【今週の今日の一冊】新学期がおっくうな子におくる本。自分のペースでゆっくりスタートしよう。
長いようであっという間の夏休みが終わり、先週末から今週は新学期を迎えている人が多いことと思います。長いお休みの後は、生活のリズムを取り戻すのが難しかったり、友だちに会うのもなんだか恥ずかしいような気持ちがしたり、ちょっとおっくうだなと感じることがあるかもしれませんね。
今週は、そんな揺れる気持ちに寄り添えるような本を考えて集めてみました。それぞれのペースでゆっくりスタートしてくださいね。
2022年8月29日から9月4日までの絵本「今日の一冊」をご紹介
8月29日 はやく?ゆっくり? 自分のリズムをみつけていこう
月曜日は『「はやく」と「ゆっくり」』
朝からパパとママはぼくに言う。
「はやく はやく」
起きた時、ごはんを食べる時、出かける時。夜寝る時も。ぼくは目が回るように忙しい。田舎のおじいちゃんとおばあちゃんはぼくに言う。
「ゆっくり ゆっくり」
出かける時、森を歩く時、食べる時。まるで時計のない家に住んでいるみたいだ。ある時、おじいちゃんとおばあちゃんが家にくると、ぼくは「はやく」と「ゆっくり」の間にはさまれちゃって、どうすればいいのかわからなくなり……!?
誰もが心の中に時計を持っている。それはパパやママ、おじいちゃんやおばあちゃんだって同じ。ぼくも自分のリズムを見つけられるかな。
台湾から届いたこの絵本。さまざまな時間の感覚を体験しながら少しずつ成長していく男の子の様子を、あたたかな目線で描き出します。「はやく」と「ゆっくり」って面白い。わかったつもりになっていた大人の心にも響く一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
8月30日 もしかしたら、みんな同じこと心配してるのかも!?
火曜日は『メイがはじめてがっこうへいくひ (imagination unlimited)』
初めて学校へ行く日、メイはこわくて行きたくありません。ママに引きずられるように学校へ着いたのですが、ママが目を離した隙に校門の近くにある木に登ってしまいます。するとそこにやはり学校へ行きたくないお友も登ってきました。二人でおしゃべりをしていると、今後は大人の女性が登ってきたのです。その女性は今日初めて学校へ行く先生でした。さて3人はどうするのでしょう?
読者の声より
初めて学校へ行く日、めいちゃんはいろいろなことが心配で学校に行きたくありません。友達に嫌われたらどうしよう、1人だけ字がかけなかったらどうしよう、ママに会いたくなったどうしようと心配事がたくさん。
ママに無理やり学校に連れて行かれたものの、木の上でストライキ。するとそこには他の学校へ行きたくない子と学校にいきたくない先生まで!3人はどうしていきたくないかを話し合い一つ一つ解決していきました。
まだ新一年生になる子は自分の不安な気持ちをうまく伝えられません。この本はそんな気持ちに寄り添い、代弁してくれるのではないでしょうか。
(おかめさん 30代・ママ 神奈川県 女の子6歳、女の子2歳)
8月31日 8月31日の夜、カレンダーに現れたのは9月0日!
水曜日は『偕成社文庫 9月0日大冒険』
夏休みにぜんそくの発作で寝込んでしまった10歳の主人公、純。プールにも旅行にも昆虫採集にも行けず、肌はまっ白のまま。もともと肌が白く、学校で「シラミ」と呼ばれている純は、今年の夏休みこそまっ黒になろうと思っていたのに……と学校に行くのが憂鬱で仕方がありません。
明日から新学期という8月31日の夜、夜中の12時に目が覚めた純に不思議なことが起こります。部屋にある日めくりカレンダーをめくると、9月0日の文字が現れたのです。さらにカレンダーの下には、小さな赤い字でこんな言葉が。
「きみだけの特別な一日 さあ、冒険に出かけよう!」
不思議に思って窓から外を見ると、家のまわりにはうっそうとしたジャングルが広がっていました。純はカレンダーの言葉に背中を押されて、デイパックに食料と水筒と懐中電灯、そして宝物の古びたナイフをつめて、外のジャングルに飛び出します。すぐに右も左も分からなくなって迷ってしまった純でしたが、途中でクラスのアイドルリコちゃんと、キョーボーで有名なアギラこと明が現われ、一緒に冒険に行くことに。
三人が向かった先は、熱帯雨林のようなジャングルに、ぎらぎら照りつけるような太陽とひからびた大地、そして次々に現われる恐竜たちの世界。恐竜に詳しい純は、来た場所が、何千年も前の、恐竜が一番さかえた時代の白亜紀なのではないかということに気づきます。
物語は、予想を裏切らないハラハラドキドキの冒険が続きます。同時に、大きく内面が成長していく純の様子に強く心が打たれます。また、苦しいことやピンチを乗り越えたからこそ、友達の新たな一面を知ったり、強いと思っていた友達が自分と同じ弱い面やみっともない面を持っていることを知って理解が深まったり、さらに、冒険の途中でできなかったことができるようになった自分への自信もついていきます。
「人は、だんだんおとなになるにつれて、たいせつなものも、そうじゃなくなっていくのだろうか。そして、説明のつかないことはすべて、うそか、でたらめか、夢だと思いこんで、かたづけてしまうのだろうか」という物語の後半に出てくる言葉が印象的です。主人公の純の10歳という年齢は、ちょうど心が大人に向かって大きく成長していく時期。同じぐらいの年齢の子どもたちはこの言葉をどのように受け止めるのでしょう。
この200ページ以上にもなる長い物語を読み終えた瞬間に、夏の大きな冒険をしたような満足感が味わえるこちらの一冊。夏の終わりに何か物足りなさを感じたら、思い出して手に取ってみませんか。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
読者の声より
タイトルに惹かれ、夏休みも大分過ぎたけど面白そうなので手に取りました。
私も、いつも8月31日になると長かった夏休みが終わると物思いに耽ったものでした。
喘息のせいで夏休みをろくに楽しめずに終えようとした小学4年生の男の子の主人公。
8月31日の深夜、目がさめ日めくりカレンダーをめくるとそこにはあるはずのない9月0日が……
時計は12時で止まり、外の様子がおかしい。
マンションの3階にいたはずなのに、窓の外は木が茂るジャングル。
デイバッグに荷物を入れ、水筒を首から下げ、冒険に出発!
