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季節のおすすめ読み物

【季節のおすすめ読み物】『ヤナギ通りのおばけやしき』ハロウィンに♪

トリックオアトリート!(いたずらかおかしか)と言われて、「いたずら」を選ぶ大人がいたら?

ハロウィンの日の合い言葉といえば、「トリック・オア・トリート」! 日本でも10月31日が近づくと、目にする機会も増えますね。意味は、「いたずらか、それともお菓子か」あるいは、「お菓子をくれなきゃ、いたずらしちゃうぞ!」。外国では仮装した子どもたちが「トリック・オア・トリート」と言って家々を回るという習慣があるようですが、もしあなたが誰かのおうちをたずねた時、大人はもちろん「お菓子」を選んで、お菓子をくれるはずですよね?! けれども、この「ヤナギ通り」では思いもかけぬ選択をした方がいたようで‥‥‥。

どんなお話?

一年のうちのある一晩だけ、ヤナギ通りに住んでいる子どもたちが、大人たちに許されていることがありました。それは、変な服を着たり、怖いお面をかぶったり、顔に色を塗ったりして人を驚かせることです。
「いたずらか、おかしか!」
子どもたちは、家の玄関先でそう叫び、出てきた大人に「いたずら」か「おかし」かを選ばせます。大人たちは、子どもからいたずらをされたくないので、かわりにたくさんのおかしをくれます。そんなことができる夜が「ハロウィン」です。
ヤナギ通りの中だけであれば、子どもたちはいくら人を驚かせても良いことになっていましたが、ただ一軒のお家だけは別でした。そこは通りの真ん中にある、誰も住んでいない暗くて古い家で、子どもたちは「ヤナギ通りのおばけやしき」とよんでいました。
その家だけはハロウィンの日だとしても誰も近づこうとはしませんでした。
 

しかし、ある年のハロウィンのこと。小おにに変装したグリーンさんちのリリー(姉)とビリー(弟)がそのおばけやしきの前を通り過ぎると、なんと明かりがともっていたのです! そこでビリーが思いきってチャイムを鳴らすと、突然ドアノブがカチャッとなって、ドアが開きました。
さて、出てきたのはいったい誰だったのでしょう? そしてその夜に起こった不思議な出来事とは?

対象年齢は?

ひとりで読むなら、小学3年生ぐらいからおすすめです。全てのページに優しい色合いで描かれた挿絵が入っているので、楽しく読み進められるでしょう。お話の内容はもう少し小さな子でも理解できますので、読んであげるのであれば、小学1、2年生でも楽しめるお話です

おすすめポイント(ここが面白い!)※ネタバレを含む内容のため、ご注意下さい。

  • このお話の一番の面白さは、まさかの選択をする大人が登場するところでしょうか。「いたずらか、おかしか!」どちらかを選ぶなら、大人は迷わずお菓子を選ぶのが普通かと思ってしまいますし(私も絶対にお菓子を選びます)、子どもたちもお菓子をくれるものだと信じて疑わないでしょう。しかし、もし「いたずら」を選んだ大人がいたとしたら‥‥‥はたしてどんなことが起きるのでしょうか?
     
  • タイトルにもある「おばけやしき」。しかもそこがあるのは「ヤナギ通り」というのですから、いかにも怖そうですよね。暗くて古くて誰も住んでいないはずの家にある日明かりがともっていたら?  想像しただけでこわいけれどワクワクしてしまいませんか?
     
  • リリーとビリーの姉弟が「おばけやしき」の中で過ごしていると、ピーンポーンと何度も玄関のチャイムが鳴ります。さてやってきたのは? 目の前で起こっている不思議を誰かと分け合える喜びが感じられます。
     
  • 「おばけやしき」で起こるあれこれにも楽しさがいっぱい。詳しい内容は読んでからのお楽しみで‥‥‥。
     
  • 次々に登場する子どもたちの仮装がさりげなくて、とってもユーモラス。すぐに真似できそうな仮装なので、仮装の参考にもいかがでしょう?
     
  • この本のカバーに登場する黒猫。この黒猫はハロウィンの夜にヤナギ通りのおばけやしきでおきたことを全部知っているそうなのですが、なぜ知っているのでしょう? どこに黒猫が登場するのか物語の中で探してみて下さいね。
     
  • 最後に、「おばけやしき」にはヤナギ通りに住む子どもたちが全員揃ったはずなのに、まだ「ピーンポーン、ピーンポーン」となる玄関のチャイム。不思議に思ってドアを開けるとそこにいたのは‥‥‥?

読者の声より

「ハロウィン」、日本でもイベントとして近年身近なものになりつつありますね。
ハロウィンシーズンにぴったりな児童書です。
小学2~4年生向けでしょうか。
小宮由さんの翻訳も読みやすく、ルイス・スロボドキンさんのイラストもとても素敵な本です。
(まゆみんみんさん 40代・ママ 女の子9歳)

この本を書かれたのは?

お話も挿絵も両方手がけられたのは、アメリカの作家であり画家であるルイス・スロボドキンさん(1903-1975)。美術大学を卒業された後、彫刻家として活躍されていましたが、『元気なモファットきょうだい』に挿絵を描いたのをきっかけに、子どもの本を手がけるようになったのだそうです。その後1944年に『Many Moons』(邦訳作品は『たくさんのお月さま』)でコールデコット賞を受賞されています。

 

すでに亡くなられたのは40年以上も前になりますが、日本では近年、新刊が次々に発売されています。作品から共通して伝わってくるのは、温かいユーモアと優しさでしょうか。軽やかなタッチの優しい色使いの絵からも、温かな空気が伝わり、心を穏やかにほっこりとさせてくれます。絵本から読み物までたくさんの作品が刊行されていますので、ぜひいろいろ読んでみて下さいね。

さて、「おばけやしき」に最後にやってきたのはいったい誰だったのでしょう? 私個人の感想としては、それは子どもたちが不思議や楽しさを一番共有したい相手であり、その相手が登場する最後の場面に、子どもたちにとっての幸せがたっぷり詰まっているように感じました。「おばけやしき」をめぐって起こるドキドキとユーモアと温かさ。ぜひハロウィンの時期に味わってほしい作品です。

秋山朋恵(あきやま ともえ) 

絵本ナビ 副編集長・児童書主担当

書店の本部児童書仕入れ担当を経て、私立和光小学校の図書室で8年間勤務。現在は絵本ナビ児童書主担当として、ロングセラーから新刊までさまざまな切り口で児童書を紹介。子どもたちが本に苦手意識を持たずに、まず本って楽しい!と感じられるように、子どもたち目線で本を選ぶことを1番大切にしている。編著書に「つぎ、なにをよむ?」シリーズ(全3冊)(偕成社)がある。

掲載されている情報は公開当時のものです。
絵本ナビ編集部
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