ストレス発散!絵本でスカッとできる方法『カ どこいった?』ほか
絵本研究家のてらしまちはるさんは、子ども時代に自宅の「絵本棚」でたくさんの絵本に出会いました。その数、なんと400冊! 「子どもが絵本を読む目線は、大人の思い込みとはちょっと違う」そうですよ。
9月になりましたが、残暑の蒸しっぽさはまだまだ続きそうですね。しかも、ステイホームだって気が抜けなくて、なんだかんだで全然スッキリしません。そんな今日は、いろんな方向からストレスを吹き飛ばせる絵本3冊を紹介しようと思います。
パチン!と思いっきり叩く絵本!?『カ どこいった?』
最初の一冊は『カ どこいった?』です。
この絵本には、他ではなかなか見られないある特徴があるんですよ。それは、ページを「思いっきり叩きながらめくっていい」ということ!
バチンとめくって”カ”をたいじ
手の上に蚊がとまった。せーの、パーン!あー逃げられた。蚊、どこいった?あ、次は積み木の上に。もう一回、せーの。ガッチャーン!また逃げられた!
厚くてかたい紙のページを、バチン!と勢いよくめくりながら楽しむ、新しいタイプのアクション絵本の登場です。声に出して読み進めば、盛り上がること間違いなし!最後には驚きの展開が待っている!
【編集担当からのおすすめ情報】
鈴木のりたけさんの絵本には、いつも面白いアイデアが詰まっています。今回の絵本はひとよんで「アクション絵本」。バチンと音が出るほど勢いよくめくりながら、声を出して読み進めてみてください。きっと楽しめると思います。
細密でありながらユーモアのあるイラストには、のりたけさんのサービス精神が満載。隅から隅まで楽しめる1冊です。
絵本のなかを飛び回る「カ」、つまり蚊を、毎ページごとに読者が追いかけて叩くという、なんともユニークな一冊です。
絵本を乱暴に扱うなんて、いつもなら誰かにとがめられそうなものですが、これなら問題ありません。みんなの渾身の一撃に(ある程度?)耐えられるように、赤ちゃんの読むボードブックみたいに、厚さのある造本になっているのも憎いのです。
さあ、用意はいいですか? あっちへふわふわ、こっちへふわふわの蚊めがけて、たまりに溜まった日頃のストレスを、大いに発散してください。「せーの… パーン!」ってね。
みんなでできる簡単動物ヨガで深呼吸『きみはライオン!』
スッキリする手段は、けっこう色々あるものです。大きく息を吸って吐くというのもまた、体の内側が短時間でクリアになる方法だと思います。
子どもも大人も一緒に、ストーリーを楽しみながらそれができる作品といえば『きみはライオン!』です。
「きちんと すわって りょうてを ひざに おおきく くちを あけ したを だす!」。さて、これはなんの動物のポーズでしょう? 答えはライオンです。絵本の通りに、べえっと舌を出してみると、私はお腹の底からの大きな声で「がぁーっ」と吠えたくなりました。
ヨガってちょっと難しそうなイメージですが、この絵本にはイヌ、ヘビ、カエルなどの親しみやすい動物のポーズがたくさんあって、初めての子どもでも簡単にマネできるのがいいところです。いろんな姿勢をとってみると、普段は意識していない筋肉が伸びるのを感じられて、とっても気持ちいい! 家族みんなで寝る前にやってみても、楽しそうですね。
ところで、ヨガは呼吸法が大切だそうですよ。私はストレスを発散したい時に、よく瞑想をしていますが、瞑想もヨガも、スッキリする最大のポイントは呼吸なんだろうなと感じます。
動物のポーズをとったら、ひとときその姿勢を保って、深呼吸を1回、2回としてみるのがおすすめです。深く吸って、ゆっくり吐いて。体のなかのストレスが、そのリズムにのって外へ出ていってくれますよ。
頭のなかも伸びをしよう『わゴムはどのくらいのびるかしら?』
最後は、頭のストレッチのような絵本です。『わゴムはどのくらいのびるかしら?』は、輪ゴムというごく身近でささやかな道具を題材に、イメージの世界をどこまでも遊ばせてくれる愉快な一冊です。
ある日、ぼうやは、わゴムがどのくらいのびるか、ためしてみることにしました。部屋からそとへ、バスで、汽車で、飛行機で、わゴムはどんどん、どんどんのびて……。子どもの想像力をかきたてる絵本。
主人公のぼうやはある日、「わゴムが どのくらい のびるか、ためしてみることに」します。輪ゴムの端っこをベッドの枠にひっかけて、部屋を出て、家を出て、自転車に乗って、バスにのって……。
大人なら、すかさず「途中で切れちゃうんじゃない?」と言いそうなものですが、いえいえ、イメージの世界の遊びはめっぽう自由なのです。どこまでもどこまでも、輪ゴムのもう片方を手に持って、長旅を続けるぼうや。絵本をのぞきこむ私たち読者は、彼と一緒に現実ではめったに行けないところへも、いとも簡単に連れられていきます。
新しい発想を生み出すのは、やわらかな頭ですよね。子どもたちの頭は大人よりもずっとやわらかですから、国境だってひょいひょい越えていく本書のストーリーをなんなく受け入れて、めいっぱい楽しむことができるでしょう。
じゃあ、大人はどうすればいいでしょうね? 「こんなのあり得ない!」と思ってしまうのをいっとき我慢して、ストーリーに身を任せてみてください。そうすると、見えない輪ゴムの端っこを片手に持ちながら、あなたもぼうやと一緒の景色を見て旅することになります。電車に乗って、飛行機に乗って、気持ちいい風を受けて。イメージだけでも、いつも見ている景色を離れて、知らない世界を歩き回ってみるのです。
そうして空想遊びをするうちに、凝り固まっていた頭のなかにはひとすじの空気が流れて、なんだかやけにスッキリしてくるでしょう。発想力も息を吹き返してくるかもしれません。ちょっとした遊びが、案外ストレスをよく吹き飛ばしてくれるものなのです。
3つの角度から、ちょっとでも心身をクリアにできる絵本を紹介してみました。子どもたちと一緒に、お楽しみくださいね。
てらしま ちはる
絵本研究家/ワークショッププランナー/コラムニスト/講師。絵本編集者を経験したのち、東京学芸大学大学院で美術教育の観点から戦後日本絵本史、絵本ワークショップを研究。執筆のほかに、絵本を用いたワークショップや、保育現場での幼児の造形活動観察などを展開する。女子美術大学ほかでの指導も。公開された学術論文のうち、「日本における絵本関連ワークショップの先行研究調査」(アートミーツケア学会オンラインジャーナル11号)は、絵本関連ワークショップの先行研究調査をまとめた国内初の成果である。教育学修士、東京学芸大学個人研究員。note「アトリエ游|てらしまちはる」https://note.com/terashimachiharu
写真:©渡邊晃子
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