普段は接点のない3人の子どもたちが一緒に9月0日をすごしていく中で知った意外な一面。短い間にも困難を共に乗り越え、互いを理解し、成長していく様子が楽しく描かれています。そして、その後の関係に心打たれました。
息子も笑ったり、時には一緒に怖がったりしながら9月0日を過ごしました。
(ヤキングさん 20代・ママ 男の子8歳、女の子3歳)
9月1日 子どもも大人も肩の力を抜くお守りに
木曜日は『あつかったら ぬげばいい』
「ヘトヘトにつかれたら」
「ふとっちゃったら」
「だれもわかってくれなかったら」
「せかいがかわってしまったら」…。
2コマごとに展開する老若男女の疑問に、ユーモラスで痛快な答えが待っている。
大人も子どもも楽しめる、ヨシタケ式心を緩める絵本が登場!
大切な人への贈り物や、お守りのように側に置きたい1冊です。
読者の声より
こんな時、こうしてもいいんだよ。が、たくさん並べられています。
「え~いいの?」なんて子どもは笑いながら楽しんで読んでいたけれど、本当にこまったら、これでいいんだよ。ってゆる~く生きる方法を教えてくれる絵本で、心癒されるました。あつかったらぬぐように、当たり前にちょっと休憩して、それで元気な時には頑張ったらいいですよね。
(みっとーさん 30代・ママ 大阪府 男の子9歳、女の子7歳)
9月2日 不安な気持ちは「しんぱいひきうけ人形」に任せよう
金曜日は『びくびくビリー』
ビリーは、とってもしんぱいや。いろんなことがきになって、ベッドにはいっても、ねむれない。おばあちゃんにはなしたら、ちいさな人形をくれた。[しんぱいひきうけ人形]なんだって! これでねむれるかな…? 子どもの心のおくをあざやかにきりとる、国際アンデルセン賞受賞作家の絵本。
読者の声より
心配屋のビリーのもとに、心配引き受け人形がやってくるお話。しかしビリーは心配屋。心配引き受け人形のためにも心配引き受け人形を作ります。これで安心!
子どもって、大人よりも敏感で繊細なもの。学校でも、テストや席替えなど、ドキドキする出来事も多い。なので、この心配ひきうけ人形はとても素敵だなぁと思いました。何か心の支えがあると、不安な気持ちも軽減されそうです。うちの娘にも作ってあげたいななんて思ったけど、娘はそんなに関心を抱かなかったみたい。小学生になったら、もう一度借りてきて読んでみようと思います。
(じっこさん 30代・ママ 女の子6歳、男の子2歳)
9月3日 答えの出ないような問いや悩みにぶつかったら
土曜日は『答えのない道徳の問題 どう解く? 正解のない時代を生きるキミへ』
「どうして学校に行かなければならないの?」「得意なことをのばすのと苦手なことをなくすのはどちらがいいの?」「「どうしてお金の貸し借りはいけないの?」など、大人も答えにくい「答えのない問題」を考えます。小学生と池上彰さん、中川翔子さん、汐見稔幸さん、壇蜜さん、ティモンディ高岸さん、松岡修造さん、サンシャイン池崎さんなどt著名人の考えを読みながら、自分自身で考えて周囲の人とディスカッションするきっかけ作りに最適です。答えられないこともひとつの答え。気楽に自由に、そして楽しみながら考えてみよう。考え方のヒント付。
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9月4日 作家が答える人生相談。一つの質問に様々な答えが。
日曜日は『10歳の質問箱 なやみちゃんと55人の大人たち』
子どもの「なぜ?」に作家が答える人生相談
「元気がないときは、どうしたら良いですか?」
「大人は楽しいですか?」
「努力はムダではありませんか?」
「死のうと思ったことはありますか?」
などなど、子ども素朴な疑問、悩みに55人の作家が好き勝手に答えます。
どれもこれも、考え方は人それぞれ。一つの質問に答えは、必ずしも一つだけではありません。ここでは、何人かの作家の考えをのせています。
大人の真っ正直な言葉を子どもたちに届けます。
答えてくれる作家は、日本を代表する作家たち、あさのあつこ、森絵都、角野栄子、朽木祥、越水利江子、中島京子、森村誠一、吉岡忍、山田真など55人です。
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いかがでしたか。
子どもたちのスタートに合わせて、大人も切り替えのタイミングを迎えている人が多い時期かもしれませんね。それぞれのペースでスタートしてくださいね。
選書・文:秋山朋恵(絵本ナビ副編集長)
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