりがたまらない!
読者の声より
私の年代では、子どもの頃に読んだ人が多く、しかも私の大好きな一冊や思い出の一冊に挙げられることの多い本です。
初めて読んだ時から絵も本の大きさも変わらず、ページを開くと楽しさと共に懐かしさも感じられ、なんだか肩の力が抜けるような気がします。
ドキドキもあり、おかしさもあり、切なさもあり、ホロリとしてしまうところもありと、盛りだくさんに楽しめる、太鼓判を押してお勧めできる本です。
山奥で息子が迎えに来るのを待つおじいさんと、お腹がすくとやって来るたぬきの、ちょっとピントのずれた交流を描いた、ほのぼのとしたお話で、昔の人は、自然や動物達とこうやって上手に共存してきたのかなと微笑ましく感じながら読むことができます。
絵本から少し長めの物語に移行していく頃のお子さんに丁度良い本です。
読んであげるなら、幼稚園年長くらいからでも十分楽しめます。
(金のりんごさん 40代・ママ 女の子13歳、男の子10歳、男の子7歳)
10月15日 さみしがりだけど、感情豊かなきつねといえば…?
木曜日は『ともだちや』
読者の声より
友達が欲しいのに、友達をどうやって作るかがわからないさびしがり屋のキツネ。「ともだちや」って商売をして、友達を作ろうとしたんですね。友達って自然にできてしまうものだと思いがちですけど、でもどこかで必ず勇気を出して一歩踏み出して、声を掛けたりしたはず。その一歩の踏み出し方のタイミングを逸してしまうと、キツネのように孤独になってしまったりするのかな。そんな時、ちょっと強引なオオカミみたいな人がいてくれるとすごく助かりますね。
私達の周りにも、仲良しのタイミングをちょっと逃して、こちらの様子をうかがっているお友達がいるかもしれません。そんな雰囲気を感じたら、オオカミのようにちょっと強引にしてみるのも、良いきっかけになりますね。
絵が表情豊かで楽しいです。キツネとオオカミがトランプをして遊んでいる所、お互いとっても楽しそう。「ほんとうのともだち」を知った時のキツネのとまどったような顔はかわいい!。オオカミが大切な宝物のミニカーをキツネに渡す所は、お互いにとっても良い表情をしているんです。最後に、「ともだちや」ののぼりを捨てて、ミニカーを片手に走っていくキツネの後姿を見ると、「ともだちができて良かったね」という気持ちになります。このシリーズ、読み進めてみようと思います。
(メロコトンさん 40代・ママ 東京都 女の子7歳)
10月16日 ちゃがまに化けたたぬきのかるわざをごらんあれ。
金曜日は『日本名作おはなし絵本ぶんぶくちゃがま』
出版社からの内容紹介
ちゃがまに化けたたぬきのかるわざをごらんあれ。
一匹のたぬきがちゃがまに化けたそうな。火にかけられてあついあついところげまわるうちに、元に戻れなくなったたぬきは、かるわざの芸をみんなに見せて大もうけしたそうな。世にも珍しいぶんぶくちゃがまのお話です。
読者の声より
茶釜に変身したまま、もとの姿に戻れなくなってしまったタヌキ。
古道具屋のオヤジさんと出会い、大活躍します。
ちょっといたずらっ子の感じもするけれど、憎めない可愛いヤツ・・・
みたいなタヌキのキャラクターが良かったです。
古道具屋のオヤジさん、タヌキとペアになってお金儲けは大成功!
でも決して強欲にならず、
お金儲けはもう十分だから、後はのんびりくらしたら?
と、タヌキに提案するところが印象的でした。
優しいおじさんに出会えて良かったねえ、タヌキ。
富安さんの文章、とても良かったです。軽快でキレが良い語り調の文は
声に出して読んでいても楽しかった!!
植垣さんの絵も良かったです。 一番はタヌキが小屋で踊る場面かな。
タヌキがとてもイキイキとしていて、見ているお客さんも楽しそうで
賑やかな声が聞こえてくるようでした。
いつか小学校でも、ぜひ紹介したい作品です。
(チチンプイのプイさん♪ 30代・ママ 男の子9歳)
10月17日 「このお手々にちょうどいい手袋ください」
土曜日は『手ぶくろを買いに』
みどころ
狐の親子の住んでいる森に冬がやってきました。母ぎつねは冷たくなった子ぎつねの手にあう毛糸の手袋を買ってやろうと思います。
でも昔、町へ出かけたときの怖い出来事を思い出して足が進まなくなった母ぎつねは、しかたなく、子ぎつねをひとりで町へ行かすことに。
人間に悟られないように、子ぎつねの片手を人間の子供の手に変え、お店に行ったら必ず人間の手のほうを差し出して、この手にちょうどいい手袋ちょうだいと言うように言い聞かせますが、こんばんは、と戸を開いた帽子屋の光がまばゆくて、きつねは反対の手――きつねの手を出してしまいます。
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寒い季節になると、読みたくなる童話があります。
それが、新美南吉の「手ぶくろを買いに」。
すっかりお話を覚えているわけではありませんが、雪で冷たくなった子ぎつねの手を心配してお母さん狐は夜に人間の町にでかけていくお話です。おぼろげながら、それでもまた読みたくなる童話。文字だけの童話として読んでもいいし、このように絵本として読むのもまたいい。しかも、有名な作品だけにたくさんの絵本作家がその絵を描いています。
偕成社のこの絵本は、たくさんの絵本作家の中でも、その柔らかなタッチで人気の高い黒井健さんが絵を描いた一冊です。黒井さんの絵のきつねの親子の姿の、なんとも暖かい感じはどうでしょう。こんな姿を見ていると、このきつねたちが悪いきつねではないことがよくわかります。それに、子ぎつねが手ぶくろを買いもとめる帽子屋さんのご主人もけっして母きつねが心配するような悪い人間には見えません。この場面、お店の中を見通せる視線になっていて、商品として並んだ帽子もとっても暖かそうに描かれています。あるいは、子ぎつねが一軒の家から聞こえる子守歌に耳を傾ける場面。ここでは外に立ちどまる子ぎつねしか描かれていませんが、その家の窓のあかりがなんとも暖かいのです。カーテンのかかった窓にはうっすらと、これは人間のお母さんでしょうか、その影も描かれています。
もちろん、新美南吉の童話は「ほんとうに人間はいいものかしら」という母ぎつねのつぶやきで終わる、ある深さをもった作品です。それらも含めて、黒井さんの絵は暖かく包んでくれます。
(夏の雨さん 60代・パパ)
10月18日 きつねの心を動かしたのはどんな「ことば」?
日曜日は『きつねのおきゃくさま』
読者の声より
きつねは、、ずる賢いきつねでした。
だって、痩せたひよこをその場で”がぶり”とはせずに、
太らせてから食べよう、と考えたんですから。
ところが、そんな下心で親切にしてやったひよこから、
「きつねおにいちゃん」とか「やさしい」と言われたきつねは、
ぼうっとしてしまいます。
心を動かされる言葉。
きつねにとってそれは、「おにいちゃん」とか「やさしい」、
「かみさまみたい」「しんせつ」という言葉でした。
それは、きつねにとって、自分の中の意外な一面だったのかな。
相手のために何かをすること。それがこんなに気分が良いなんて!
ひよこから、あひるから、うさぎから、いろんな褒め言葉を聞くたびに、
きつねの心や行動がどんどん変化していくのを、読みながら
感じることができました。
お話の最初と最後では、きつねの印象は全く変わってしまいました。
はずかしそうに、笑って死んでいったきつね。
以前のままだったら、きつねのことを悲しむものはいなかったことでしょう。
嬉しい言葉は、人を変える力になるんですね。
このお話が、小学校の教科書に採用されているのも頷けます。
心に残る、素敵な一冊になりました。
(どんぐりぼうやさん 30代・ママ 男の子11歳)
秋山朋恵(絵本ナビ 編集部)
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